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ARR5億ドル・週100万プロジェクト——Lovableが問いかける「SaaS不要論」の現実

2026年6月、欧州発のバイブコーディングスタートアップLovableが、年換算収益(ARR)5億ドル超を達成したと発表した。2023年末に設立され、まだ3周年を迎えていない同社が、週100万件以上の新規プロジェクトを生み出している。

この数字は単なるスタートアップの成長ストーリーにとどまらない。「コードを書けない人でもAIを使えばソフトウェアを作れる」というバイブコーディングの広がりが、既存SaaS市場にどんな影響をもたらすか——投資家・ビジネスパーソンにとって、現実的に考える必要が出てきた段階だ。


1. Lovableの成長軌跡——数字で見る急拡大


1-1. ARRの推移

Lovableは、2026年2月時点でARR4億ドルを突破したと発表しており、今回の5億ドル超という数字はそこから比較的短期間での積み上げとなる。同社は2024年8月の時点で「12カ月以内にARR10億ドルに到達できる」と述べていた。夏までの倍増には及ばないペースとはいえ、創業から3年未満のスタートアップとして、依然として注目に値する成長を続けている。 TechCrunch

1-2. プロジェクト数の規模

Lovableによると、同プラットフォームは、これまで5,000万件を超えるプロジェクトの構築に使われており、利用ペースは週100万件の新規プロジェクトにまで加速している。

この数字は、単純計算で年間5,000万件以上の新規プロジェクトが生まれていることを意味する。ソフトウェア開発の裾野が急速に広がっていることの一つの指標といえる。

2. 誰が何を作っているのか——ユーザー構造の変化


2-1. 非エンジニアが主力ユーザー

Lovableの公開データによると、ユーザーは、主に非技術系の人々であり、起業家、デザイナー、営業担当者などがウェブサイトやEコマースのストアフロント、あるいは社内ツールを構築するために使っているという。

「AIを使えば誰でもソフトウェアを作れる」というコンセプトが、実際にビジネス現場で機能し始めていることを示す一例だ。

2-2. 社内SaaSの代替が進む

Lovableのユーザーが構築しているものの中には、CRM(顧客管理システム)、在庫管理システム、HRプラットフォームといった業務系ツールが含まれる。

これは、従来であれば既存SaaSベンダーと年間契約を結んで導入していたような領域だ。「高価な年間契約を結ぶより、自分で作ればいい」という判断が、実際にビジネス現場で起き始めている可能性を示している。

3. 「SaaSアポカリプス」は来るのか——慎重に見るべき理由


3-1. バイブコーディングの本質的な課題

ソフトウェアは、ほぼ生き物のように動く。品質の高いコードであっても、その下には常に更新され続けるライブラリ、サードパーティサービス、インフラが積み重なっており、それがエンドユーザーのソフトウェアを絶えず壊し続ける。多くの企業が「作る」より「買う」を選ぶのは、維持管理の責任を他者に委ねたいからだ。

バイブコーディングで「作る」ことは以前より格段に容易になった。しかし、「維持し続ける」ことができるかどうかは、まだ十分に検証されていない。

3-2. 放棄プロジェクトの問題

Lovableや他のバイブコーディングプラットフォームが成熟するにつれ、放棄されたプロジェクトの割合を透明性をもって報告するかどうかが、真の持続可能性を測る指標になる。もし放棄率が低ければ、それが「SaaSpocalypse(SaaSの終わり)」が本格的に到来したことの証拠になる。

現時点では、Lovableが設立から3年未満であるため、この問いに答えるデータがまだ存在しない。急成長の数字だけでなく、継続利用率や放棄率といった「ネガティブな側面」が明らかになるのはこれからだ。

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