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銀行は終わらない。「24/7金融」へのアップグレードが始まった

「ステーブルコインは銀行を終わらせる」のか。それとも、銀行を“24/7の市場”に適応させるアップグレード装置なのか。CircleのExecutive Insights(登壇:Dante Desparte、Standard Chartered、Deutsche Bank、BNY)は、この問いに対して「銀行の役割は“消える”より“再定義される”」という結論を、実務目線で浮かび上がらせた。


1. 「インターネット金融システム」とは何か


議論の核心は、ブロックチェーンや暗号資産という“流行語”よりも、決済・清算・担保・証券決済を「常時稼働」に変える新しいレールにある。

BNY側の発言は象徴的だ。価値の表現・移転・決済が変わることで、従来の金融が苦手としてきた領域が前提から組み替わる——その三点として、「24/7の決済」「資産と現金の同時移転(アトミック決済)」「金融商品のプログラマビリティ」が挙げられた。
ここで重要なのは、“新しい資産クラス”ではなく、「新しい決済インフラ」として捉えている点である。

2. ステーブルコインが「銀行預金」では埋めにくい穴


Standard Charteredは、ステーブルコインの機能的メリットを3つに整理した。発言を要約すると——

  • 週末決済(Weekend settlement):「企業財務が“土日に払えない”」という摩擦を削る

  • 時差をまたぐ即時決済(West→Eastの即時性):同日決済・即時決済の現実解

  • 国内での外貨クリアリング:たとえばシンガポール国内のUSD決済でも、従来は複雑な清算経路が必要になりがちだが、ステーブルコインなら単純化できる

この文脈でのステーブルコインは、「暗号資産っぽい送金」ではない。むしろ企業の資金繰り(トレジャリー)と市場インフラの“締切・バッチ処理”が生む無駄を、直接攻める道具として語られている。

3. トークン化の本丸は「ライフサイクルの自動化」


Standard Charteredは、現状のRWAトークン化を「見出し先行で、地味な“難所”が残っている」と評した。要点はこうだ。

「“本当に面倒で地味な部分”——スマートコントラクトで取引ライフサイクル全体を回すところが、まだ十分に進んでいない」

つまり、証券や担保が“チェーンに乗った”だけでは浅い。契約・条件分岐・担保差し入れ・清算までを直列で自動化し、決済レイヤーに直結させて初めて、ストレートスループロセッシングが成立する。ここにSwiftや既存金融インフラの再設計が絡んでくる。

4. 規制は「追い風」だが万能ではない


今回の対談で、規制は“前提条件の整備”として繰り返し登場する。米国ではGENIUS Actが成立し(2025年7月18日付の公法として掲載)、市場の意識を変えたと語られた。

一方、欧州は、MiCAの枠組みを先行的に整備し、EMT(電子マネートークン)等を含む統一ルールを提示している。

ただし、Standard Charteredは、資本規制(capital controls)やAMLは「技術では迂回できない」と釘を刺した。ここが重要だ。ステーブルコインは、“スピード”を伸ばすが、国家が決める「何を許すか」の問題は別物である。

5. Build / Buy / Partner──勝者は「勝者がもっと取る」市場


パネルは、「提携(partner)優位」をにじませつつ、地域によっては発行(build)も視野に入るとした。Standard Charteredが香港での発行ライセンスに触れたのは、その典型だ。

さらに印象的だったのは、次の認識である。
ディスラプティブ技術では、市場構造が変わり「勝者がより多くを取る」。ゆえに、早期に複数の賭けを置くのは合理的で、銀行の投資判断そのものがアップデートを迫られる。

6. 中小銀行・AI(エージェンティック・コマース)・通貨覇権


「25,000の中小銀行はどう参加するのか?」という問いに対しては、“作る”より“買う/つなぐ”の比率が高くなる、そして中小の方がコア統合がシンプルで有利になり得る、という整理が出た。

またAIの文脈では、Deutsche Bankが「エージェンティック・コマースにはオンチェーンで広く受け入れられるマネーが必要で、その最有力がステーブルコイン」と述べた。これは単なる未来話ではなく、「AIの自動取引×決済の最終性」を同時に満たすインフラ論だ。

通貨については、ドルが中心であり続ける一方、欧州ではユーロ建ての取り組みも進む。例えば、DWSが関わるAllUnityのように、規制下でのユーロ系ステーブルコイン計画が報じられている。 さらに、Deutsche Bank側は、BISのProject Agoraにも言及していた。

結論


この対談が提示した最大の逆説はこうだ。
「クリプトが銀行を不要にする」のではなく、銀行が“24/7の金融”に追いつくために、ステーブルコインが必要になる。

BNYの締めは明快だった。
「信頼・安全・規模は、金融が連続稼働に近づくほど重要になる」
“実験”を“インフラ”に変える局面で、銀行は主役を降りるのではなく、役割を変えて再登場する——それが、このインターネット金融システムの現実的なロードマップである。

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