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【3/22 - 3/28】注目の海外スタートアップの大型資金調達

昨今のスタートアップ界隈では、1億ドルを超える大型調達が相次ぎ、企業のバリエーション(評価額)もかつてないほど高額化しています。特にフィンテックやサイバーセキュリティ、AI関連といったテック分野は引き続き投資家から注目を集め、1週間のうちに「1億ドル以上」の調達が複数社で発表されることも珍しくありません。本記事では、3月22日から3月28日にかけて米国を中心に発表された代表的な資金調達トップ10を取り上げ、それぞれの企業と調達背景について解説します。また記事の最後には、今回紹介した企業以外のグローバルの大型資金調達事例も紹介し、資金調達やスタートアップ動向の全体像に迫ります。


1. Fleetio:4億5,000万ドルの調達


1-1. 企業概要と事業内容

Fleetioは、車両や設備などの「フリート管理(Fleet Management)」に特化したソフトウェアプラットフォームを提供する企業です。米国アラバマ州バーミンガムに本拠地を構えており、自動車の保守や修理・在庫管理などフリート管理に必要な業務を一元的に行えるSaaSソリューションを展開しています。

1-2. 調達の背景

Fleetioは、メンテナンス認証プラットフォーム「Auto Integrate」の買収を目的として、既存投資家であるElephantと新たに投資家として参加したGoldman Sachs Alternativesのグロースエクイティ部門が共同で主導するラウンドにて、総額4億5,000万ドル(約450億円)の資金を獲得しました。今回の調達により企業評価額は15億ドルを超えるとされ、車両管理業界のユニコーン企業として存在感を高めています。

1-3. 今後の展望

買収後の新会社は、合計で800万台以上の車両を管理し、年間で1,300万件を超える修理オーダーを処理する体制を整備すると発表しています。2011年の設立以来、累計約6億2,000万ドルを調達してきたFleetioは、今後さらにフリート管理に特化した新サービス開発や顧客基盤の拡大を進める見込みです。

2. Mercury:3億ドルの調達


2-1. フィンテックの新星

Mercuryはサンフランシスコを拠点とするフィンテック企業で、スタートアップや成長企業が必要とする様々な金融ツールを統合した銀行口座サービスを提供しています。2017年に創業され、比較的若い企業ながら、既存の銀行と差別化を図りつつ利用者の急増に成功しました。

2-2. 大型調達の内容

Sequoia CapitalがリードしたシリーズCで新たに3億ドルの資金を調達し、その評価額は35億ドルに達しました。2021年のシリーズB時には16億ドルの評価額でしたので、およそ2倍以上のバリエーション上昇となります。調達総額としては4億5,200万ドルを超えており、「スタートアップ向け次世代銀行」の代表例として注目を集めています。

2-3. 市場へのインパクト

銀行口座と財務管理をシームレスに結び付けるプラットフォームは、今後も需要が高まると予想されます。Mercuryは調達した資金を使い、法人向け決済・課税管理・融資サービスなどの機能拡張やグローバル展開を見据えた取り組みを強化するとみられます。

3. Island:2億5,000万ドルの調達


3-1. 企業概要

Islandはテキサス州ダラスを拠点とするサイバーセキュリティ企業で、エンタープライズ向けブラウザの開発を行っています。既存のWebブラウザではセキュリティ対策が限定的である一方、Islandのブラウザは企業向けに特化したセキュリティ機能を備え、社内データ漏洩を防ぐのが特徴です。

3-2. 今回の調達と評価額

Coatue ManagementがリードしたシリーズEラウンドで2億5,000万ドルを確保し、評価額は48億ドルに到達しました。これは2023年10月に実施されたシリーズC(1億ドル・評価額15億ドル)や、2022年3月のシリーズB(1億1,500万ドル・評価額13億ドル)と比較して、急激なバリエーションの上昇が見られます。

