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Founders Fundが語る「真実探求・台湾リスク・S&P超え」── 2時間の議論から読み解く投資哲学と地政学

Founders Fundのパートナーであるデリアン・アスパルフ氏(Varda Space Industries共同創業者)とトレイ・スティーブンス氏(Anduril Industries共同創業者)が、Benchmarkのパートナーらとともに語ったポッドキャスト「Ep.53」は、投資哲学・バブルへの警戒感・半導体地政学・AI産業の行方まで2時間にわたって議論した内容だ。本稿ではそのエッセンスを整理し、ビジネスマン・投資家にとって示唆の多いポイントを解説する。


1. 「真実探求」を組織設計で実装する ─ Founders Fundの独自カルチャー


1-1. 多くのファンドが陥る「政治」の罠

投資業界の外にいる人は、VCの意思決定を「緻密なデューデリジェンスと知的に誠実なディベートの末に生まれる合理的な判断」と想像しがちだ。しかし、現実はまったく異なる、とデリアン氏は率直に語る。

「実際はそうじゃない。ほとんどのファームは、組織政治やヒエラルキー、インセンティブのゆがみによって、真実から遠ざかっていく」

Founders Fundが他と違う点は、「真実探求(Truth-Seeking)」を文化的スローガンに留めず、組織の仕組みとして実装している点だという。

1-2. 「1%ルール」── 確信度を可視化するメカニズム

その代表例が、俗に「1%ルール」と呼ばれる仕組みだ。

「Founders Fundで実行した投資の総額のうち最大1%を、その投資に関わったメンバーが個人資金として同額に追加投資できる。これは福利厚生ではなく、投資家の確信度を測るためのバロメーターだ」

強制ではなく流動性の制約も考慮されるが、「普段よく1%投資する人が今回しなかった」という差異が、チーム内で自然に問われるシグナルになる。パートナーが「この案件に自分のお金を張れるか」を意識することで、過剰な楽観や同調圧力を防ぐ機能を持つ。

1-3. ボトムアップの投資文化

もう一つの特徴は、投資判断の方向性だ。多くのファームでは、GPがトップダウンでテーマを決めるが、FFでは、「個人の強い確信を持つメンバーが、地道に同僚を説得しながら案件を積み上げる」構造がデフォルトになっている。

Peter Thiel氏はじめシニアパートナーは、多忙なため、「時間を使わせるに値する本当に強い案件しか通らない」という自然な選別圧力も機能している。トレイ氏の言葉を借りれば、

「Benchmarkは何もしなくても投資ができる環境に設計されているが、FFは投資以外にやるべきことがたくさんある。それ自体が、投資に対する規律を生む」

2. IQとEQ ─ Peter Thielの人材哲学


2-1. 「IQ 130が最適」という逆説

Founders Fundのカルチャーを語るうえで避けられないのがPeter Thiel氏の存在だ。デリアン氏が印象的なエピソードを明かした。

「彼がある時、こう言った。IQはだいたい130くらいが理想的だ。それ以上になると、トレードオフが多すぎる」

意図的にEQが高すぎる人を避けているわけではないが、高IQな人材が集まることで生じる「相手の言葉の感情的影響を気にしない率直さ」が、FFの議論スタイルを作っている。

「みんな自分の意見を言って、そのまま次に進む。会議中は激しく議論しても、終わったら普通に仲がいい。これはEQが高い組織では逆に難しい」

2-2. 「直接的真実より方向性の真実を」

Peter Thiel氏の思考法として、もう一つ印象的な概念が語られた。「Overton Window(世論や議論の許容範囲)」を動かすための意図的な「強調」だ。

「彼が理解しているのは、完全に正確な真実より、方向性が正しい真実の方が重要だということ。ほとんどの人は中庸な言い方をするから、議論の窓がまったく動かない。Peterは、極端なポジションを取ることで、少しだけ窓をずらすことができる。その小さな移動が実は非常に強力だ」

この哲学はPeter氏個人に留まらず、FFの組織全体に「あえて強い主張をする」文化として浸透している。

3. 取締役会への批判 ─ 「情報密度の低さ」と「主役ぶる投資家」


3-1. なぜ取締役を嫌うのか:3つの理由

トレイ氏は、珍しいほど率直に「自分は取締役会が嫌いだ」と明言し、その理由を3点挙げた。

第一に、「Board Member Theatrics(取締役の見せ場探し)」だ。

「投資家が創業者より会社を上手く経営できると思って壇上でアピールするのが耐えられない。それが自分のスーパーボウルだと思っているのが見え見えで、本当に疲弊する」

第二に、「情報密度の低さ」だ。

「3時間の取締役会が終わった後、これはメールで済んだと思うことが何度あったか。数字と課題を教えてくれれば十分だ」

第三に、「自分が本当に価値を提供できているのかという疑問」だ。知っている会社の経営に口を挟む自信はなく、会議に出席すること自体が全員の時間の浪費になっていると感じるという。

3-2. シードやSeries A段階での取締役会は不要

「アーリーステージの企業に取締役会は必要ない。Series Aの会社が何を報告するのか?プロダクトに新機能を追加しました?正直どうでもいい」

そして、こう言い切る。

「シードやSeries A段階で取締役会を作るべきだと考えているファンドや人物は、長期的に見て、投資家として持ちたくないタイプと高い相関がある」

Andurilでは、取締役をトレイ氏・Palmer Luckey氏・Brian Karp氏の3名のみに絞り、会議は90分以内に圧縮している。Varda(デリアン氏)も直近の取締役会を30分で終えたという。

