AIスーパサイクルから暗号・債務・IPOまで:Coatueラフォン兄弟が描くテクノロジー市場の全貌
本記事では、Coatue(コートゥー)のフィリップ&トマス・ラフォン兄弟が発表した最新レポート「AI、パブリック&ベンチャー市場、マクロ経済、米国債務、暗号資産、IPOなど」の内容をもとに、投資家や企業経営者が押さえるべきポイントを解説します。専門的なテーマを取り扱いながらも、具体例や引用を交えてわかりやすく整理しました。
1. AIスーパサイクルの到来
1-1. AIの歴史的文脈と新潮流
70年以上にわたり、メインフレーム→PC→インターネット→SaaSといった技術革新の波が到来してきました。ラフォン兄弟は、「AIもまた、これまでのすべての技術の上に構築される”スーパサイクル”」と位置づけます。まさに「AIは、これまでのネットワーク、PC、ソフトウェアの上に積み重なる」という指摘が印象的です。
1-2. 市場時価総額への波及
レポート中のスライド6では、「AI関連株が米国市場全体時価総額の75%に達する可能性」が示され、工業や輸送セクターと比較した際のポテンシャルの大きさが強調されました。登壇中にフィリップ氏は、「人々は常に『ピークは過ぎた』と悲観するが、過去を振り返ると次の波は必ず到来している」と述べ、市場の過小評価に警鐘を鳴らしています。
2. ステーブルコインと暗号資産の進化
2-1. 立法動向と規制の枠組み
レポート当日に可決されたステーブルコイン法案は、暗号資産の規制枠組みを大きく前進させる一手です。トマス氏は、「規制が『敵対的』から『協調的』へと大きくシフトした」と指摘し、機関投資家参入のハードルが下がった点を評価しました。
2-2. ビットコインの資産クラスとしての位置づけ
フィリップ氏は、ビットコインを「世界の時価総額約500兆ドルのうち、現状2兆ドル程度の位置にあるが、10年で4~5兆ドルに届く可能性がある」と試算。さらに、「最大手企業Microsoftが今後10年で時価3.5兆→7兆ドルに成長すると仮定した場合、ビットコインも同水準まで成長し得る」と例示し、暗号資産の成長ポテンシャルを論じています。
3. コンシューマーAIと検索エンジンへの影響
3-1. ChatGPTのユーザー行動変化
Coatueは、クレジットカード領収書データとメール領収書データを突合し、ChatGPT有料登録者のGoogle検索ページビューが「登録前後で年率8~11%減少」したことを示しました。トマス氏は、「登録者は月20ドルの価値を見いだし、Google利用を徐々にAIにシフトしている」と解説します。
3-2. Googleとの利用動向比較
この減少は2年間で緩やかに生じていますが、ラフォン兄弟は「大きな変化は一歩ずつ始まり、やがて爆発的に加速する」と断言。YouTubeやGmailといったGoogleの他部門がカバーできる可能性はあるものの、検索ビジネスの構造的変化は避けられないとの見方を示しました。
4. クラウド市場とGPU配分の競争力
4-1. クラウド収益市場シェア
AWS(Amazon)がクラウド収益シェア約44%、Microsoft Azureが約30%、Google Cloudが約19%を占めています。この市場構造は、従来のTMT(テクノロジー・メディア・通信)領域の力関係を反映しています。
4-2. NVIDIA GPU配分比率
一方、NVIDIA GPUの配分を見ると、Oracleが5%から19%に急増し、CoreWeaveが11%という“新興ハイパースケーラー”の台頭が鮮明に。Amazonは、クラウド収益シェア44%に対し、GPU配分は20%と見劣りし、「AWSがAI対応で遅れを取っている可能性」「ハードウェア戦略の多様化」を示唆します。
5. AIがもたらすマクロ経済への影響と米国債務
5-1. 生産性サイクルの再評価
インターネット時代の’90年代同様、AIは経済生産性を押し上げると期待されます。最新スライド45では、AIによる効率化で経済成長率が5~6%に達するシナリオを提示。
5-2. 債務対GDP比率と金利の見通し
現状、米国の債務/GDP比は、100%超で推移。ラフォン兄弟は「生産性年率2.5~3.5%が続けば、債務/GDP比を80~100%に引き下げ得る」と分析します。専門家の悲観予測を受けつつも、過去の誤予測(’93年の債務比率低下)を引き合いに「楽観的可能性」も示唆しました。
6. プライベートマーケットの今:IPOとM&Aの動向
6-1. IPO市場の回復とパフォーマンス
2021年のIPOコホートは、1年後に-40%、5年後に-50%下落という厳しい成績でしたが、2024年以降は、CoreWeaveやCircle Internet Groupなど「健全な事前準備と説明」による上場成功例が増加。決算やガバナンスの透明性確保が評価されつつあります。
6-2. M&Aの新たなストラクチャー事例
MetaのScale AI買収では、49%取得で150億ドル支払いの手法を導入。「完全子会社化による規制回避」、「人材確保のスピード重視」といった、新たなM&Aモデルが浮き彫りになりました。
7. マージン拡大のゴールデンエイジ
7-1. テック大手の人員最適化
「第0章:ソフトウェア拡大期」→「GitHub Copilot導入でのスリム化期」→「AI時代の最適化期」という三相を踏まえ、MicrosoftやAppleは、ヘッドカウントを20~35%削減しながら売上高を2倍以上に拡大。
7-2. 収益/従業員指標の変化
Appleでは、2021年Q2以降、従業員1人当たり売上高が2倍に跳ね上がり、効率化と成長を両立。ジェブンのパラドックス(コスト低下で雇用創出)も踏まえ、「効率化は自動的に失業を招かず、新たな企業創出を加速させる可能性」が議論されました。
8. 起業家・CEOへの示唆
8-1. 成長/収益性マトリクスの活用
ラフォン兄弟は、成長率25%、キャッシュフロー正味の二軸で企業を四象限に分類し、
高成長・黒字:上場準備に着手
高成長・赤字:要所で資本強化
低成長・黒字:「AI導入による事業改革」を検討
低成長・赤字:「再発明(新規事業やオープンソース化)」がカギ
8-2. 各クアドラントでの戦略
特に「成長<25%・赤字」の企業は既存事業の維持に満足せず、新たな収益ドライバーを自ら設計すべきと強調。ラフォン兄弟が「再発明(reinvent)」と呼ぶこのアプローチは、多くの未上場企業にとって今後の生き残り戦略となるでしょう。
本記事で紹介した最新データと示唆をもとに、投資判断や経営戦略の一助としていただければ幸いです。今後もAIとテクノロジーが切り拓く新たな市場動向に注目していきましょう。

