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Replit CEO が語る「未来の会社に残る仕事はたった2つ」——ビルダーとセールスの時代をどう生き抜くか

未来の会社に残る仕事は、ビルダーとセールスの2つだけだ」——。

AIネイティブ開発プラットフォーム「Replit」のCEO兼共同創業者Amjad Masad氏は、インタビューの中でそう語った。同社は2026年3月、Georgian Partners主導でシリーズDラウンド4億ドル(約600億円)を調達し、評価額は90億ドルに達した。これはわずか6か月前の30億ドルから3倍に跳ね上がった数字である。

2024年末時点で約1,000万ドルだった年間経常収益(ARR)は、2025年通年で2.4億ドルへと急伸した。Masad氏は、2026年中にARR 10億ドルを目標に掲げている。

この急成長の背景にあるのは、「誰もがソフトウェアを作れる時代」という構造的な転換点だ。本稿では、Masad氏のインタビュー内容をもとに、Replitのビジネスモデル、AI時代に求められるスキル、そして「未来の企業像」について多角的に解説する。


1. Replitとは何か——「読み書きできれば、アプリが作れる」Unite.AI


1-1. 10年かけて完成した"ノーコード+AI"の融合

Replitは、2016年にMasad氏らが創業した、ブラウザベースのソフトウェア開発プラットフォームだ。「誰もがコードを学ばなくてもアプリを作れるべきだ」という信念のもと、ソフトウェアが人に歩み寄り、想像力を現実に変えることを目指してきた。

Masad氏によれば、同社はまず開発環境のセットアップという障壁を解消し、次にデプロイ環境を整備した。残るハードルは「コーディングそのもの」だった。2024年9月にReplitはいわゆる「バイブコーディング(Vibe Coding)」製品の先駆けとなり、コードを完全に抽象化。ユーザーは自然言語でAIエージェントとやり取りするだけで、本番環境に耐えうるソフトウェアを構築できるようになった。

1-2. 開発者ではなく「クリエイター」のためのツール

興味深いのは、Replitが、エンジニア向けにマーケティングされていない開発ツールである点だ。Masad氏は次のように述べている。

「2023年のある時点で、私たちは開発者を追わないという明確な目標を掲げた。今いるユーザーは依然として開発者だが、伝統的な開発者ではない。AIネイティブな新世代の開発者だ」

同社は非技術系のワーカー——営業、マーケター、小規模事業主——向けのコーディングエージェントとして差別化を図っている。実際に最も価値を感じているのは、プロダクトマネージャー、デザイナー、起業家といった「テック隣接」の人材だという。

2. 人々は何を作っているのか——3つのユースケース


2-1. パーソナルソフトウェア

Masad氏は、インタビューの中で、家族向けの個人ソフトウェアの事例を複数紹介した。韓国のある母親は、子どもの希少疾患を管理するヘルスケアアプリを自ら構築。また、子どもの家事ランキングをiPadに表示する「Chore Hero」を作った家庭もあるという。

2-2. 起業家によるSaaS・コンシューマープロダクト

ある理学療法士は、筋膜リリースに特化した高度なトラッキングアプリの開発を外注し、数十万ドルを費やしたが満足な結果を得られなかった。最終的に自らReplitで構築したところ、Masad氏が「見た中で最高のヘルステックアプリの一つ」と評するものが完成した。

「問題に最も近い人が、自分に必要なプロダクトを作れる。それが重要だ」

アイスランドからは、Replitネイティブのエージェンシー(制作会社)が登場している。従来のエージェンシーと比べて60〜70%のコスト削減を実現しながら、より効果的にクライアントのアプリ開発を請け負っているという。

2-3. エンタープライズ——プロダクト開発と社内ツール

Replitのプラットフォームは現在5,000万人以上のユーザーに利用されており、エンタープライズ顧客にはZillow、Labcorp、Atlassian、PayPal、Adobeなどが名を連ねる。Fortune 500企業の85%以上からユーザーがReplitを使って開発を行っている。

