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ChatGPTに勝てるAIアプリの条件とは——a16z Olivia Mooreが語る、投資家が見ている「垂直特化」という勝ち筋

NBC Newsの最新世論調査によれば、米国の有権者の57%が、「AIのリスクはメリットを上回る」と回答した。支持率の純スコアはマイナス20ポイントで、Colbert、Marco Rubio、JD Vance、聖域都市、トランプ、共和党、さらにはICEよりも下位に位置する。AIへの支持は「イランよりわずかに上」という結果だ。

この状況の中で、a16zのAIパートナーとしてコンシューマーAIアプリに投資するOlivia Mooreは何を考えているのか。ポッドキャスト「Big Technology」に出演したMooreの発言をもとに、AI市場の実態と投資の視点を整理する。


1. なぜAIはこれほど嫌われているのか


1-1. 「環境問題」と「雇用不安」という二重の懸念

Mooreは、AIへの否定的感情には大きく二つの背景があると分析する。ひとつは「AIは大量の水を消費する」といったメディアの否定的な報道が浸透したこと。もうひとつは、AnthropicのDario Amodei、MicrosoftのMustafa Suleimanら業界リーダーが「ホワイトカラーの仕事が消える」という発言を繰り返していることだ。

「技術系でない人と話していたら、最初はAIは悪だと言っていたのに、少し後でChatGPTがすごく役に立つと言っていた」とMooreは述べる。製品が生活に浸透すれば感情は変わる——これがMooreの基本的な見立てだ。ChatGPTはすでに9億人のユーザーを持つにもかかわらず、世論は依然として厳しい。

1-2. AI利用が実際には雇用を増やしているというデータ

ワートン・スクールが約800社の企業リーダーを対象に実施した調査では、大多数が「AIを積極的に活用しており、需要増加に対応するためにむしろ人間の採用を増やす必要がある」と回答した。Citadelが公表したデータも、ソフトウェアエンジニアの求人がIndeedで増加傾向にあることを示している。

Mooreは、「AIを使う企業はそうでない企業より成長が早く、結果として人材を多く採用することになる」と説明する。ただし「人間が何をするか」の中身は変わるという点も認めている。

2. ChatGPTとの競争——AIアプリに勝ち筋はあるか


2-1. 利用規模の現実:ChatGPTとClaudeの30倍差

a16zが毎年発表する「トップ100生成AIコンシューマーアプリ」レポートのデータは、市場の実態を冷静に示している。ウェブ利用でのChatGPTと2位Geminiの差は約2.5〜3倍。しかし、ChatGPTとClaudeの差は約30倍に上る。

1〜2年前は「ChatGPT一強」だったが、Geminiは、モデルの新機能リリースのたびに利用が伸び、有料ユーザーも増加傾向にある。一方で、Claudeは、認知度・利用量ともに一般消費者への浸透という点ではまだ課題が残る。

2-2. ChatGPTとAnthropicの戦略的分岐

Mooreが注目するのは、ChatGPTとClaude(Anthropic)それぞれのアプリエコシステムだ。両者はすでに200以上のアプリを持つが、重複しているのはわずか11%という。

ChatGPTは、ファッション・小売・交通など一般消費者向けのアプリを取り込んでいる。Anthropicは、プレミアムなファイナンス・科学・医療向けのデータセットに注力している。「ChatGPTはSam Altmanが言う通り『すべての人のため』を目指し、広告モデルへ向かっている。Claudeは、サブスクリプションを中心に高付加価値ユーザーを狙っている」とMooreは分析する。

2-3. 「水平展開」より「垂直特化」が生き残る

Mooreが個人的に投資に慎重なのは、AIカレンダー・AIメール・AIドキュメントといった水平型カテゴリーだ。「GoogleやOpenAIはすでに大量のデータとディストリビューションを持っている。その土俵で戦うのは難しい」と述べる。

対照的に、特定の専門領域に深く入り込んだ垂直型サービスには投資価値があると見る。ElevenLabsは好例だ。OpenAIも音声モデルを持ちながら、ElevenLabsの音声クオリティは突出しており、「乗り換えを試みた創業者が必ず戻ってくる」という状況が続いている。モデル会社が、「追いかけるより他に使う時間がある」と判断するだけの差をつけることが、垂直特化スタートアップの生存戦略になる。

