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15歳の渡豪からグローバルバンクへ──Airwallex創業者ジャック・ザンの軌跡

Airwallex共同創業者兼CEOのジャック・ザンは、わずか15歳で外国に渡り、レモン工場やガソリンスタンドでの過酷なアルバイトを経て、さまざまなサイドビジネスを立ち上げながら資産を築きました。2015年末にAirwallexを創業して以降、3度のピボットや資金難を乗り越え、Sheinなどの大手顧客を獲得。現在では年間取扱額が100億ドルを超えるまでに成長させています。本稿では、ザンの波乱に満ちたキャリアとAirwallexの成長過程を、具体的なエピソードや引用を交えて解説します。


1. 苦境からのスタート:レモン工場とファストフード店


1-1. 留学生活と家庭の経済的困難

中国で生まれ育ったザンは15歳でオーストラリアに移住。16歳のとき、家族が経済的に行き詰まり、学費24,000豪ドル(約200万円)を自分で稼ぐ必要に迫られました。大学受験に戻ることも難しく、「生き残るために働くしかなかった」と振り返ります。

1-2. 列車とバスで山頂へ──レモン工場での過酷労働

夏休みには毎日数時間かけて山奥のレモン工場へ。

「40度の炎天下で1日12時間、レモン箱を何千個も運び続けた」
時給14豪ドル(約1,200円)ながら、栄養失調に近い状態で働き、「お昼も食べずに気付けば夕方」という過酷さでした。

2. 多様なアルバイト経験が培った精神力


2-1. レストラン、バー、ガソリンスタンドでの16時間労働

大学進学後も生活は厳しく、皿洗いやバーテンダーをしながら、深夜から早朝までガソリンスタンドで働く日々。

「16時間労働が当たり前だった。大学の勉強は“サイドギグ”だった」
この経験が、後のハードシップに耐えるタフネスを鍛えました。

2-2. アルバイトの繰り返しから得た「金融的不安定さ」の克服

「収入が月単位で変動する中で、どうやって次の学費を払うかを必死に考えた」とザンは語ります。この“金銭的不安”への対処能力が、後に多額の資金調達や経営判断に活かされました。

3. 最初の起業体験:高校生時代のマガジン事業


13〜14歳のとき、同級生と協力して立ち上げたフリーペーパー「Urban Exploration Magazine」が初の成功体験。広告掲載店舗は、8,000社超にのぼり、収益は学内の資金として還元しました。

「面白い記事を書くことが鍵だった。スクール外にも無料配布したら、瞬く間に“バイラル”になった」

4. 複数のサイドビジネスと資産形成


4-1. アルゴリズムトレーダーから輸出入ビジネスへ

大学卒業後は、投資銀行でアルゴリズムトレーダーとして働きつつ、オリーブオイルやワインの輸出入事業を開始。サプライヤーとバイヤーを“つなぐ”だけのB2Bモデルで、年数百万ドルの収益を生み出しました。

4-2. 不動産開発と建築事業で数百万ドルを稼ぐ

建築プロジェクト管理や不動産開発にも参入し、40〜50戸規模のマンション開発を外部チームに任せて億単位の売上を達成。

「収益の柱を複数持つことで、いつでも創業に飛び込める安定を築いた」

5. Airwallexの誕生と3度のピボット


5-1. 同期との出会いと最初の資金調達

メルボルン大でプログラミング仲間3人と出会い、2015年12月にAirwallexを創業。サイドビジネスで得た財務基盤があったため、すぐに第一号のシード資金1百万ドルを調達しました。

5-2. Stripe買収提案の拒否と創業メンバーの意志決定

2017年初頭、Stripeから12億ドルの買収オファーが届くも、ジャックらは「ビジョンを追求するため」に全員一致で辞退。共同経営陣や社員投票を通じて決断し、結果的に組織の一体感を高めました。

6. 資金難とVCの「Near-death」エピソード


6-1. 初期投資家Lucyの1百万ドルが10億ドルに化ける

設立間もなく知り合った投資家Lucyが、初対面1時間で1百万ドルを投資。エンジェル投資としては異例の速さで、結果的に同社は数年後に数十億ドルの評価に成長しました。

6-2. タームシートが撤回されたMatrixとの交渉

Matrix Partnersから1,000万ドル調達のタームシートが発行されるも、直前で撤回される苦い経験も。結果的に香港のVCと他VCが支援にまわり、創業初期を死守しました。

7. プロダクト市場適合とSheinの導入


7-1. API駆動型モデルへの転換

最初のP2P外貨交換アルゴリズムが機能せず、法定通貨インターバンク接続モデルへピボット。さらに請求書決済プラットフォームも試作するなど、計3回の事業変革を経て、エンタープライズ向けAPIモデルに到達しました。

7-2. Sheinとの契約締結と48時間の危機対応

2018年1月、急成長中のSheinから2,000万ドルの送金依頼。しかし、既存パートナーが決済を凍結し、48時間で新規パートナーと再契約・システム統合を完了。これにより重要顧客を逃さず、売上は一気に10億ドル取扱いを突破しました。

8. グローバル展開と組織文化の形成


8-1. 国際展開の失敗と再構築

英国や米国などへの早期進出は、製品市場適合前の「空振り」だったものの、インフラ維持のため残留。最終的にローカルニーズを捉えた再設計で成功に繋げました。

8-2. 採用ミスがもたらしたカルチャーリスクからの学び

「大手銀行出身者」など経験重視の採用を優先した結果、スタートアップのスピード感に合わない人材が混在。後に大規模リストラを行い、好奇心・決断力・レジリエンス重視の採用基準へ転換しました。

9. 今後の展望:グローバル銀行の構築へ

2022年からは企業向けコーポレートカード発行や加盟店決済も展開し、名実ともに「グローバル銀行」への進化を加速中。ザンは「10年後にHSBCやシティを超える銀行を目指す」と語り、その長期ビジョンを社員とともに追い続けています。

多くの起業家が語る「成功体験」の裏には、必ず失敗と苦難があります。ジャック・ザンの物語は、苦境をバネに多角的な挑戦を続けた結果、わずか数年で世界的フィンテック企業を築き上げた稀有なケースです。彼が示したレジリエンスとビジョンは、今後の日本のスタートアップ界にも大きな示唆を与えることでしょう。


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