エンタープライズの利用は主に2パターンに分かれる。
① プロダクト開発の加速——ウェアラブルデバイス企業のWhoopは、Replitの導入により試行できるアイデアの数が10倍に増えたと報告している。従来は100のアイデアがあっても5つしか試せなかったのが、50個まで試せるようになったという。

UKGでは、ReplitをDesign Language Systemと組み合わせたことで、プロダクト・UXチームが数週間ではなく数日で機能的なプロトタイプを作成可能になり、プロダクト主導の顧客フィードバック収集能力が400%向上した。

② 社内ツール・業務自動化——RevOps(レベニューオペレーション)チームがCRMやGongなど複数のデータソースを統合するツールを自ら構築し、SaaS契約に年間で数十万〜数百万ドルの削減を実現しているケースもあるという。

3. Agent 4——並列エージェントが変えるソフトウェア開発


3-1. 6か月ごとのリリースサイクル

Masad氏は、AIの能力が年に2回の大きなステップチェンジを経るという観察に基づき、Replitのエージェントも6か月ごとにメジャーバージョンを出すロードマップを採っている。

Agent 4は、Agent 3の10倍高速で、アイデアから本番環境までを一気通貫で構築・出荷できる。

3-2. Agent 4の4つの柱

Agent 4は、クリエイティブフローを維持しつつ本番レベルのアプリを10倍速で出荷するために、4つの柱で設計されている。

①「Design Freely」——無限キャンバス上でデザインバリアントを生成し、ビジュアルで調整した結果をアプリに直接反映。②「Move Faster」——認証・DB・バックエンド・フロントエンドを並列エージェントで同時に処理。③「Build Together」——チームはアプリの企画に集中し、エージェントが調整・実行を担う。リクエストは任意の順序で投入でき、Agent 4が最適な順序で実行する。

さらに、1つのプロジェクト内でモバイルアプリ、Webアプリ、ランディングページ、スライドデッキ、動画などを共有コンテキストで一元管理できる。Masad氏はこう語る。「すばらしいWebアプリを作ったら、『モバイルアプリも作って』と言うだけでいい。デプロイすればWebにもTestFlightにもAndroidにも配信される。会社全体をReplit上で運営できるようになる」。

3-3. チームワークと非同期ワークフロー

並列エージェントの実現はチームコラボレーションの課題も同時に解決した。旧来のフォーク&マージモデルは廃止され、チームメンバーは1つの共有プロジェクト上でエージェント支援のマージを活用しながら同時作業できるようになった。

4. PLGとエバンジェリズム——Replitの成長戦略


4-1. 週末のサイドプロジェクトが社内導入につながる

Replitの成長モデルは、YC出身のSaaSスタートアップが体現してきたPLG(Product-Led Growth)の進化系だ。かつてStripeやPagerDutyがエンジニアを起点に企業内に入り込んだのと同じ構造が、今やプロダクトマネージャー、デザイナー、営業にまで広がっている。

Masad氏は「週末に個人アプリを作って遊んだ人が、月曜日に職場で業務ツールをReplitで構築し始める」とボトムアップの浸透プロセスを説明した。その後、営業チームは「社内チャンピオン」を見つけてハッカソンを開催し、さらに多くの支持者を生み出すという、エバンジェリズム型セールスを展開している。

4-2. 非開発者向け教育コンテンツの重要性

従来の開発者ツールとの最大の違いは「教育」の比重だ。Masad氏はStripeがドキュメントの質で支持を得たことに触れつつ、「非開発者向けのdevツールを作るなら、コンテンツで常識を超えなければならない」と強調。動画コンテンツの大量制作、エージェント自体に非開発者を導くブレインストーミング機能の搭載、キャンバスUIへの「バリエーション生成」ボタンの追加など、可能性を「見せる」ための仕掛けを多層的に構築している。