3-3. サイバーセキュリティ市場の潮流

2023年末にはGoogleの親会社Alphabetがクラウドセキュリティ企業Wizを320億ドルで買収する意向を示すなど、サイバーセキュリティ市場は大型のM&Aや投資が相次いでいます。Islandも累計8億1,000万ドル近くの資金を調達しており、こうした流れの中でさらなる拡大を目指す企業の一つといえるでしょう。

4. Aura:1億4,000万ドルの調達


4-1. ファミリー向けサイバーセキュリティ

Auraはボストンに本拠を置くサイバーセキュリティ企業で、家族全体を対象としたデバイス保護やスキャム・詐欺対策、オンライン上の危険なやりとりに関する警告、ID盗難防止などに特化しています。いわゆる「BtoB」中心のサイバーセキュリティ企業が多い中、Auraは一般家庭向けのサービスに注力している点がユニークです。

4-2. シリーズGと評価額

今回のシリーズGでは、Ten Eleven VenturesとMadrone Capital Partnersが主導し、株式と負債を組み合わせた総額1億4,000万ドルの調達を行いました。評価額は16億ドルを超えており、2017年の創業以来、累計で約6億6,300万ドルを調達しています。直近ではBtoB領域のサイバーセキュリティ企業の大型調達が続いていましたが、Auraの成功により、消費者向けセキュリティ市場にも大きな可能性があることが示されました。

5. Supira Medical:1億2,000万ドルの調達


5-1. 医療機器分野での存在感

Supira Medicalは、カリフォルニア州ロスガトスに拠点を置き、「経皮的補助人工心臓デバイス(Percutaneous Ventricular Assist Devices)」の開発を行う医療機器スタートアップです。心臓のポンプ機能を一時的に支援する装置の高性能化を追求し、重篤な心疾患の患者に新たな治療選択肢を提供することを目指しています。

5-2. シリーズEの内容

Novo Holdingsとカタール投資庁(Qatar Investment Authority)が中心となり、1億2,000万ドルのシリーズEラウンドを実施。2012年の創業以来、累計で約2億4,100万ドルの資金を確保してきたことになります。調達した資金は、臨床試験の拡大やFDA承認手続きの加速などに使われる見込みで、近い将来に市場投入される製品に期待が寄せられています。

6. Nexthop AI:1億1,000万ドルの調達


6-1. AIとネットワークインフラの融合

Nexthop AIはカリフォルニア州サンタクララに本社を置き、大規模データセンターやハイパースケーラー向けのネットワーキングハードウェアと独自のAIソリューションを組み合わせたインフラストラクチャを提供する企業です。クラウドやビッグデータのニーズが増す中、効率的かつ高性能なネットワーク構築への需要が高まっています。

6-2. Lightspeed Venture Partnersがリード

今回のラウンドはLightspeed Venture Partnersが主導し、1億1,000万ドルを確保しました。Lightspeedは先月も人工衛星プラットフォーム開発のK2 Spaceへの出資や、医療ドキュメントスタートアップAbridge、アプリケーションセキュリティのSemgrepなど、話題性の高い企業への積極的投資で注目されています。Nexthop AIのようなインフラ領域は今後も大規模な資金流入が見込まれます。

7. Also:1億500万ドルの調達


7-1. 電動マイクロモビリティの新興企業

Alsoはカリフォルニア州パロアルト拠点の、電動マイクロモビリティサービス企業です。電動スクーターや電動自転車など、いわゆる“ラストワンマイル”の移動手段に特化した製品・サービスを開発しており、近年ますます需要が高まるサステナブルな交通手段の一角を担っています。

7-2. ステルス解除と資金調達

Eclipse Venturesがリードするラウンドで1億500万ドルの資金を確保し、同時にステルスモードからのローンチを発表しました。競合にはLimeやBirdといった大手マイクロモビリティ企業も存在しますが、Alsoは独自の設計技術やサプライチェーンの最適化で差別化を図るとされています。

