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巻き込み力は才能か、技術か──0⇒1プロジェクト立ち上げ方。【StartupMarket】

Startup Market 2026のセッション「巻き込み力は才能か、技術か──0⇒1プロジェクト立ち上げ方」では、大企業・メディア・スタートアップ投資という異なるフィールドで0→1のプロジェクトを立ち上げてきた実践者たちが、「人を巻き込む」リアルを語り合いました。「半歩先を宣言する」「去るものは追わず、笑顔でハイタッチで別れる」「楽しそうにしていることが一番の引力になる」など、今日から使える具体的な行動論が続出。転職・新規事業・副業など、新しいプロジェクトを動かそうとしているすべての人にとって、腹に落ちる言葉が詰まったセッションです。

【スピーカー】
株式会社SMBC Edge
企画部長 石澤 卓也 氏

NHK|日本放送協会
チーフ・プロデューサー 倉崎 憲 氏

スタートアップファクトリー
代表 鈴木 おさむ 氏

【モデレーター】
The Breakthrough Company GO
COO/Business Producer 大長 敬典 氏


(若手時代に)当時、自身の実力以上の人を巻き込んだご経験とその方法を教えてください。

倉崎)僕は学生時代、ラオスに小学校を建設する関西の学生団体を立ち上げて、自分たちでイベントをして資金を集めていたんですが、その経験と今のドラマ作りにも通じていることは現地の人と一緒に作っていくことだと思っています。例えば離島でロケをする時も、まず現地の人──村長さんなどとお酒を飲みながら腹を割って、いいことも悪いことも全部シェアするんです。「ここでやらせてほしい」というより「一緒にやっていきましょう」というスタンスが大事だと思います。

大長)人と対すことが少なくなってきたこの時代だからこそ、リアルで会うことに価値がある時代なのかもしれないですね。

石澤)僕は2014年、28歳のときに社内でアクセラレーター(起業家育成プログラム)を立ち上げました。当時は銀行というのは赤字の会社と極力距離を置く生き物なんですが、「将来にチャレンジする人を支える仕組みを作らないとダメだ」と思って。役員相手にも、あまり銀行員っぽくなく、「これは必要だと思うんですけど」というスタンスで話したんです。こいつはおもしれえな、と思ってもらえたのかもしれない。自分の素を出して理解してもらうことに、意識的というか、素がそうだったのでしょうがないんですが、それがポイントだったかなと思います。

大長)鈴木さん、当時20代のころはどうでしたか?

鈴木)僕が無意識にやっていたのは「半歩先を宣言する」ことです。原チャリしか乗っていないのに「車乗れます」とか、免許もないのに「大きなトラック乗れます」とか。そんなことを口にすると、同期からは「痛い」と言われるんですよ。でも大人たちは自分も同じ経験をしてきているから、口にする痛さを持っている奴にチャンスを与えてくれるんです。口にしていなかったら仕事を取られると気づいてから、「半歩先ができる」「やりたい」と言い続けるようにした。「大きすぎるはったり」じゃなくて「半歩先のはったり(身の丈に近いはったり)」を言い続けると、期待してくれる人がどんどん増える。あとは、お題が1つ出た時に1個だけ持っていくと採用されないけど、10個持っていくとどれかが刺さる。10個書くことを努力だと思わないパワーが、大人に認められるコツだったと思います。

大長)宣言するって大事ですよね。スラムダンク山王戦で桜木が「俺は今日は山王を倒す」と宣言する瞬間に、チームが結束して結果を出す話があります。日本って不言実行を美徳とする文化がどうしてもあるけど、有言実行こそ強いと思います。

倉崎)本当にそうで、僕も2025年の朝ドラ「あんぱん」を作ったときも、放送100年になるこの企画をどうしてもやりたいと言い続けていました。やりたいということを言い続けた結果、声がかかりました。その中で言ってやりきる、結果で示すことが大事だと思います。

意中の人を口説くコツや注意すること。特に意識していることはなにですか?

鈴木)シンプルで、相手のことを本当に好きになることですね。僕がバラエティ番組をやっていたとき、出てほしい芸人さんのDVDを片っ端から見るんです。で、本人と話す中でさりげなく「あのシーン○○でした」って言うと、「見てくれたんだ」ってなる。それを連発する。恋愛と一緒で、相手を本当に好きになることがシンプルに一番大事。就職面接の構図っておかしいと思っていて、十数社に告白するようなものじゃないですか。本当に好きなやつは受かっているし、やっぱり分かるんですよね。

倉崎)僕の場合、アナログ的な体当たりだと思います。2年目の時に初めて演出をしたくて、ラジオドラマのチャンスをつかもうとしたんです。「世界から猫が消えたなら」という小説の十数ページを読んで、この作品は妻夫木聡さんしかないと思いました。アプローチするには手紙しかないと思って、3ページの手紙を書いて渡したのです。そしたら1週間後にマネージャーさんから電話があって、「熱いお手紙をありがとうございます。妻夫木さんの漢字を「聡」ではなく「恥」と間違えていましたよ」と言われました。ただ結果的に妻夫木さんが自分の漢字を間違えた人と会ってみたいとご出演くださいました。

あと、「あんぱん」のヒロイン、今田美桜さんへのオファーでも、朝ドラ放送中の朝8時に合わせてNHKに来ていただいて、「ヒロインお願いします」と伝えて手紙を渡したのですが、やっぱりアナログ的な伝え方は大事だと思います。

