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ソフトウェアだけ崩壊、指数は高値圏──この“ねじれ相場”の攻略法

米投資ポッドキャスト「The Compound and Friends」エピソード228 “Momentum Stock Slaughterhouse”(2026年2月6日公開)では、指数は比較的しっかりして見える一方で、人気セクターが“処刑”されるように下げる――そんな「表面と水面下のねじれ」が議論の中心になりました。

ゲストは、NFJ Investment GroupのCIOであるJohn Mowrey。NFJは、傘下のブティックとして運用を行う立場から、バリュー運用が直面してきた構造変化(“factor decay”)と、足元のモメンタム崩壊局面で「何を買うべきか」を語ります。


1. 「指数は平穏、でも中身は修羅場」— 水面下の解体が示すもの


番組の空気を決定づけたのは、「S&P500は高値圏なのに、特定の業種・銘柄群では投げ売りが起きている」という違和感です。ホスト側は、単なる調整というより“マージン由来の強制売り”に見える、と表現しました。

印象的なのは、議論が「下落そのもの」よりも“下落の質”に向かった点です。

  • 出来高が急増し、秩序立った売りではない

  • 1日で大きく下げる銘柄が同時多発的に増える

  • しかも指数は崩れない

この構図は、投資家心理を二分します。

  • 「広がる健全さ(資金が493銘柄に分散)でむしろ強気」

  • 「巨大セクターが崩れているのに指数が耐えるのは、遅れて来るショックの前兆」

番組でも、ゲストは「懸念」を示し、ホストは「むしろ強気」と真正面から割れました。ここがこの回の一番“おいしい”ところです。

2. バリューの“勝ちパターン”が効かなくなった理由:factor decay とETF化


John Mowreyが語った核心は、2008年前後を境に「低PBR」「低PER」「高配当」など、古典的なバリュー要因が以前ほど超過収益に直結しにくくなった、という見立てです。彼はこれを“factor decay(要因収益の減衰)”と呼び、背景としてETFやスマートベータの普及を挙げます。

番組内の言い回しは刺激的でした。

「かつて“アルファ”だった分散要因が、ETFによって“ベータ化”した」

要するに、「割安株を買う」という行為自体が商品化され、人気が集まった結果、割安の“旨味”が薄くなる。さらに、指数上位に伸び続ける新しいタイプの企業(高成長・高粗利)が登場し、バリュー運用が“見ない理由を作って排除していた”ことも痛点として語られました。

ここで重要なのは、彼が「バリューが終わった」と言っていないことです。終わったのは“同じ物差しで勝てる時代”であり、バリューは、「物差しを作り直さないといけない」。

3. “分類”ではなく“比較”で見る:カスタム・ピアグループという処方箋


Mowreyが提示した処方箋が、ピアグループ(比較集団)を自分で作るという発想でした。GICSの業種分類に従って機械的に比較するのではなく、投資家が実際に同列に見ている「競争軸・需要軸」で再分類して、バリュエーションの位置取りを判断する。

番組中の例がわかりやすい。

  • 化学セクターの中でも、Sherwin-Williamsは「コモディティ化学」より「ホームセンター系」に近い性格を持つ

  • Union PacificとPrologisは、業種が違っても、物流・保管という連関で市場が同じ“物差し”を当てている

この視点のメリットは、「安いから買う」を超えて、

  • なぜ安いのか(構造的にディスカウントされる宿命か)

  • どこまで戻りうるのか(平均回帰が起きやすい分布か)
    を、より現実に即して考えられる点です。

4. “AIが市場を二重に壊す” — ソフト崩壊とステープル高騰の同時進行


この回の刺激は、AIがもたらす変化が「勝者総取り」ではなく、“二重の破壊”として語られた点です。

  • AIの勝者(大手AI関連)が売られる(番組内では、“anti-bubble”という言葉も)

  • AIで置き換えられる側(従来型ソフトウェア)がさらに売られる

そして資金の逃げ先として示唆されたのが、“disruptされにくい領域”でした。ホストが放った、雑だけど刺さる一言が象徴的です。

「マック&チーズはディスラプトできない」

ただし、Mowreyは、逃避先としての生活必需品(ステープル)に慎重でした。理由は明快で、“ファンダメンタルズではなく、恐怖で倍率(PER)が上がっている”可能性があるから。
ここで議論が一段深くなります。「ディスラプト耐性」は魅力だが、値段を無視すると別のリスク(過剰なPER)が立ち上がる。

5. 「何を買うべきか」— 彼らが挙げた“次の主役候補”と注意点


番組が“What to buy”を語る時、答えは単一銘柄ではなく、条件付きのセクター論になりました。ポイントは2つです。

5-1. 長く続く“バリューの波”は、結局「大きい領域」からしか生まれない

Mowreyは、「バリューが来るなら、金融(特に銀行)を外して成立しにくい」と述べます。これはETF時代の現実で、資金が大きく動くには、指数ウェイトが大きい器が必要だからです。

5-2. “安い”ではなく“稼いでいる安さ”を重視する

彼が繰り返したのは、

  • 低バリュエーション

  • かつ、利益成長などの裏付け
    が揃うところに“足の長い上昇”が生まれる、という立て付けです。番組内では、エネルギー(特に精製=リファイナー)、銀行、素材などが例として登場しました。

一方で、底値拾いの難しさも率直に語られます。特に「AIで壊される/壊されない」の判定は、ある日突然決着がつくタイプではない。ホスト側の言葉を借りれば、

「バイオなら“FDAの日”がある。でもこのテーマには“決着日”がない」
つまり、ソフトウェアの下落は“イベント待ち”ではなく、マルチプル再評価(rerate)で長引きうる。

6. 暗号資産・ゴールド:ETF化が“相関”を作り、価格決定を難しくする


後半で触れられた暗号資産の論点は、投資家の体感に近いものでした。

  • かつて「非相関」と言われたが、ETF化で市場の“カジノ”に組み込まれた

  • 「フロー(資金流入)」が価格に与える影響が大きい

さらに興味深いのは、彼らが「キャッシュフローがない=価値がない」とは切り捨てなかった点です。むしろ、

「値付けが難しい資産ほど、恐怖と熱狂で大きく振れる」
という整理に近い。だからこそ、ポジションサイズと期待値設計が重要になる、という含意が残ります。

結論:この回がくれた“使える”視点


エピソード228の学びを、実務的に3行に圧縮するならこうです。

  1. 指数だけ見ない:相場の本音は“水面下の解体”に出る。

  2. バリューの物差しを作り直す:ETF時代は「因子」より「比較集団(ピア)」が武器になる。

  3. “ディスラプト耐性”は万能ではない:安全資産化した銘柄ほど、価格(PER)に別の罠がある。

最後に、番組の空気を最も端的に表すなら、これです。

「人は説明を求めていない。ティッカーが欲しいだけだ」

でも本当に効くのは、ティッカーではなく、“どう比較し、どこで確かめ、何を根拠に保有するか”という編集可能な思考フレームです。エピソード228は、そのフレームの作り方を(雑談混じりに)うまく示していました。

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