Amazonが「Blue Jay」を半年以内に中止——倉庫ロボット開発の現在地

Amazonは、世界最大規模のロボット導入企業の一つだ。2024年7月には、倉庫内のロボット台数が100万台を超えたと発表している。しかし、その規模の大きさは、すべての取り組みが順調に進んでいることを意味しない。同社が2024年10月に発表したばかりの倉庫用ロボット「Blue Jay」が、わずか数ヶ月で開発中止となったことが明らかになった。
1. Blue Jayとは何だったのか
Blue Jayは、複数のアームを持つ荷物の仕分け・移動用ロボットだ。Amazonは当初、当日配送施設での活用を想定し、サウスカロライナ州の施設でテストを進めていた。
注目されたのはその開発速度だ。Amazonは、「他の倉庫ロボットと比べて大幅に短い期間、約1年で開発できた」と説明しており、その背景にはAIの進歩があるとしていた。開発のスピード感は、同社の技術力の高さを示す事例として紹介されていた。
しかし、今回、Business Insiderの報道をTechCrunchが確認する形で、Blue Jayの開発中止が明らかになった。
2. 中止の経緯と今後の方針
2-1. 「プロトタイプだった」という説明
Amazonの広報担当者Terrence Clark氏は、TechCrunchに対し、「Blue Jayは、プロトタイプとして立ち上げたものだ」と語った。ただし、2024年10月の当初のプレスリリースにはそのような記述はなく、その点についての説明は明確ではなかった。
2-2. 技術は他プロジェクトへ引き継ぎ
中止とはいえ、Blue Jayの開発で得られた技術は廃棄されるわけではない。Amazonは、Blue Jayのコア技術を他のロボット「マニピュレーションプログラム」に転用する方針を示している。Blue Jayに関わっていた社員も、他のプロジェクトへ異動するとしている。
Clark氏は、こう述べている。「私たちは、常に顧客体験の向上と、従業員にとってより安全で効率的かつやりがいのある職場環境の実現に向けて実験を続けている。今回のケースでは、Blue Jayのために開発された基盤技術の活用をむしろ加速させており、ほぼすべての技術が引き継がれ、ネットワーク全体の従業員を支援し続ける」。
3. 並行して進む他のロボット開発
3-1. 「触覚」を持つロボット・Vulcan

Blue Jayの中止が伝えられる一方で、Amazonは、別のロボット「Vulcan」も昨年発表している。Vulcanは、2アームのロボットで、一方のアームが収納スペース内の商品を整理・移動し、もう一方はカメラと吸盤を搭載して商品を把持する設計だ。
特徴的なのは、Vulcanが触れた物体を「感じる」能力を持つとされている点だ。実際の現場でのインタラクションから収集したデータを学習に活用しており、倉庫の保管区画での実用化が進んでいる。
3-2. 2012年から続くロボット開発の歴史
Amazonのロボット開発は、2012年、倉庫自動化技術を持つKiva Systemsの買収に始まる。この買収が現在のフルフィルメントオペレーションの基盤を形成した。そこから12年以上が経ち、同社の倉庫内ロボット台数は2024年7月時点で100万台を超えるに至っている。
4. 今回の中止が示すもの
Blue Jayの開発中止は、単なる失敗例として捉えるよりも、大規模な研究開発組織における意思決定のプロセスとして見る方が実態に近いかもしれない。プロトタイプとして迅速に開発・検証し、得られた技術を別のプログラムに転用するというアプローチは、ある意味でソフトウェア開発の反復的な手法に近い。
一方で、プレスリリースの段階でプロトタイプである旨が明示されていなかった点は、外部からの印象管理という観点では課題が残る。
倉庫自動化は引き続きAmazonの中核投資領域であることは変わりなく、Vulcanをはじめとするプロジェクトへのリソース集中が今後の焦点となる。
