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『次のビックショート』は、貿易戦争:スティーブ・アイスマンが示す投資リスクの全貌

本記事では、マイケル・バトニック氏のポッドキャスト「The Real Eisman Playbook」第196回にゲスト出演した投資家・アナリストのスティーブ・アイスマン(Steve Eisman)が語った、「次の大ショート(The Next Big Short)は貿易戦争だ」という主張を取り上げる。彼のこれまでのキャリア背景や財政赤字論争、労働市場・テクノロジー・金融・仮想通貨セクターへの影響、IPO市場の動向までを、具体例や発言の引用を交えながらわかりやすく解説する。


1. スティーブ・アイスマンとは何者か


1-1. 『The Big Short』での功績と映画化

スティーブ・アイスマンは、2007~08年の米住宅バブル崩壊を予見し、サブプライムローンを空売りしたことで知られる人物だ。マイケル・ルイス著『The Big Short』では、彼の“当たり”の投資判断が詳細に記され、映画化では、スティーブ・カレルがアイスマン役を演じた。彼自身も振り返って「映画の中で“schmuck”と言わせたアドバイス以外、セリフはほぼ忠実だ」と語っている。

1-2. 空売りから転向した投資姿勢

クリシス直後、多くのアナリストがベア相場に固執する中、アイスマンは早々に強気に転じた。彼自身は、「2008年の最悪期を乗り切った後、米政府やFRBが救済に動くと考えていたが、彼らは想定以上に準備不足だった」と振り返る一方で、落ち着くや否や株式市場への参入を図った。こうした変化は、極端な悲観からの脱却力を示すエピソードと言える。

2. 財政赤字論争の再考


2-1. 主流論調とアイスマンの異論

一般には、「財政赤字が拡大すれば金利上昇や民間投資のクラウディングアウトを招く」と論じられる。しかし、アイスマンはこれを「ナンセンス」と断じ、こう述べた:

「財政赤字は、ウォール街の美徳シグナリングに過ぎない」
彼によれば、米国債は世界の金融システムの中核を成しており、ドルが基軸通貨である限り、金利が急騰するリスクは低いという。

2-2. 赤字と金利、過去の事例

実際、10年国債利回りは、過去2年間ほぼ一定水準で推移し、外国保有残高も横ばいだ。アイスマンは、「過去40年間、財政赤字による危機は一度も的中していない」と指摘し、むしろ「株価バブルが赤字を一時的に黒字化させた過去の例」(2001年のドットコム・バブル、1970年代初頭のNifty 50)を挙げている。

3. 次の「大ショート」は貿易戦争か

3-1. 二元論的リスクとしての貿易戦争

アイスマンは、現状最大のリスク要因として「貿易戦争」を挙げ、こう説明した:

「貿易戦争が起きなければ、米経済は数年間成長し続ける。起きればグローバルな景気後退に陥る――これは完全に二元論だ」
彼は、週次失業保険継続受給者数や初回申請件数の上昇に触れつつ、「保護主義か自由貿易かのどちらかしかない」との認識を示した。

3-2. 労働市場とAIの影響

失業保険の継続受給件数は、2021年11月以来の高水準に達し、「解雇後の再就職が最も困難な時期だ」と警鐘を鳴らした。ただしAIの影響については「まだ早すぎて判断できない」という立場を取っている。

4. セクター別インパクト分析


4-1. テクノロジー企業―アップルの中国依存度

アップルについてアイスマンは:

「Appleは、ほぼ100%を中国で製造している。もし米中間で摩擦が起きれば、真っ先に業績に響く」と語る。実際、貿易戦争発動時には、同社株がマグ7中でテスラに次いで大きく下落した。

4-2. 金融セクターの展望

金融株については、「規制緩和的な大統領下では、JPモルガン、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーを買えばいい」と手堅いプレイを推奨。一方、地方銀行・コミュニティ銀行については「M&Aを促進しないと、コスト高と技術投資負担で『大手3行+小規模銀行』の二極化が進む」と警告する。

4-3. ステーブルコインとプライベートクレジット

仮想通貨に関しては、ステーブルコイン(Circle USDなど)を「従来の送金・為替リスクヘッジの代替手段」と評価。ただし、「Tetherの信頼性には懐疑的で、米国拠点のCircleは、規制面で優位」との見解を示す。プライベートクレジット(非銀行系融資)にも注目しつつ、「データ不足で評価が難しい」と述べた。

5. IPO市場の復活と今後


5-1. IPO回帰の兆し

CoreWeaveなどの成功事例を受け、IPO市場への資金流入が再び活発化している。しかし、アイスマンは「貿易摩擦が激化すれば、IPOも一瞬で冷え込むだろう」と慎重に見る。

5-2. 投資家への示唆

最終的に彼は、「貿易戦争リスクの有無こそが今後の投資戦略の成否を分ける」と要約し、投資家には

  1. 貿易戦争シナリオに備えたポートフォリオ分散

  2. 米中依存度の高い銘柄のリスク評価

  3. 金融株やステーブルコインなど安定志向の資産の検討
    を提案している。

スティーブ・アイスマンは、過去の住宅バブル空売りの再現を狙うのではなく、現代の「次なる大危機」として貿易戦争を挙げた。彼の分析は、財政赤字や金利動向だけでなく、グローバルなサプライチェーン・通貨システム・セクター別特性を俯瞰した上でのものだ。投資家は「貿易戦争が起きるかどうか」という二元的リスク要因を常に意識し、分散投資やシナリオプランニングを行う必要があるだろう。


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