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営業10人を「1.2人+AI20体」に置き換えたら何が起きたか——SaaStr流“AI営業”の現実と勝ち筋

「営業チームをAIに置き換えたら、売上は伸びるのか?それとも崩壊するのか?」——SaaStr創業者Jason Lemkinは、約10人規模のGTM(SDR/AE中心)を、“1.2人の人間+20体のAIエージェント”に置き換えました。驚くべき結論はシンプルです。「成果はほぼ同じ。ただし、効率とスケールの仕方が別世界になった」。本稿では、彼の発言を手がかりに「何が起きたのか」「なぜ回ったのか」「誰の仕事が変わるのか」を、実務目線で解剖します。


1. 「10人→1.2人+20エージェント」で起きた“現実”


Jasonは、オフィスの元営業デスクに、エージェント名の札を貼ったと言います。まさに象徴的な光景です。

彼の総括はこうです。「生産性は“良くも悪くもない”。ただ、ずっと効率的で、ソフトウェアだからスケールする」。さらに「エージェントは夜も週末もクリスマスも働く」。ここが肝です。

つまり、“爆伸び”よりも先に、止まらない稼働が組織の前提を書き換えた。人間の都合(休み、離職、対応遅延)で失われていた機会が、静かに回収され始めます。

1-1. 置き換えの対象は「ミドル層以下」

Jasonは極めて辛辣に言い切ります。
「AIは、いま人がやりたくない仕事を置き換え、“ミドルパックと凡庸層”を押し出している」

ここでの“置き換え”は、トップセールスではなく、プロダクト理解が浅いまま定型業務を回す層です。逆に言えば、優秀な人材はまだ希少で、「良い人がいれば明日でも雇う」とも述べています。

2. SaaStrが売っているものと、エージェントが効く理由


SaaStrの販売は大きく2系統。

  • 高単価:スポンサー(平均70–80kドル)

  • 低単価:チケット(数百〜数千ドル、ただし高ボリューム)

この構造が重要です。人間が手を出しにくいのは、低単価や“微妙な見込み客”のフォロー。Jasonの例でも、「人間が“割に合わない”として捨てたリード」にAIを当てると、反応率70*に達したと言います。

ここに“AI営業”の最初の勝ち筋があります。人がやらない領域を埋めるだけで、成果は出やすい。

2-1. 「全プレイブックが壊れた」の意味

彼は「アウトバウンドもウェビナーもイベントも、プレイ(施策)は全部まだ効く。ただプレイブック(運用の型)が壊れた」と説明します。

背景は二極化です。

  • 超成長AI企業:リードが多すぎて“返す相手を選ぶ”

  • それ以外:需要が薄く、従来型ではROIが合わない
    このどちらにも、AIで“処理能力”を増やす動機があります。

3. SDR/BDRは「来年、ほぼ絶滅」—職種の再定義


最も強い断言がここです。
「メール中心のSDRは来年90%置き換わる」
「インバウンドを人が“資格審査”する仕事(BDR)は、来年ほぼ絶滅する」

理由は顧客体験です。
「『Contact me』を押して、翌日“よく分かってない若手”から質問されるのは最悪。AIなら即時に“気づかれない形で”適格判定し、会議設定までできる」
つまり、人間の役割は“作業”ではなく、高単価交渉・複雑な調整・信頼構築へ寄ります。

3-1. ではAEは安全か?

Jasonは、短期的に「来年末でも70%は安全」としつつ、中期では「40–50%まで下がる可能性」を示唆します。

特に、価格交渉が単純で、製品理解がFAQ化できる領域は、“AIが人より詳しい”状態になりやすい。本人も「人間より賢いAIとチャットしたい」と語っています。

4. 成功の条件は「導入」ではなく「訓練と監督」


ここが誤解されがちですが、彼は何度も釘を刺します。
「エージェントは箱出しでは動かない」
「“Ingestion(取り込み)”や“Training(訓練)”は難しくない。要は資料を入れて、質問に答え、毎日ミスを直すだけ」

実務に落とすと、こうです。

  • Web/社内Wiki/営業資料を投入

  • 生成された質問に回答し、望む振る舞いへ寄せる

  • 毎日アウトプットをレビューし、誤りを修正

  • 30日、毎日1〜2時間やると“かなり使える”

4-1. 「1.2人」の0.2人が最重要

SaaStrでは、Chief AI OfficerのAmeliaが、時間の20%を“エージェントのオーケストレーション”に投じています。

Jasonは、ここを「怠け者には無理」と表現します。なぜなら、エージェントは止まらないから。人間側が追いつかないと、品質が崩れます。
要点は、AIが営業を自動化するのではなく、営業を“監督業”に変えることです。

5. 明日から使える実践ルール—「泣ける箇所」をAIで塞ぐ


彼の提案で最も再現性が高いのが、“シークレット(incognito)テスト”です。
「新しいメールで自社サイトを最初から触り直せ。サポート、問い合わせ、オンボーディング…一番“泣ける”体験を特定しろ。そこにエージェントを入れろ」
これは経営にも現場にも効きます。なぜなら、AI導入は“夢の未来”ではなく、取りこぼしの穴埋めから始めた方が成功確率が高いからです。

5-1. 良いAIメールの作り方は“ゼロから生成”ではない

Jasonの最重要Tips:
「一番うまい人のメールをテンプレにし、AIにA/Bで変奏させろ」
AIメールが酷いのは「悪いベンダー」か「訓練不足」。人間の平均メールも大抵ひどく、AIはそこを普通に超える——この“現実”を直視するのが第一歩です。

結論:AI営業は「人員削減」ではなく「組織設計の変更」


SaaStrの事例は、“AIで売上が爆伸びした”物語ではありません。むしろ本質は、①人がやらない仕事が埋まり、②対応速度が常時稼働になり、③監督という新しい中核業務が生まれたこと。
「自分の仕事が危ない」と感じた人ほど、Jasonの言葉が刺さるはずです。
「どれでもいい。痛い業務を1つ選び、ツールを入れ、自分で訓練して動かせ。できれば“超雇われやすい”」

次の差は、AIの性能ではなく、“使いこなす側の習熟”で決まります。

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