Figma株価下落の深層:AI訴訟リスクと「プレミアムSaaS」バリュエーション
2025年7月31日、デザインソフトウェア業界の巨頭であるFigma Inc.(以下、Figma)が、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場を果たしたことは、単なる一企業のIPO(新規株式公開)を超えた象徴的な意味を持っていた。公開価格33ドルに対し、初値は85ドル、そして、取引初日の終値は115.50ドルに達し、一時は時価総額が500億ドル規模に膨れ上がった。この劇的なデビューは、2021年のRivian Automotive以来となるベンチャーキャピタル支援型テクノロジー企業の大型上場であり、高金利環境下で凍結状態にあったSaaS(Software as a Service)市場の雪解けを告げるものとして、投資家たちに熱狂的に迎えられた。
しかし、その熱狂からわずか4ヶ月後の2025年11月現在、Figmaの株価は36ドルから44ドルのレンジまで急落し、IPO価格近辺での推移を余儀なくされている。最高値からの調整幅は約70%に達し、時価総額はAdobe Inc.による買収提案額であった200億ドルを割り込む水準(約178億ドル)まで縮小した。この急激なボラティリティは、マクロ経済的な金利動向や一般的なテック株の調整だけでは説明がつかない。そこには、Figma固有の、そしてSaaSビジネスモデルの根幹に関わる構造的なリスクが潜んでいる。
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