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Gap CEOリチャード・ディクソン氏、9四半期連続増収を達成 ― CEOが明かす復活の裏側

低迷が続いていたアパレル大手Gapが、ここ数年で明確な回復軌道に乗っています。同社のCEOを務めるリチャード・ディクソン氏は、かつてマテル社でバービー人形ブランドの再生を手がけた実績を持ち、その手法をGapに応用しているといいます。本稿では、ディクソン氏がBob Safian氏のポッドキャスト「Rapid Response」で語った内容をもとに、Gapがどのようにブランドを立て直してきたのかを整理し、経営者・投資家が参考にできる視点を解説します。


1. マテルとGap、二つのアイコン的ブランドの再生


ディクソン氏は、マテル社時代、色あせつつあったバービーブランドを再び輝かせた経験を持ちます。Gapに移った際も、同様に「一時代を築いたブランドが停滞し、再び輝きを取り戻す」というプロセスに携わることに強い関心を持っていたと語ります。

同氏は、このプロセスを「再生(revitalization)」と表現し、「ブランドの歴史を研究し、そもそも何がそのブランドを偉大にしたのか、その本質を見つけ出す必要がある」と述べています。ブランドは、世代を経る中で外部要因の影響を受け変化していきますが、あるタイミングで方向性を見失うか、あるいは再び関連性を取り戻すかの分岐点を迎えるといいます。

Gapについては、実際に9四半期連続で増収を達成し、時価総額は85億ドルまで拡大したことが紹介されました。

2. ポップカルチャーへの注力という選択


ディクソン氏が復活のドライバーとして挙げるのが、「ポップカルチャー」です。ビジネスパーソンからは一見「ソフトな」要素に見えるこのテーマについて、同氏は、「ポップカルチャーは、聞こえは単純だが実行は難しい」と説明します。

2-1. 文化のスピードに合わせる難しさ

Gapのような長い歴史を持つブランドは、テレビ・印刷媒体・屋外広告の時代に誕生しました。しかし、現在、消費者がいる場所に存在するということは、あらゆるチャネルに存在することを意味し、これは非常に難易度の高い課題だといいます。ディクソン氏は、「数字と成果物だけに集中すると、ブランドは、方向を見失う可能性がある」と指摘し、財務的な判断だけを優先すると、消費者との対話が分断されると警鐘を鳴らしています。

2-2. 「Cat's Eye」キャンペーンの反響

具体例として挙げられたのが、Gapのある広告キャンペーンです。ディクソン氏によれば、このキャンペーンは、公開からわずか24時間でTikTok検索で1位にトレンド入りしたといいます。同氏は、「3年前にGapがTikTokでトレンド入りする、しかも検索1位になると言ったら、誰も信じなかっただろう」と振り返っています。

3. 意思決定を支える「ブランドラブ」ダッシュボード


多くの経営者が株価を頻繁にチェックする一方、ディクソン氏は、「ブランドラブ」と呼ばれる指標を毎日追跡していると明かしました。オフィスには、売上指標を示すダッシュボードに加え、ブランド検索数や消費者の反応など、ブランドへの愛着度を測る別のダッシュボードがあるといいます。

同氏は、「これは気を散らすものではなく、指針となるものだ」と述べ、事業を動かす上で必要な情報だと説明しています。うまくいっている理由、うまくいっていない理由を毎日把握することで、迅速な軌道修正が可能になるとしています。

4. 失敗を恐れないカルチャーの重要性


ディクソン氏は、リスクを取らないことこそが最大のリスクだと強調します。「振らなければ、絶対に当たらない」という言葉に象徴されるように、同社では成功よりも失敗の方が多いことを前提とした上で、成功の数が失敗の数を上回ることを目指しているといいます。

一方で、過去に「これは試した、あれも試した」という失敗の積み重ねが、かえって新しい挑戦を止めてしまう「ヘッドライトの前の鹿」状態を招くこともあると指摘します。ディクソン氏は、Gapがまさにこの状態に陥り、「揺さぶられて怖くなり、結果として非常に安全だが、面白みのない存在になってしまった」と当時を振り返っています。

物議を醸したシドニー・スウィーニー氏起用のジーンズ広告(Gap自身のものではない)についても言及し、業界全体の創造性を刺激するものであれば、それは業界にとって良いことだという見解を示しました。

5. サステナビリティと収益性の両立


Gapは、今年、俳優マット・デイモン氏が設立したWater.orgとの提携「Get Blue」を含む新たなサステナビリティ目標を発表しました。サステナビリティへの関心が世間的にやや後退している時期のこの発表について、ディクソン氏は、「利益を上げれば上げるほど、より目的を果たすことができる」と述べ、利益と目的は対立するものではないという考えを示しています。

同社は、デニム製造に大量の水を使用するため、水資源のリサイクル・再利用・補充に責任を持つ必要があるとし、「これは『やった方がいいこと』ではなく『やらなければならないこと』だ」と強調しました。

6. AI活用と消費者との信頼関係


AIについて問われたディクソン氏は、「好むと好まざるとにかかわらず、AIは既にここにあり、これからも存在し続ける」と述べ、事業全体がAIを基盤とするプラットフォームへと移行していくとの見方を示しました。消費者インサイトやデザイン開発など、既に複数の領域でAI活用が進んでいるといいます。

一方で、AIの活用が進むほど、消費者が自身のデータをブランドと共有する上での信頼が重要になるとし、これもまた「ブランドの根幹に関わる問題」であると位置付けています。

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