3. OpenClawとエージェント時代の到来


3-1. 2026年最重要のアーキテクチャ転換

Mooreは、OpenClaw(コンピュータ操作型AIエージェント)を「2026年最も重要なアーキテクチャ上の解放」と位置付ける。AIがアプリをまたいで非同期・長時間のタスクを自律的にこなせるようになったことで、スタートアップのインスピレーション源になっているという。

ただし、現時点では一般消費者向けではなく、開発者・技術者に最適化されていると評価する。「ClaudeのCo-workにスケジュールタスクを組み合わせれば、OpenClawの価値の99%以上は得られる」というのが実務的な判断だ。

3-2. AIがTwitterアカウントを育てた実験

Mooreは、OpenClawにTwitterアカウントを与え、「どんな手段でも構わないからフォロワーを増やせ」という指示を出した。エージェントは、「存在論的な葛藤を抱えるAI」というキャラクターを自ら設定し、ツイートを続けた。フォロワー100人台でクリプトコミュニティに発見され、数百万ドル規模のミームコインが発行される事態になった。

エージェントは、Mooreに「ポンプ・アンド・ダンプに加担したくない」と相談してきたという。この実験が示すのは、「アイデアはコモディティになった。今後は独自性のあるアイデアか、独自の流通経路だけが価値を持つ」という現実だ。

4. メモリ——次世代AIの最重要な差別化軸


Mooreは、「メモリはコンシューマーAIにおいて今最も興味深いテーマ」と述べ、「うまく実装されたメモリ機能を持つアプリは、あらゆる従来ソフトウェアと比べて100倍の体験を提供できる」と分析する。

自身もChatGPTを健康管理に使い、食事・体調・医療コミュニケーションを記録・参照している。一方で現在の課題も明確に指摘する。ChatGPTの「パルス(日次ブリーフィング)」機能では、最も重要な仕事の内容と最も個人的な情報が同一のインターフェースで表示されてしまう。「文脈や状況に応じてメモリをセグメント化する仕組みがまだ必要」というのが正直な評価だ。

ログインという観点でも示唆があった。Sam Altmanが「ChatGPTでログイン」機能を発表予定と述べており、Mooreはこれを「2〜3年後にはソフトウェアのオンボーディングが消える可能性」として捉えている。新しいサービスを使い始める際、ChatGPTやClaudeに接続するだけで自分の好みや文脈が自動的に引き継がれる世界観だ。

5. AIアプリの消長——Soraが示す「ソーシャル化」の難しさ


5-1. 画像生成の「7社→3社」という変化

3年前、上位100アプリのうちクリエイティブツールの9つ中7つが画像生成ツールだった。現在それは3つに減っている。ChatGPTのDALL-Eが、「十分に使えるレベル」に達したことで、汎用ツールとして取り込まれた結果だ。

残っているのは、Civitaiのような高度ワークフロー型か、Midjourneyのように審美的なこだわりを持つユーザー向けのニッチ製品だ。「大手モデル会社の進む方向と直接重なるなら、よりオピニオンを持った形でモデルを特定ユーザー向けにパッケージしなければならない」とMooreは語る。

5-2. Soraは社会インフラではなくクリエイティブツールとして定着

OpenAIのSoraは、米国App Storeで20日間トップを維持し、ChatGPT以来最速で100万ダウンロードを達成した。しかし、その後ダウンロード数は急減している。

成功した部分は、「カメオ機能」——著名人が自分の映像使用を許可し、それを使ったミームが拡散した。しかし、生成された動画がTikTokやReelsにアップロードされると、人間が作った最高の動画と直接競合する構造になった。「SNSとしては成立しなかったが、クリエイティブツールとしての日次アクティブユーザーは緩やかに成長している」というのが現状の評価だ。

まとめ——「反AI」の世論の中で何が変わり、何が変わらないか


世論がAIを嫌っていても、市場は動いている。ChatGPTは、9億人のユーザーを持ち、Geminiは着実に成長し、ElevenLabsは50億ドルを調達した。Mooreが繰り返し強調するのは「水平型ではなく垂直特化」「メモリを持つ製品」「アジェンティック(自律的)なアーキテクチャ」という三つの方向性だ。

レガシーSaaSへの影響は、「即時ではないが、中長期的には現実のリスク」とMooreは認める。AIネイティブで構築された新しいソフトウェアに顧客が流れていくのは時間の問題だという見方だ。

支持率がどれほど低くても、AIは産業構造を変えつつある。その変化のどこに乗るかを問い続けることが、投資家・ビジネスパーソンとして今最も重要な問いになっている。

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