AIが投資銀行の“裏方”を代替する日――OpenAIの『Project Mercury』が示す未来
2025年10月21日OpenAIが新たに手がける「Project Mercury」の存在だった。ChatGPTの開発元として知られる同社は、生成AIを金融業務に適用し、若手バンカーの“作業”をAIが代替する未来を描いている。番組では、Bloombergのウォール街担当記者スリダール・ナタラジャン氏が、この機密プロジェクトの実態を明らかにした。
1. 「Project Mercury」とは何か
1-1. 元投資銀行員を採用するAIトレーニング計画
OpenAIは、「Project Mercury」で、元投資銀行員を契約ベースで雇用し、AIモデルに金融モデリングや資料作成の手法を教えているという。目的は、アソシエイトやアナリストが担ってきた定型的業務の自動化だ。
エクセルでの数値入力やパワーポイント資料の整形といった「100時間労働の温床」とも呼ばれる作業群をAIに代行させ、人間はより戦略的な業務へ集中できるようにする狙いがある。
1-2. “Please Fix”文化の終焉へ
番組内では、「‘Please fix’メモのやり取りをAIが減らすかもしれない」と冗談交じりに語られた。現場のバンカーが上司から細かな修正を何度も求められる非効率な文化を、AIが是正する可能性がある。
ナタラジャン氏は「AIが管理職の細かいフィードバックを自動化できれば、若手の疲弊を防ぎ、生産性を根本から変えるだろう」と述べている。
2. AI×金融の新たな潮流
2-1. 分析よりも“作業”を代替
このプロジェクトが象徴するのは、AIが「分析」よりもまず「作業」を奪うという点だ。若手バンカーが1週間に100時間費やす単純反復作業を、AIが瞬時に処理する未来は現実味を帯びてきた。
財務モデルの再計算、比較企業分析、複数シナリオの生成などは、LLM(大規模言語モデル)が得意とする構造化データ処理領域だ。
2-2. “AIバンカー”が生まれる未来
AIが単なるツールではなく、**「AIアソシエイト」**のような存在になる可能性もある。人間のバンカーは、AIが提示したモデルを検証し、クライアントとの関係構築や交渉に注力する――これがOpenAIが描く「AI時代の投資銀行像」だ。
3. グローバル経済の文脈
同日の放送では、米国とオーストラリアのレアアース(希土類)協定、そして電力供給とAI成長の関係についても議論が交わされた。
トータス・キャピタルのロブ・サメル氏は「AIは電力を新たな“石油”に変える」と表現し、AIの普及には膨大な電力と素材サプライチェーンの整備が不可欠だと強調した。
こうしたマクロの潮流の中で、「Project Mercury」はAIがホワイトカラー業務の根幹へと浸透する象徴といえる。
4. 競争が始まる“AI投資銀行”時代
AIによる財務分析は、すでにJPモルガン、ゴールドマン・サックスなどでも試験的導入が進む。OpenAIが主導する形でこの動きが加速すれば、「AI+金融モデリング」分野の覇権争いが本格化する。
Bloombergの分析によれば、AIが完全に「ジュニアの仕事」を奪うのではなく、労働構造を再定義し、より高次な判断力を要する業務へとシフトさせる可能性が高いという。
結論
OpenAIの「Project Mercury」は、単なるAI応用実験ではない。これはウォール街の労働構造を根底から変える試みであり、AIが「知的労働の分業」を再定義する最前線だ。
10年後、投資銀行の現場で人間とAIがチームを組み、24時間体制で財務モデルを構築する光景は、もはやSFではない。
OpenAIが切り開く“AIバンカー時代”の幕は、すでに静かに上がっている。