5. 未来の企業に残る仕事は「ビルダー」と「セールス」だけ


5-1. Masad氏が描く「未来の企業像」

インタビューの核心は、Masad氏が提唱する未来の企業モデルだ。

「未来の企業はビルダーとセールスパーソンで構成される。セールスは『企業の変革を支援する』エバンジェリスト・教育者の役割に進化するが、人間を信頼したい、人間から学びたいという需要は消えない。ビルダーはますます抽象度の高い仕事を担うようになる」

Masad氏の理想像では、社内のほぼ全員がファウンダーのように振る舞う。朝起きて「この会社をもっと成功させるには?」と考え、社内を回って課題を見つけ、エージェントを編成して解決する——そのような自律的な組織だ。

5-2. 「バイブコーディング・イン・レジデンス」チーム

Replitは既に社内でこのモデルを実践している。同社の「バイブコーディング・イン・レジデンス」チームは、明確なプロダクト目標を持たず、「会社をもっと良くする」という曖昧なミッションで社内を横断的に活動する。

  • サポートチームでは、Zendeskのチケット優先順位を可視化するツールを構築し、CSATスコアを向上させた

  • HRチームでは、福利厚生や社内情報を集約したオンボーディングプラットフォームを構築した

このように、特定の部門に縛られないゼネラリスト型の「社内起業家」が、AIエージェントを駆使して組織全体を改善していくのがMasad氏の描く未来だ。

6. AI時代に求められるスキルとは


6-1. ポストプロンプティングの世界

Masad氏は興味深い指摘をしている。「私たちはポストプロンプティングの世界に向かっている」と。精緻なプロンプトを書くスキルは当面残るが、より高レベルな指示——「マーケティングファネルを最適化せよ」「毎日SaaS企業を立ち上げて収益を試せ」——をエージェントに渡せる時代が近づいているという。

6-2. 「アイデア生成力」と「諦めない力」

Masad氏が挙げるAI時代に重要なスキルは以下の通りだ。

  1. 何が可能かを理解する力——ツールに日常的に触れ、最新の動向をキャッチアップする「遊び心のあるマインドセット」

  2. アイデア生成力——Peter Levelsのようなインディー起業家は、短期間で数百万ドルを生むプロダクトを次々に作り出す。プロダクトのサイクルが速い時代にこそ、創造的かつ生成的であり続けることが重要

  3. 諦めない力——「今日Replitで作れなかったものは、2週間後にもう一度試せ。作れるようになっているかもしれない」

6-3. Masad氏が待ち望む技術:コンピューターユースモデル

技術的な観点では、Masad氏は、コンピューターユースモデル(画面操作を自律的に行うAI)の進化を最も期待していると語った。言語モデルの進歩がコーディングエージェントの「ハック的回避策」を可能にしたものの、レガシーソフトウェアの操作やUIテストには依然としてコンピューターユースモデルが必要だという。加えて、継続的学習(Continual Learning)——エージェントが組織固有のスキルを実務を通じて学び続ける機能——も未解決の課題として挙げている。

7. YCで学んだ「3か月の集中」と複利的成長


7-1. YCがReplitに与えた影響

Masad氏はYC(Y Combinator)の経験がReplitの企業文化を決定づけたと述べた。3〜4回の不合格を経て、Paul GrahamとSam AltmanがHacker Newsで同社を見つけ招待された。YC期間中、ホワイトボードにデモデイまでのカウントダウンとシンプルなタスクリストを掲げ、3か月で当時のReplitをコマンドラインツールからWeb開発・ホスティング・インテリセンスを備えたIDEへと進化させた。

YC卒業後、Masad氏はA16ZのMarc Andreessenへの紹介を直接依頼し、自宅での朝食ピッチを経てシードラウンドのリード投資家に迎え入れた。

7-2. 「7%ウィークリーグロース」の活用

Masad氏は、YCが提唱する週次7%の複利成長のフレームワークを、新しいプロダクトラインの立ち上げ時に繰り返し適用していると語った。現在では、エージェントの新バージョンリリースは約4週間の集中スプリントで行われ、全社員がオフィスに集結し、朝食・昼食・夕食・24時間コーヒーが提供される環境で開発に没頭するという。

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