見出し画像

AI時代にVineが帰ってきた──ジャック・ドーシー支援「diVine」が示す“人間中心SNS”の勝ち筋

かつて6秒ループ動画で一世を風靡した「Vine」が、AI全盛の2025年に蘇る。
この復活劇を支えるのは、Twitter共同創業者ジャック・ドーシーと彼の新プロジェクト「diVine」だ。
生成AIコンテンツがあふれる現代のSNS環境に、あえて“人間の創造性”と“懐かしさ”を持ち込もうとするこの試みは、単なるノスタルジーではない。


1. Vineの再起動──「diVine」が目指すもの


2025年11月、ドーシーが資金提供した非営利団体「and Other Stuff」は、新アプリ「diVine」をローンチした。
同アプリはVineの閉鎖前にバックアップされていた10万本以上のオリジナルVine動画を再構築し、ユーザーが再び視聴・投稿できるようにした。

特徴的なのは、AI生成コンテンツへの明確なスタンスだ。
diVineでは「生成AIの疑いがある動画を自動検出し、投稿をブロック」する仕組みを導入。
ドーシーが掲げるのは、「人間の実在性を証明できるソーシャル空間」だ。

「アルゴリズムではなく、人が人を選び、現実に撮られた動画が流れるSNSを取り戻したい」
― Evan Henshaw-Plath(通称Rabble、元Twitter初期メンバー)

2. アーカイブからの蘇生──技術的挑戦と“保存”の精神


Vineのアーカイブ復元を担ったのは、Archive Teamという草の根アーカイブ集団。
TwitterがVineの閉鎖を発表した2016年、彼らは40〜50GBの巨大なバイナリファイルとして動画を保存した。
だが、そのままでは誰も簡単に視聴できない“データの墓場”に過ぎなかった。

Rabbleは数ヶ月を費やしてこのアーカイブを解析し、約15〜20万本の動画と6万人のクリエイター情報を再構築。
閲覧数やコメントの一部までも復元し、かつてのSNS文化を“再現可能な形”で蘇らせた。

「全部は無理だったけど、多くの人気Vineを再構築できた。
それぞれのクリエイターに新しいプロフィールを与えたんだ。」(Rabble)

ただし、K-POP系動画など一部ジャンルは保存されていない。
それでも、Vine文化の“中核”を取り戻す試みとしては前例のない成功といえる。

3. オープンソース × 検証可能性──AI時代の“信頼設計”


diVineの根幹には、分散型プロトコル「Nostr」が採用されている。
これはドーシーが以前から支持する“検閲不可能で許可不要な”SNS基盤であり、
開発者が独自のアプリやホストを自由に構築できるオープンな仕組みだ。

また、人間による撮影の真正性を検証するために、人権団体「The Guardian Project」の技術を導入。
スマートフォン実機で撮影された証拠を確認し、AI生成素材の混入を防ぐ。

「VC資金や巨大チームなしに、倫理的かつ創造的なSNSを築ける時代が来た」
― ジャック・ドーシー

ドーシーが「and Other Stuff」を設立した理由もここにある。
彼は、“企業の都合で閉鎖されない自由なSNS”を支えるインフラを、非営利×オープンソースの力で構築しようとしているのだ。

4. 懐古ではなく“再設計”──AI時代のSNSに欠けたもの


生成AIが席巻するSNSでは、投稿の多くが自動生成・最適化された“演出”だ。
だが、Rabbleはこう警鐘を鳴らす。

「企業は“AIエンゲージメント”をユーザーの欲求と勘違いしている。
私たちは関与してはいるけど、本当は自分の意思と人間的なつながりを求めているんだ。」

つまり、diVineはAIの否定ではなく、“人間が中心に戻るSNS設計”の再実験である。
そこには、Web2.0黎明期――ブログ、ポッドキャスト、コミュニティが自発的に生まれた時代への構造的ノスタルジーがある。

5. 未来への布石──「AIの中の人間性」を取り戻す試み


現オーナーのイーロン・マスクもX(旧Twitter)上でVineの復活を示唆したが、
現時点で形になっているのはドーシー支援のdiVineだけだ。
しかもそれは“企業主導の復刻”ではなく、非営利・分散型・人間検証付きという全く新しい文脈に立つ。

この潮流は、AI時代のSNSにおける「信頼」「創造性」「自己決定」の再定義といえる。
もしこの試みが成功すれば、AIと共存しつつ「誰が作ったのか」を明確に保証する新しいソーシャルモデルが生まれるかもしれない。

まとめ


diVineは単なる「懐かしのVine」ではない。
それは、人間の表現がAIの海に埋もれない未来を模索するプロトタイプである。
ドーシーとRabbleが見据えるのは、SNSの原点──「実在する人間が、実在する瞬間を共有する」世界の再設計だ。

オススメ記事


Next Big Wave(成長株・アイデアの種・トレンド深掘り)



いいなと思ったら応援しよう!