IPO市場再始動:殺到ではなく整然と進む“コンボイ”の時代へ
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2025年、米国のベンチャー企業によるIPO(新規株式公開)市場が再び活気を帯び始めています。これまで長らく停滞が続きましたが、ここにきて「ウィンドウが再び開いた」と言われるほどの兆しが見られます。特に、デザインソフトウェア企業FigmaやステーブルコインプロバイダーのCircle Internet Groupといった企業の成功事例には、強い市場の関心が集まっています。
ただし、投資家や市場関係者たちは、かつてのような“スタンペード(殺到)”ではなく、“コンボイ(隊列)”の形を期待していると語ります。これは、IPO市場が成熟し、安定成長を志向する健全な状態を表しています。本記事では、現状のIPO環境、関係者の見解、そして今後見込まれる動向を体系的に解説します。
1. 現在のIPO環境:スタートはゆるやか、だが確かに「再開」
1-1. 活動の回復と市場の反応
2025年前半、米国IPO市場は徐々に回復の兆しを見せました。PwCによれば、5月末までに実施された伝統的IPOは25件、調達額は110億ドルで、2024年同期(28件、127億ドル)と比べて件数は減少したものの、市場全体の平均を上回るパフォーマンス(+約11%)を記録しました。
また、EYの調査では、2025年第2四半期のIPO件数は前年同期比で16%増加し、50件の上場で81億ドルを調達。初日の株価上昇率(中央値)は20%を超え、50百万ドル以上調達した銘柄のうち、40%超が四半期末までにプラスで推移したことが注目を集めました。
1-2. 注目IPOの成功:Figma や Circle の事例
Figmaは公開時の時価総額が190億ドルとされ、2025年8月中旬には340億ドル近くにまで高騰。一方Circle Internet Groupも、IPO後に株価が4倍以上に上昇し、時価総額は330億ドル超となります。本稿では、「速度ではなく質」が評価される市場の空気が感じられます。
2. 「スタンペードではなくコンボイ」の意味するもの
2-1. 投資家と発行側の慎重な姿勢
Athena Capital創設者のIsabelle Freidheimは、2025年のIPO市場を「旗艦(大型)企業が先頭に立ち、中規模企業が続くコンボイ」のようだと表現し、「コンボイこそ、健全で持続可能なIPO市場の姿」と評しています。
過去の「成長のためなら守益を度外視する」時代とは異なり、現在はコスト削減やユニットエコノミクスの確立、堅実な財務体質を伴う企業が上場に踏み切っており、質の高いIPOが市場を支えている点が強調されています。
2-2. 銀行の慎重な価格設定と市場の反発
上場初日の急騰(中央値36%の「pop」)に対し、ウォール街の引き受け銀行が慎重なプライシングを採用したことで、企業側が6.1億ドル分の潜在的収益を失ったとの指摘もあります。しかし、こうした控えめなアプローチは長期的な信頼構築につながるとの評価もあります。
3. 後半の見通しと次の波
3-1. 継続の見通しと潜在リスク
SSM Law共同創業者Lindsey S. Mignano氏は、「関税や市場の不確実性が緩和されたことで市場の安定が進んでおり、IPO勢いは続く」と予想。ただし、「フォローオン(追加上場など)のパフォーマンスや取引規模はまだ混在している」との指摘もあります。
Portage Capital SolutionsのDevon Kirk氏も、「プレIPO投資家の要求ディスカウントが縮小しており、信頼感が戻っている」とする一方で、マクロ経済リスクによる市場の急変可能性を警戒しています。
Freidheim氏は、強い需要を集めた企業が先陣を切ったことで、後半はペースは緩やかになる可能性があるが、上昇トレンドは維持されると見ています。
3-2. 予測数値とIPO件数の見通し
Deloitteは、2025年のIPO件数を最大160件、調達総額を450~500億ドルと予測しています。
また、Renaissance Capitalでは、2025年のIPO件数はすでに119件、総調達額18.3億ドルと報告されており、前年同期比では件数は+45.1%、調達額は−21.2%とのことです。
4. AI企業のIPO:次の注目テーマ
4-1. AIによるVC投資の活性化
2025年第1四半期、VC投資額は800億ドル超と大きく回復。中でも40億ドル規模のAI関連大型案件が寄与し、全体を+28%押し上げました EY。
4-2. AIスタートアップのIPOのタイミングとは
Kirk氏は、IPO前の企業が「AI採用による勝者」としての立ち位置を明確にすることの重要性を指摘。一方、Mignano氏は、スタートアップが過去10~15年でIPOに至る傾向があった中、AIを活用する企業はクラウド展開や自動化などによりIPOまでの期間を短縮できる可能性があると述べています。CoreWeave、Databricks、CerebrasなどがIPOに成功すれば、IPO環境の短縮にもつながると予想しています。
Freidheim氏も、AI企業の上場は「12~24ヶ月以内に第一波が訪れる可能性が高い」と予測。投資家が求めるのは、持続可能なビジネスモデル、予測可能な収益、実顧客による採用といった堅実な基盤だと強調します。