4. 「2021年の再来」── 現在の市場への強い警戒感


4-1. 2人とも「深く不快」

対話の中で最も印象的だったのは、現在の市場環境への率直な懸念だ。

トレイ氏はこう述べた。

「今の市場には非常に不快感がある。バリュエーションが現実から切り離されていて、2021年に似ている」

デリアン氏も同調する。

「私も深く不快だ。当時と同じように、投資家の間に"inevitability"(必然性)の感覚がある。投資先は5年後に絶対大きくなる、という根拠のない確信だ」

4-2. ARR 100万ドルでも「30まで行く」プレゼンの氾濫

資金調達プレセンの場では、ARR(年間経常収益)100万ドルでも「3年で30倍に成長する」というスライドが当然のように並ぶ。

「ARRが4の会社が来るたびに聞くのは、『30まで行きますか?』という確認だけでいい。全員そう言うから。9社連続でそうだった」(デリアン氏)

問題は、数字の野心ではなく、「なぜ行けるのか」の具体性がないことだとトレイ氏は指摘する。

「私が嫌なのは、楽観主義そのものじゃない。過去の事例や歴史的な基準率を意図的に無視していることだ。"時代が変わった・ルールが変わった"という感覚から、"もはやルール自体がない"と錯覚している」

4-3. S&P 500に勝てるか

デリアン氏が提起した核心的な問いが、「そもそも今のバリュエーション環境下で、ベンチャーファンドは、S&P 500に勝てるのか」だ。

「Founders Fundの最新ベンチャーファンドの平均エントリーバリュエーションは約7億ドルだ。5年前の同ファンドは8,000万〜1億ドルが平均だった。この差は何を意味するのか」

Brian Singerman氏のかつての言葉「ベンチャーはマクロ資産クラスではなくマイクロ資産クラスだ」を引きながらも、「正しい企業を選べればマクロは関係ない」という論理には慎重な姿勢を見せた。市場タイミングを読むのはほぼ不可能だが、現在の水準は構造的なリターン圧縮をもたらす可能性がある。

5. 半導体と台湾 ─ 米国が抱える「盲点」


5-1. 設計ではなく「製造」が本当の問題

米国の半導体産業に関して、トレイ氏はチップ設計への過剰集中を批判した。

「多くの人が、AI向けチップや推論チップを設計しているが、それらは結局すべて同じ場所で製造されている。設計は相対的に"簡単な方"の問題だ。本当の問題は製造にある」

かつては、シリコンバレー発祥の地として半導体製造の中心だった米国は、今やその能力をほぼ失っている。CHIPS法による政府投資も、IntelやTSMC・Samsung誘致も、実質的な進展は乏しいと言わざるを得ない。

「2030年に米国内でリーディングエッジの半導体製造が行われている可能性は、今の流れを見る限りほぼゼロだ。誰も本当に解決しようとしていない」

5-2. 台湾は10年以内に「現状維持できない確率が90%超」

デリアン氏の言葉の中で最も重みがあったのはこの発言だ。

「台湾が今と同じ状態でいられる可能性は、10年以内に90%以上の確率でない。香港型、何らかの形の取引、あるいは全面侵攻──どれかが起きる可能性が圧倒的に高い」

習近平は、台湾統一について「権威主義体制の指導者として公言した以上、後退できない」とデリアン氏は分析する。民主主義国家の政治家が「選挙用の言葉」として流すのとは質が違う。

「彼が言ったことは実行される。それを西側がなぜか真剣に受け止めないのが問題だ」

米国の対抗策として必要なのは、半導体製造の国内回帰と抑止力としての防衛技術投資──これがAndurilとFFが関与する根拠でもある。

5-3. 「中国市場で勝てば中国を弱体化できる」論への反論

ジェンスン・フアン氏などが主張する「米国企業が中国市場も取りに行くべき」という論について、トレイ氏はシニカルに返した。

「Teslaもそれをやったが、BYDが全部コピーして低価格で市場を奪った。独占欲旺盛なアメリカ人の地政学的現実を無視した楽観論だ」

6. Founders Fundの成長戦略 ─ 既存Portfolio企業への「80%集中投資」


6-1. 新規投資はわずか20%

ポッドキャストの終盤では、Founders Fundの現在のファンド戦略が語られた。同ファンドの成長ファンドは、投資の約80%を既存ポートフォリオ企業への追加投資に充てている。

「OpenAI、Anthropic、SpaceX、Andoril、Ramp、Stripe──これらの企業は30%を超える複利成長を何年も続けてきた。30億ドルの時点で追加投資しても、その後10倍になっている。そういう意味で新規案件と同等以上のIRRが取れる」

6-2. このモデルが成立する前提条件

この戦略が成り立つのは、他のVCには真似できない「最初から本当に良い会社を持っていること」が大前提だとデリアン氏は強調した。

「FF以外のほとんどのファンドが、このモデルを取れないのは持っている会社が違うからだ。早期から最高の企業に入り込み、その後も追い続けられる。これは積み上げた信頼と実績の結果でしかない」

なお、2021年ベンチャーファンドは、当初「大きすぎた」と判断し、ファンドを半分に分割して2本立てで運用中という珍しい開示もあった。

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