鈴木)高倉健さんにSMAP×SMAPに出演してもらいたくて、あるプロデューサーが手紙を書き続けたんです。事務所もない方なので返事もない。それでも1年間、毎週書き続けて50通。1年後にパーティーで高倉健さんに会った時に「オファーから1年、50通の手紙、毎回全部目を通しています」と言われてオファーが通ったという話があって。くじけずに毎週書き続けるって、簡単に言うけどめっちゃ難しい。そのようなことができる人が意中の人を口説けるのだと思います。

石澤)僕は業務サイドの話になりますが、まず友達になることが大事だと思っています。仕事を通じて友達になる。そうすると相手のやりたいことが分かってくる。その上で、自分のリソースで相手のやりたいことにどれだけ貢献できるかを考えて、素直にぶつけていく。そして確実に遂行する。信頼関係ができるのは、期待以上の業務をやり続けた時だと思っています。一貫して「私はあなたの友達だよ」と思い続けて言い続けるんです。仕事だけの付き合いより、友達で飲んだり遊んだりした方が人生豊かじゃないですか。そのスタンスで自分がうまくいった部分は大きいなと思っています。

巻き込んだ後に離脱したいと言われたことはありますか、その際にどう対処されましたか?または離脱させないための工夫はありますか?

石澤)実は未来(アクセラプログラム)を立ち上げた時、一緒にやっていたメンバーが離脱したいと言って離脱したんですよ。ただ、友達だったので関係はずっと続けていて、飲みに行ったり、最近どうなのって連絡したりして、今は実はうちの会社にいるんですよね。1回辞めていろいろして、また来てくれた。仕事の付き合いだとここで切れるけど、人の付き合いとしてつながっていれば、精神衛生上もいいし、結果その後もある。離脱された瞬間はショックではあるんですが、それでもつながっていればその後があると思っています。

鈴木)僕は去るものを追わないと決めています。決めたら心って戻らないし、1回離脱したいと言ったやつを口説いてまた一緒になっても、前の熱量には多分ならない。それより、去った人と笑顔でハイタッチで別れることを大事にしています。去る側の人って、自分が去ったらダメになるだろうと思っている人もいるけど、絶対代わりは出てくる。問題は、その人が辞めた後にすごい力を持つ場合もあること。そういう時に自分の力になってくれるかもしれない。だから笑顔で別れる。辞め際が最悪なのは、残る側にとって一番のダメージだと思っています。

倉崎)朝ドラになると数百人規模のチームになります。そもそも離脱させないための工夫は、最初から良いチームを作ることだと思っていて。各ポジションに最高の人材を揃えることを意識しています。チームを勝たせることに全力を捧げることが自分の役割で、あんぱんというチームが勝てたかどうか、ヒットしたかどうかが、メンバー1人ひとりにとってのメリットになります。そのベクトルを揃え続けるためにどれだけ多くの人達の心を揺さぶることができるかを大事にしています。

鈴木)優秀な人材には給料差をしっかりつける、副業を自由にする。副業が自由になると逆にフリーになるリスクも考えるから、組織に残るメリットにもなるんですよ。根本のルールを見直すことが大事だなと思います。

石澤)「産業創造をやります」というスローガンを鮮明に出したことで、うちの会社は1年間で20人採用できています。大企業の1組織でそれはなかなかない。ビジョンへの共感が離脱を防ぐ大事な要素だと思っています。

巻き込む力は才能ですか、技術ですか?今日から使えることを1つ教えてください。

石澤)ブレないことが全てだと思います。「あの人にはついていけないな」と思われたら誰もついてこなくなる。自分の生き方をブラさないことを大事にしてほしい。

倉崎)才能でもあり技術でもあり、両方だと思っています。今日お伝えするとしたら、自分が惚れた相手や題材に対して、なるべく早く相手に思いを伝えることです。自分がどうしてもご一緒したかった役者さんを取られてしまったことがあります。本当に悔しくて眠れなかった。惚れた相手には、人よりも早く熱量を伝える。当たり前のことだけど、やり続けることが大事だと思っています。

鈴木)街中でお祭りをやっていると気になりますよね。それが大事なんです。楽しそうにしていること。森の中で迷った時に、電波を探して黙って動くやつと、「こっちこっち!」と楽しそうに言っているやつ、どっちについていくかというと、楽しそうなやつですよね。去年、自分のファンドで「X(旧Twitter)から募集して100人面談をやる」とぶち上げて、本当にやったんです。1人20分、100人。めちゃくちゃ大変でしたけど、楽しいと思ってやっていた。この人といると楽しそう、ハッピーになれそうと思わせる人間でいること。それが巻き込む力の源泉じゃないかなと思います。

大長)巻き込むことは大事ですが、巻き込んだ先にその人の時間を奪うという側面もある。だからこそ、巻き込んだ人の人生に責任と覚悟を持ってやりきること。巻き込み、継続させること、その両方を意識していただければと思います。本日はありがとうございました。

『Startup Market 2026』は、7社のVCが推薦する出展スタートアップ63社が出揃う日本最大級のスタートアップキャリアカンファレンスです。本記事に関連して、本プロジェクトへのご質問がある方はHPお問い合わせ先までご連絡いただけますと幸いです。

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編集チーム:岩村 宗一郎 / 林 航平