Mercury創業者が挑む「未来への投資」──2,600万ドルファンドの全貌と狙い
米国発のスタートアップ銀行「Mercury」の共同創業者兼CEO、イマッド・アカンド(Immad Akhund)氏が、新たに2,600万ドル規模のベンチャーファンドを立ち上げた。このファンドは、アカンド氏が2016年以降続けてきた個人によるエンジェル投資活動を“制度化”するものであり、初期スタートアップへの支援に対する彼の情熱と戦略を具体的な形にしたものだ。本稿では、アカンド氏の投資哲学とMercuryの成長軌道、そしてこの新ファンドの戦略的意義について解説する。
1. イマッド・アカンドとは何者か──起業家と投資家の二面性
1-1. Mercuryを立ち上げた起業家
イマッド・アカンド氏は、世界中のスタートアップに愛用されるデジタルバンク「Mercury」の創業者として知られている。Mercuryは特にスタートアップの資金管理に特化したオンライン銀行として、近年急速に存在感を高めている。2025年3月には、セコイア・キャピタルやa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)らの支援を受けて、3.5億ドルの資金調達を行い、企業評価額は35億ドルに達した。
1-2. エンジェル投資家としての実績
アカンド氏のもうひとつの顔は、熱心なエンジェル投資家である。2016年以降、彼は350社以上のスタートアップに個人的に出資してきた。ポートフォリオには、Airtable、Substack、Linear、Applied Intuition、Gecko Roboticsなど、名の知れた企業が並ぶ。その投資活動はY Combinatorのパートナーとしての経験とも重なり、初期フェーズのプロダクトドリブンな起業家を見抜く目利きとしても知られている。
2. なぜ今、ファンドを立ち上げたのか?
2-1. 自身の投資活動の“構造化”
アカンド氏がこのたび正式にファンドを立ち上げた背景には、「より体系的に起業家を支援したい」という想いがある。彼は自身のSNSで次のように述べている。
「起業家を支援することは、エネルギーと視座、そして深い満足感を与えてくれる。ファンドという仕組みを持つことで、より深く、より意味のある形で創業者を支援できる」
ファンドの運営には、かねてよりアカンド氏と共に投資を行ってきたヤシュ・ドシ(Yash Doshi)氏がパートナーとして加わる。彼はMercuryの初期投資家でもあり、今回のファンド設立にも重要な役割を果たしている。
2-2. Mercuryとの両立
なお、アカンド氏はファンド運営に専念するわけではない。彼は「Mercuryへのコミットメントは変わらない」と明言しており、CEO業と投資活動の両立を続ける構えだ。彼にとって、起業家支援は単なる資本提供ではなく、自らのミッションの一部なのである。
3. ファンドの投資方針──「人類を前進させる」起業家に賭ける
3-1. ターゲットとなる起業家像
ファンドが支援するのは、「影響力のあるプロダクトを作った実績を持つ起業家」だという。つまり、単なるアイデアベースの創業者ではなく、既に何らかのインパクトを残した実績あるプロダクトメーカーに重点を置く。
3-2. 巨大市場と人類貢献
アカンド氏は、投資対象を「1兆円(100億ドル)以上の市場」に限定し、かつ「人類を前進させる」ことを目指すスタートアップに絞るという。つまり、社会的意義と経済的ポテンシャルを兼ね備えたベンチャーを選別していくスタンスだ。これは近年の「インパクト投資」とも重なる思想であり、技術と倫理の両立を図る起業家への明確な支援メッセージとも言える。
4. スタートアップ投資の新潮流と今後の展望
4-1. 創業者主導型ファンドの増加
アカンド氏のように、起業家として成功した後、自らファンドを立ち上げる動きは増えている。彼らは「起業家の痛みを知る投資家」として、従来型VCとは異なる親身な支援を提供できる強みがある。
たとえば、Stripeの元プロダクトリーダーが立ち上げた「South Park Commons Fund」や、GitHub共同創業者のChris Wanstrathによる「Null Fund」などもその例である。
4-2. Mercuryのブランド資産と相乗効果
Mercuryというプラットフォーム自体がスタートアップに深く根ざしているため、アカンド氏のファンドは資金面だけでなく、実務支援やネットワーク提供など、より広範な支援が可能だ。これは創業初期のスタートアップにとって極めて心強い後ろ盾となる。
イマッド・アカンド氏が立ち上げた2,600万ドル規模の新ファンドは、単なる投資ビークルではない。それは「未来を創る創業者」を見極め、より深く伴走するための仕組みであり、彼自身のキャリアの延長でもある。起業家による起業家のための支援――その真価は、今後このファンドが育てていくスタートアップの成果にこそ現れるだろう。
「未来は、創ろうとする人の手の中にある」──アカンド氏の信念が、次なる変革を呼び起こす。
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