2025.09.02 注目の海外スタートアップの資金調達3選
2025年9月2日は、スタートアップや新興企業の資金調達において、極めて注目すべき日となりました。英国発の量子ソフトウェア企業、ロンドン拠点のバイオテック企業、そして仮想通貨を中核とする暗号資産関連企業が、それぞれに巨額の資金を調達し、技術革新や市場拡大への期待を背負っています。本記事では、以下の3件を取り上げ、その背景と意義を多面的に詳しく解説します。
Phasecraft:量子コンピューティングの「使えるソフトウェア」へ向けた34百万ドルの調達
CHARM Therapeutics:AML治療を目指すAI設計創薬企業が80百万ドルのシリーズB資金調達
The Ether Machine:仮想通貨企業が6億5,400万ドル相当のイーサリアムで資金調達、NASDAQ上場に向けて加速
1. Phasecraft:量子アルゴリズムの実用化を目指す挑戦
1-1. 資金調達の概要と目的
英国を拠点とする量子ソフトウェア企業 Phasecraftは、約3,400万ドルのシリーズB資金調達を実施しました。この調達は、PluralやPlayground Global、Novo HoldingsのQuantum Fund(Novo Nordisk系)が主導し、既存投資家も追加出資しています。
この調達により、Phasecraftの累計調達額は5,000万ドル超となりました。
1-2. 研究開発強化と市場展開
調達資金は、チームの倍増と研究開発、そして企業連携の強化に活用されます。Johnson Matthey(化学)、英国国営エネルギー網運営者(NESO)、通信大手BTなどといった業界プレイヤーとの共同を進めるほか、米国ワシントンD.C.に研究拠点を開設。
CEOのAshley Montanaro氏は、「量子優位性(quantum advantage) に近づいている」と語り、来春には科学的意義のある計算が、数年以内には商用利用の実現が可能になるとの見通しを示しています。
1-3. 社会への応用:化学・エネルギーから創薬まで
Phasecraftの研究成果は、新材料開発やバッテリー技術、医薬品設計などに応用可能とされ、量子と古典コンピューティングを組み合わせたハイブリッド手法で現実的な成果を目指しています。
ただし、専門家の中には「量子バブル への懸念」も存在し、期待過熱を抑える慎重な視点も同時に重要とされています。
2. CHARM Therapeutics:AML治療薬開発へ80百万ドル調達
2-1. 調達内容と投資体制
ロンドンに拠点を置き、AI設計による創薬に取り組む CHARM Therapeuticsが、シリーズBで8,000万ドルの調達を実施しました。主要投資家には、NEAやSR Oneが名を連ね、既存のOrbiMed、F‑Prime、Khosla Ventures、NVIDIAなども支援を続けています。
NEAおよびSR Oneからは投資担当者がボードの非業務執行ディレクターとして参加し、今後の戦略推進にコミットする体制が整いました。
2-2. 先進的な治療対象とAI創薬の強み
同社は、急性骨髄性白血病(AML)に対応する新世代の menin阻害剤 を主力パイプラインとして開発中。既存薬が抱える耐性変異を克服できる可能性があり、効果の持続性と安全性の向上が期待されています。AIによる分子設計が核となる取り組みです。
2-3. 創薬スピードと医療への展望
AI創薬は近年、研究開発の時間短縮やコスト削減を進展させつつあります。CHARMが取り組むmenin阻害剤は、AML治療において耐性問題という重要課題に対応し得る新たなアプローチとして注目されます。今後、2026年第1四半期には臨床開発を開始予定です。
3. The Ether Machine:ETH積み上げ戦略とNASDAQ上場を見据えて
3-1. 巨額なイーサリアム調達とその意義
仮想通貨企業 The Ether Machineは、著名なイーサリアム支持者Jeffrey Bernsから150,000 ETH(約6億5,400万ドル相当)を調達。Berns氏は、取締役にも就任します。
この結果、同社は495,362 ETH(約21.6億ドル相当)の保有に加え、さらなるETH取得のために3億6,710万ドルの資金を確保しました。
3-2. 上場準備と資金調達の構造的アプローチ
Ether Machineは、Ether ReserveとSPAC(Dynamix Corporation)の合併により誕生し、NASDAQへの上場(ティッカー:ETHM)を視野に入れつつあります。初期段階では16億ドル以上の募資を目標としていました。
3回目の資金調達ラウンドはCitibankが主導し、少なくとも5億ドルを狙うとしています。
3-3. イーサを活用した財務戦略
同社は、株主の希薄化を抑えつつETH獲得を最大化するために、転換社債や優先株といった金融手法を活用。さらに、イーサリアムをステーキングしてオンチェーン報酬を獲得し、mNAV(市場価値÷純資産価値)の高い運営を追求します。
3-4. 虚構ではない現実、仮想資産の企業戦略化
Ether Machineは、「イーサリアムを主要財産として持ち、yield-drivenな企業モデル」を具現化しようとする新しい潮流の一つ。これは、従来のETFとは異なる、リアル資産としての仮想通貨活用法であり、金融と暗号経済の融合モデルとも言えます。
4. まとめ:調達から見える技術・医療・金融の未来
今回の3件はいずれも、それぞれの領域で次のステップへ進もうとする明確な戦略と期待感が背景にあります。量子技術・創薬・暗号資産という異なる分野ながら、いずれも「現実世界に根ざした革新」を志向しています。
