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2026.05.11 注目の海外スタートアップの資金調達3選

AIブームの投資テーマといえば、半導体やクラウド、LLM開発企業が注目されがちだ。しかし、2026年5月11日、まったく異なる3つの領域に注目すべき資金調達が相次いだ。

AIデータセンター向けの電力インフラに10億ドルを投じるBlackstoneとHalliburton、宇宙軌道上でAI計算を行うデータセンター衛星を開発するCowboy Space Corporation(旧Aetherflux)、そしてAIの恩恵が届いていない中堅企業へのDX支援を手がけるCiridaeの3社だ。

3社の調達総額は合計約13億ドルを超える。この3つのディールを横断して読むと、AIインフラ投資の「次のフロンティア」が見えてくる。


1. VoltaGrid——AIデータセンターの「電力問題」に10億ドルで挑む


1-1. Blackstone×Halliburtonという異色の組み合わせ

2026年5月11日、テキサス州ヒューストンを拠点とするVoltaGridは、BlackstoneのTactical Opportunities部門とHalliburtonから10億ドル(約1,450億円)の戦略的エクイティ投資を受けたと発表した。内訳は7億7,500万ドルのプライマリー増資と2億2,500万ドルの既存株主からのセカンダリー売却だ。

Blackstoneは、代替資産運用の世界最大手の一角であり、Halliburtonは石油・ガスのサービス大手として知られる。エネルギー産業と金融の巨人が組んでAI電力インフラ企業に大規模投資を行ったという事実は、この領域に対する機関投資家の関心の高まりを示している。

1-2. 「Behind-the-Meter」という差別化

VoltaGridが提供するのは、電力グリッドに頼らずにデータセンターや産業施設に直接電力を供給する「Behind-the-Meter(BTM)」ソリューションだ。電力会社からの送電に依存しないため、グリッドの容量制約やエネルギー調達の不確実性を回避できる。

同社のCEO、Nathan Ough氏は、「AI時代のエネルギーインフラを届ける役割をVoltaGridが担っている。この投資はその証」と述べた。

また今回の発表には、サプライヤーであるPropell Energy Technology社の買収も含まれている。Propellの買収により、7.5GWに上る受注残の供給チェーンを自社内で管理できるようになる見通しだ。さらに米国・カナダで約1,000人の従業員を持つPropellの技術力と製造能力を取り込み、月産300MWの製造キャパシティを目指すとしている。

1-3. 投資家が注目する背景

データセンターの電力需要は、AIワークロードの爆発的な拡大とともに急増している。従来の電力グリッドでは対応しきれないケースが増え、BTMソリューションへの需要が高まっている。Blackstoneがこの領域を「最重要投資テーマの一つ」と位置づけていることは、電力インフラ関連企業への投資機会を評価するうえで参考になる。

2. Cowboy Space Corporation——宇宙軌道上にAIデータセンターを建設する


2-1. Robinhood共同創業者が挑む「軌道上コンピューティング」

旧社名AetherfluxとしてRobinhood共同創業者のBaiju Bhatt氏が2024年に創業したCowboy Space Corporationは、2026年5月8日にシリーズBで2億7,500万ドル(約400億円)の調達を発表した。評価額は20億ドル(約2,900億円)に達する。

ラウンドをリードしたのはIndex Venturesで、IVP、Blossom Capital、SAIC(防衛・IT大手)、そしてAndreessen HorowitzやBreakthrough Energy Venturesなどの既存投資家も参加した。

2-2. ロケットとデータセンターを一体化するアーキテクチャ

Cowboy Spaceの技術的な特徴は、打ち上げロケットの上段とデータセンターのペイロードを「一体設計」している点だ。通常、打ち上げロケットと搭載物は別々に設計されるが、同社はこの分離をなくすことで冗長な質量を排除し、軌道上に届けられるコンピュートと電力を最大化する。軌道に到達した各上段は1MWのデータセンターへと転化する。

さらに、Nvidiaとの協業でNVIDIA Space-1チップを軌道上データセンターに搭載することも明らかにされており、地上のデータセンターと同等の計算能力を宇宙空間で実現することを目指している。

2-3. なぜ宇宙なのか——地上インフラの限界

地上のデータセンター建設は、用地確保・電力・冷却・許認可といった多くのボトルネックに直面している。宇宙空間では太陽光発電で安定した電力を確保でき、冷却の問題も軽減される。AIの計算需要が地上のインフラ供給を上回るシナリオを想定する投資家が増える中、「軌道上コンピューティング」というコンセプトへの資金流入は今後も続く可能性がある。

3. Ciridae——AIの恩恵が届かない「中堅企業」へのOS提供


3-1. Accel主導で2,000万ドルのシード調達

サンフランシスコを拠点とするCiridaeは、2026年5月11日にAccelがリードし、Andreessen Horowitz、General Catalyst、Sunflower Capitalが参加する2,000万ドル(約29億円)のシードラウンドを完了したと発表した。

CEOのJack Soslow氏はAndreessen Horowitzの元パートナー兼MetaのデータサイエンティストであるOut、CTOのJack Weissenberger氏はSalesforceのエンジニアリングリーダー兼TeneyxのHead of MLというバックグラウンドを持つ。

3-2. 「AIパイロットの95%以上が本番稼働に至らない」という課題

Ciridaeが着目するのは、AIブームの恩恵が届いていないフォーチュン500圏外の中堅企業だ。修理・復旧サービス会社、物流会社、産業サービス会社といったいわゆる「リアルエコノミー」企業は、レガシーERPや属人的なナレッジに依存しており、専任のAIチームを持てないためにAI導入の恩恵を受けられていない。

Gartnerによれば、2026年のグローバルAI支出は2兆5,000億ドルに達すると予測されているが、AIパイロットプロジェクトの5%未満しか本番稼働に至っていないという実態がある。この「AIの壁」は特に中堅企業で深刻だ。

3-3. 「もう一枚のSaaSを重ねるのではなく、基盤を作る」

Ciridaeのアプローチは既存のエンタープライズSaaSとは異なる。同社は顧客企業に深く入り込み、業務プロセスを把握した上で、業務の「オペレーティングシステム」を構築することを目指している。

「最大のAI機会は、もう一つのエンタープライズソフトウェア層を加えることではなく、業界が見逃してきた企業のための運営インフラを構築することだ」というのが同社の核心的な主張だ。

Accel、Andreessen Horowitz、General Catalystという主要VCが揃ってシードラウンドに参加していることは、このコンセプトへの評価の高さを示している。

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