見出し画像

Decagon CEOが語るエージェント型AIの市場で「勝つ」ためのポイント

近年、生成系AI(Generative AI)を用いた「エージェント型AI」が、多くの企業の業務改革や新規ビジネス創出の中心的存在として注目を集めています。顧客サポート領域においては、従来のFAQチャットボットや問い合わせフォームが担っていた「部分的」な役割を、より高度で包括的、そしてコンシェルジュのように即時に対応できる仕組みに置き換える可能性を秘めています。

本記事では、AIカスタマーサポートエージェントのスタートアップ「Decagon(デカゴン)」のCEO兼共同創業者であるJesse Zhang(ジェシー・チャン)氏とホストであるIvan氏との会話をもとに、エージェント型AIの市場で「勝つ」ためのポイントや、そこに至るまでのプロダクト開発、チームビルディング、そして将来の展望について掘り下げます。


1. エージェント型AIとは何か


1-1. 顧客にとっての「理想のコンシェルジュ」

エージェント型AIとは、ユーザーや顧客がチャットや音声など自然言語でリクエストをすると、まるで「人間のエージェント」のように応対し、必要な情報提供やタスクの実行を自動化する仕組みのことです。たとえば、顧客サポートの場合、ユーザーは問い合わせを送り、AIはトラブル内容を理解した上で、適切な回答を瞬時に提示し、必要に応じてシステム上での操作や修正まで行うことができます。

Zhang氏は、以下のように述べています。

「将来的には、ユーザーがどんな製品やサービスを利用していようと、個人的な“コンシェルジュ”として24時間いつでも対応してくれるAIエージェントが当たり前になるでしょう。瞬時に応対し、あらゆるデータへアクセスして、必要なタスクを代行してくれる――それこそが私たちが目指す未来です。」

1-2. Ivan氏の“坊主頭”エピソード

今回のポッドキャストの冒頭で注目を集めたのが、ホストのIvan氏が“帽子”をかぶって出演していた点。その理由は、Zhang氏とIvan氏が交わした「ある賭け」によるものでした。Ivan氏は、「Decagonがある一定の目標売上を達成できないだろう」と冗談めかして賭けをした結果、見事にDecagonが目標を超える成果を挙げたため、Ivan氏は頭を剃らざるを得なくなった――というエピソードです。このやりとりは、スタートアップにおける挑戦と成果を象徴する“ほほえましい”一幕と言えるでしょう。

2. 消費者向けビジネスとB2Bビジネスの違い


2-1. 直感主導の消費者向けと論理主導のB2B

Zhang氏は、自身が大学を卒業してすぐに取り組んだ最初のスタートアップが「コンシューマー向けアプリ」だったことに触れ、そこから「B2B向けのSaaS」へと事業領域を変えた経緯を説明します。コンシューマー企業では、プロダクトの「直感的な魅力」や「バイラルな拡散」を狙う一方、売上を度外視してユーザーベースを拡大するケースがしばしば見られます。ところがB2Bの場合は、顧客企業が抱える課題やROI(投資対効果)をいかに論理的に解決するかが最優先となります。

「コンシューマー向けは、ユーザーの嗜好や直感的な流行が大きく影響します。一方、B2B向けはより分析的・論理的なアプローチが重要ですね」とZhang氏は言います。

2-2. 顧客サポートにおけるROIの可視化

B2B特有のメリットとして「価値=費用対効果」が明確に示しやすい点が挙げられます。DecagonのAIエージェントであれば、たとえば、従来は数百人規模のオペレーターが手作業で対応していた問い合わせの一定割合を瞬時に自動化できるため、担当者の負荷が大幅に軽減されます。さらに、回答品質や顧客満足度が向上すれば、単なる「コストセンター」にとどまらず「売上増加」にも貢献し得るとZhang氏は強調します。

3. 製品開発と顧客フィードバック


3-1. カスタマーサポートに着目した理由

Zhang氏は初期の「アイデア探索」の過程で、さまざまな企業にヒアリングを行ったと語ります。物流オペレーションやセキュリティ関連など複数の領域を検討する中で、顧客企業から「サポート部門に数百人を割いている」「問い合わせ対応の品質に課題がある」といった生々しい声が多く寄せられました。そこで確実なROIと導入効果を得やすい「顧客サポート」領域へフォーカスしたのです。