8. Heartflow:9,800万ドルの調達


8-1. 非侵襲的な冠動脈ケアプラットフォーム

Heartflowはカリフォルニア州マウンテンビューに本社を構える医療系スタートアップで、CT画像をもとに冠動脈疾患を解析し、治療方針をサポートするプラットフォームを開発しています。カテーテルによる侵襲的検査を減らし、患者の負担を軽減する技術として注目を集めています。

8-2. コンバーチブルノートによる調達

今回、Heartflowは転換社債(コンバーチブルノート)の売却を通じて約9,800万ドルを調達しました。投資家にはFidelity Management & Research Co.などが名を連ねています。2010年の創業以来、同社は累計で約8億9,100万ドルを調達しており、今後はさらに多様な心疾患向けソリューションを開発する見込みです。

9. Character Biosciences:9,300万ドルの調達


9-1. AIとゲノミクスを融合した創薬

Character Biosciencesはニュージャージー州ジャージーシティに拠点を置くバイオテック企業で、AI主導のモデリングや大量のゲノミクスデータ、臨床情報を組み合わせ、新しい医薬品開発の可能性を追求しています。

9-2. シリーズBの概要

新たにaMoon FundとLuma Groupが共同リードし、9,300万ドルのシリーズBを獲得。2018年の設立以来の累計調達額は1億2,000万ドルに達しました。創薬におけるAI活用の期待が高まる中で、大手製薬企業との共同研究や提携の動きがさらに活発化するとみられています。

10. Omaha Productions:8,000万ドルの調達


10-1. ペイトン・マニングのエンタメ企業

Omaha Productionsは、元NFLのスターQBであるペイトン・マニング氏が設立したエンターテインメント企業です。スポーツ関連のコンテンツ制作やメディア事業、番組制作などを手掛け、人気スポーツ番組とのコラボやトークショー展開でも話題を呼んでいます。

10-2. 新ラウンドと企業評価

今回、Patrick Whitesell Holdingから8,000万ドルの資金を調達し、企業評価額は8億ドルに達しました。スポーツとエンタメの融合ビジネスは市場規模が拡大しており、著名アスリートによるメディア事業への投資も今後一層盛んになると予想されます。

ビッググローバルディール:イギリスのLevelによる約1億3,600万ドルの調達

米国外で注目すべき調達としては、イギリスを拠点とするLevelが約1億3,600万ドルの大型資金調達を発表しました。同社はローンや資金提供、税務関連サポートなど、幅広い金融・法務サービスを提供するアプリケーションを開発しています。英国内外に展開する中小企業や個人事業主が同社の顧客となっており、さらなるグローバル展開が期待されます。

今回ご紹介したように、1週間のうちに1億ドル以上を調達するスタートアップが複数社現れるほど、資金調達ラウンドは大型化の一途をたどっています。特にサイバーセキュリティ、AI、フィンテック、医療機器、モビリティなどの分野では、投資家からの資金流入が著しい傾向にあり、そのスケールアップのスピードも年々増しています。大企業によるM&Aも活発化する中、今後はさらに高額な調達や合併・買収のニュースが続くと予想されます。

一方で、世界経済の先行きや金利動向、地政学的リスクなど、投資を取り巻く不確実性も高まりつつあるのも事実です。スタートアップにとっては、豊富な資金を武器に早期に市場シェアを確保することが成長のカギとなる一方、新規投資家の獲得が難しくなるリスクも避けられません。投資側からは「より確度の高い事業モデル」を見極める視点が求められるでしょう。

今回取り上げた企業は、いずれも明確なバリューを提供できるプロダクトを持ち、投資家の期待に応える形で大規模な資金を引き寄せています。とりわけサイバーセキュリティとフィンテックの大型ラウンドが多かった点は、アメリカのスタートアップ市場が現在どの領域を重要視しているかを示唆しているといえるでしょう。

今後もさらなるユニコーン企業の誕生や、既存ユニコーンの評価額上昇、そして海外からの大型調達のニュースが続いていく見込みです。スタートアップの動向をリアルタイムで追いかけることが、新たなビジネスチャンスを見いだすうえで非常に重要になってくるでしょう。


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