OpenAIがGPT-5.4発表――Thinking/Pro投入、最大100万トークン対応で“仕事向け”を強化
OpenAIがGPT-5.4をリリースしました。標準版に加え、推論重視のGPT-5.4 Thinking、高性能寄りのGPT-5.4 Proが用意され、「プロの実務」を主戦場に置いた更新です。
今回の肝は、単なるベンチマークの上振れではなく、①長文、②ツール運用、③誤り(ハルシネーション)の3点を“現場で効く形”で詰めてきたことです。
1. 何が変わった?――3つのアップデート
1-1. 「知識労働」で83%:成果物を最後まで作るモデルへ
OpenAIのGDPval(44職種の知識労働タスク)で、GPT-5.4は、83.0%に到達。GPT-5.2の70.9%から大きく上がっています。
また、OpenAIは「スプレッドシート・資料・文書」の生成品質を重点改善したと明言し、社内の投資銀行アナリスト級の表計算ベンチでも87.3%(GPT-5.2は68.4%)としています。
“それっぽい回答”ではなく、最終納品物(スライド、財務モデル、法務メモ)を作る方向に寄せたのが今回の設計です。
1-2. PC・ブラウザ操作が前進:エージェントの実用域が広がる
OSWorld-Verified(デスクトップ環境の操作)で75.0%、WebArena-Verified(ブラウザ操作)で67.3%と、いずれも強い数字が出ています。
これは「調べて、入力して、整形して、提出する」タイプの業務(経理・購買・CS・リサーチ)に直結します。モデルが“画面を読んで操作する”能力が上がるほど、業務はチャットから作業自動化へ寄っていきます。
1-3. 誤りを減らす:個別主張で-33%、全文で-18%
OpenAIは、ユーザーが事実誤認としてフラグしたデータに基づき、GPT-5.4は個別の主張が誤りである確率が33%低下し、回答全体に誤りが含まれる確率も18%低下したと説明しています。
投資・法務・医療など“ミスが高い”領域ほど、この改善は効きます(=人のレビューコストが下がる)。
2. 開発者に効く本丸:Tool searchと「省トークン」
2-1. Tool search:ツール定義を“必要な時だけ”読む仕組み
APIでは、tool searchが導入され、モデルが必要に応じてツール定義を検索・読み込みできるようになります。従来の「全ツール定義を毎回プロンプトに同梱」方式が、コストと遅延を押し上げていた問題に手を入れました。
OpenAIは、36のMCPサーバーを有効にしたScaleのMCP Atlas 250タスクで、tool search構成は同じ精度のまま総トークン使用量を47%削減したとしています。
つまり、エージェントが大規模な社内ツール群を扱うほど、効いてくる改良です。
2-2. 1Mコンテキスト:超長文は“実験的サポート”から
GPT-5.4はCodexで1Mコンテキストウィンドウの実験的サポートがあり、標準の272Kを超えるリクエストは使用量が2倍換算になると説明されています。
「巨大な契約書群」「監査ログ」「数十万トークン級の仕様書」など、“長文×推論”の仕事で武器になります。
3. 安全面の新しい論点:CoT(思考過程)を測る
推論モデルの懸念として「思考過程(CoT)を取り繕う可能性」があります。OpenAIは、新たにCoT controllability(思考の意図的な難読化が可能か)というオープンソース評価を導入し、GPT-5.4 ThinkingはCoTをコントロールする能力が低い=隠しにくいことが安全面で望ましい、と述べています。
業務利用が広がるほど、こうした“監査可能性”は重要な論点になります。
4. まとめ:ビジネスマン・投資家が押さえる使い分け
Thinking:長文読解/調査統合/複雑な意思決定の下書き(途中で計画を提示して調整しやすい)
Pro:納期最優先の高難度タスク(最終成果物を一発で決めにいく)
API運用:tool searchで「ツール定義の同梱コスト」を削り、エージェントの単価を下げる
GPT-5.4は、“最強モデル”というより、プロの仕事を安く・速く・ミス少なく回すための設計に寄っています。導入の成否は、モデル選定よりも「どの業務を、どのツール群と、どの監査手順で回すか」で決まるフェーズに入った――それが今回のニュースの本質です。