「最初は幅広いOps分野のアイデアを検討していましたが、多くの企業が“サポートチームに関わるコストや複雑さを減らしたい”と言うんですね。その声をきっかけに『ここなら確実に大きな価値を出せる』と確信しました。」

3-2. 顧客インサイトを製品に落とし込む

Decagonが成功を収めている要因の一つは、ユーザー企業が導入後に何を求めているかを徹底的に汲み取り、素早くプロダクトへ反映していることです。

  • 導入・検証のしやすさ: 初期段階では一部の問い合わせカテゴリのみをAIエージェントに割り当て、効果を可視化する。

  • モニタリングとガードレール: オペレーターからの修正や確認が必要な際のフローを整備し、企業側が安心して管理できる仕組みを設計。

  • 拡張性: 効果が立証された段階で、別の問い合わせ種別や地域、言語にすぐ拡張できる。

こうしたポイントを押さえることで、「本当に業務コストを削減しながら顧客満足を高めるAI」であると証明しやすくなるわけです。

4. エージェント型AIが変えるビジネスの未来


4-1. 労働力の最適化と即時性

AIエージェントの大きな価値は、単に「回答文」を返すだけではなく、実際の業務フローを自動化・実行する点にあります。Zhang氏は、「労働力を“置き換える”というより“最適化”」と表現し、重要性の高いカスタマーサポート業務ほど人材が創造的な部分に注力し、反復的・定型的な対応は、AIが担う形へとシフトすると語ります。

「人間はより複雑なケースや高度な判断を要する業務に集中すべきです。AIが24時間365日、即時応答や簡易処理を担当することで、顧客体験は一段と向上します。」

4-2. 顧客体験のパーソナライズと収益への寄与

従来、カスタマーサポートは、「コストセンター」とみなされがちでした。しかし、エージェント型AIは、膨大な問い合わせデータを解析し、顧客の行動や嗜好を把握することが可能です。これにより、単なる問い合わせ対応ではなく、適切なアップセルやクロスセル、パーソナライズされたサポートを提供して顧客満足度を高め、収益増大にも直接的に貢献できるようになります。Zhang氏は、こう強調します。

「企業の成長を考えると、優れたカスタマーサポートはもはや“守りのコスト”ではなく“攻めの投資”ととらえられるようになるでしょう。」

5. Decagonが目指す次の一手


5-1. 組織拡大とカルチャー構築

2022年に創業したばかりのDecagonは、現時点ですでに約30名規模のチームへと急成長しています。Zhang氏によれば、採用においては「小規模でも高スキル」、「自社のミッションに共感してくれるメンバー」を徹底的に見極める方針だそうです。

  • チームビルディング: 小さなチームでも大きな成果を出せるよう、透明性の高いコミュニケーションと効率的なプロセスを重視。

  • カルチャーの浸透: 技術的な挑戦を楽しみながら、顧客価値に直結する開発を最優先する文化。

5-2. 新技術の適用と長期的展望

今後は、顧客サポートのみならず、より包括的な「業務処理」や「インテリジェントアシスタント」への発展可能性が見込まれます。自社でデータやロジックを管理しつつ、ユーザーが望む複雑な手続きやシステム連携を自動化していくことで、ビジネス全体の生産性と収益性を高める狙いです。

「新しいテクノロジーが登場するたびに、私たちは“今のお客様がどんな課題を抱え、何を望んでいるのか”を見極めた上で適用していきたい。結局、大事なのは“理想像”ではなく“実際の価値”ですから。」

エージェント型AIの波は、これまで部分的・断片的だった自動化を、より高度な業務レベルへと引き上げるポテンシャルを持っています。Jesse Zhang氏の言葉通り、「顧客にとっての理想的なコンシェルジュ」を目指し、徹底した顧客理解とスピーディなプロダクト改善を続ける企業こそ、この激動の市場で優位に立てるでしょう。

Decagonの事例が示すように、単純なFAQ対応から脱却して、顧客の体験と企業の収益を同時に向上させる“攻めのカスタマーサポート”へ移行する潮流は今後さらに加速するはずです。将来的には業界のスタンダードとして、多くの企業にエージェント型AIが不可欠なインフラとして導入され、ビジネスのあり方そのものを大きく変えていく――そんな未来が、すでに目の前に広がっています。


関連記事


いいなと思ったら応援しよう!