次世代ユニコーン企業に聞く──スケールの壁をどう越えるか、成長途上の経営者たちの本音。【StartupMarket】
Startup Market 2026のセッション「次世代ユニコーン企業に聞く──スケールの壁をどう越えるか、成長途上の経営者たちの本音。」では、スタートアップが成長過程で直面するリアルな壁とその突破口をテーマに対談をします。強大な既存プレイヤーとの戦い方や規制産業への参入戦略をレポートします!
【スピーカー】
newmo株式会社
代表取締役CEO 青柳 直樹 氏
株式会社Solafune
代表取締役CEO 上地 練 氏
株式会社タイミー
代表取締役 小川 嶺 氏
【モデレーター】
グリーベンチャーズ株式会社
代表取締役社長 相川 真太郎 氏
「起業はバッターボックスに立ち続けた結果」── 3者3様の原体験

相川)まず皆さんの起業のきっかけ、背景についてお聞きしたいと思います。小川さんからお願いできますか。
小川)自分は立教系列の中高大一貫校でずっとサッカーだけやってきて、親父はNTT、母親は教師という堅い家庭で育ちました。18歳の時に祖父が亡くなりまして。祖父がとても好きだったので調べたら、祖父のお父さん、つまり自分の曽祖父が起業家だったということをそこで初めて知ったんです。立ち会えなかった後悔と、自分もいつ死ぬかわからないという気持ちが重なって、「小川家の復活」を18歳の時に心に決めました。そこから高校3年生の時から六本木のスタートアップでインターンを始めて、20歳で1社目を作りましたがうまくいかず畳んで。お金がなかったので日雇いで物流やコンビニの仕事をしていたんですが、あまりにもレガシーな現場を見て「アプリひとつで働けたらいいのに」と思って、自分でプログラミングしてプロトタイプを作り投資家に持っていったら刺さった、というのがタイミーの始まりです。事業は100個ぐらい考えて、5個ぐらい実験して、1個はそれなりに作ってうまくいかなくて、2つ目3つ目でタイミーという感じです。
相川)必然としての成功という感じですか。
小川)バッターボックスに立ち続けた結果だと思っています。あとは運も大きくて、タイミーを作った2018年に副業解禁の流れが来て、コロナ禍で飲食から物流へシフトし、21〜22年には副業ユーザーがタイミー全体の3割以上になっていた。そういう社会の変化とのタイミングの部分は、やはり運もあるかなと思っています。
相川)上地さんはいかがでしょうか。
上地)僕は沖縄生まれ沖縄育ちで、高校の同級生がドラフトでジャイアンツに指名されて急に人生が変わるのを見て、「まずい、自分も人生の成り上がりの角度を上げないと」となったんです。その時、東大を目指そうと思ったんですが、高校3年の夏で残り半年、時間のビハインドが大きすぎると感じた。それで慶應SFCなら英語と論文だけで行けると知り、そもそもSFCを調べていくと「起業家が多い大学らしい」となって。孫正義さんの本を読んだら、高校を中退してバークレーに行くストーリーがあったので、「これをパクろう」と思ってバークレーを選びました。数学科を選んだのも「かっこいいかな」というノリで。バークレーに行くと、周りに起業する人がいっぱいいて、気づいたら呼吸をするように会社ができていた、という感じです。
相川)いろいろ飛んでいますが、それも上地さんらしいですね(笑)。青柳さん、44歳での起業というのも含めて教えてください。
青柳)お二人と違って44歳での起業でした。学生起業の2人がちょっと眩しいですけれども(笑)。グリーには社員番号20番で入って10年、すごく伸びた時期も苦しい時期も一緒にやらせていただいて、それが自分のベースになりました。その後メルカリというグリーとは全く違うカルチャーの会社に入って、それぞれ違うタイプの起業家と働いてきた中で、起業に対するイメージが徐々に持てるようになってきたというのが大きいです。「彼ができるんだったら自分もできるんじゃないか」と思えるようになるのに20年かかったというか。で、10年前にタクシーの2種免許をグリーを辞めた後に取っていて、モビリティが「日本がこれから本当に困る領域だ、誰もやらない」と思っていたんです。2〜3年前に当時の菅首相がライドシェア解禁を発信されているのを見て、「モビリティをやりたい自分は今このタイミングで起業しなければいけない」という気持ちで飛び込みました。
巨人のいる市場にどう飛び込むか──それぞれの「勝ち筋」

相川)GO、Uber、リクルートなど、強力なプレイヤーがいる市場にどう参入したのか、その決断と戦略について聞かせてください。
青柳)2年半ずっと聞かれ続けてます、「GOにどうやって勝つのか、Uberにどうやって勝つのか」と。資本力を考えると合理的に見えないマーケットで、実際に2年半前にライドシェア解禁の機運が高まった時、多くの会社がライドシェア事業を検討しましたが、新たに大きく調達してマーケットに入ってきたのはnewmoだけでした。競合がいる中で大事なのは、「マーケットのペインがめちゃくちゃ大きく、自分たちだけが知っている勝ち筋がある」という確信を持てるかどうか。ピーター・ティールの『ゼロ・トゥ・ワン』の言葉でいう「シークレット」、自分たちだけが知っている真実ですね。それがあると確信して、数少ないVCの方々が支持してくれて、このジャーニーが始まりました。タクシー業界の内部にいなかったことはアドバンテージがない出発点でしたが、誰よりも徹底してやる姿を見せることでギャップを埋めてきました。
相川)小川さん、タイミーもリクルートに似たような競合圧力を抱えてきたと思いますが。
小川)2018年8月にリリースして、その年の11月に師匠であるサイバーエージェントの藤田さんと飲んだ時に「リクルートのような大手が参入してきたら厳しいのでは」と言われたんですよ。その時に「大手が参入する可能性がある市場でも、スピードで勝負するしかないと思うんです」と返して、出資してもらいました。やりきるかどうかのエネルギーとスピードが重要だと思っていて、シリーズBで大型調達をした翌月に人気女優を起用した5億円規模のCMを全国でバンと打った。ファーストムーバーアドバンテージがめちゃくちゃ効くんですよ。UberもAirbnbもGoogleもそうですが、スマホのアプリって1個しか開けないじゃないですか、そこを取りきれると強い。もう1つは密度で、エリアの密度が高ければ、競合が入ってきてもユーザーはタイミーを選んでくれる。1400人の社員のうち800人近くが営業という組織で、泥臭さで勝てたというのが正直なところです。
上地)僕は最初は正直、既存プレイヤーとの競合なんて全然考えていなかったですね(笑)。学生だったし、好きなものを好きなように作るという感覚で。アルゴリズムコンテストのプラットフォームを作ってみたけど全然お金にならなくて、そこから「市場とはなんぞや」に向き合うようになりました。衛星データのAPIを公開してトランザクションでマネタイズしようとしたけどうまくいかなくて、結局自分たちで用途を作っていくしかないとなった。アフリカの社員のつながりから在日大使館経由で大臣クラスの方に合えたのが国への参入の入り口でした。ただ、そもそもアフリカに拠点や人を持っていたからこそ生まれたつながりで、運が来た時に掴めるだけの技術と準備があったのも事実です。だからこれは、運を引き寄せる場所に自分たちを置き、それを結果に変えてきたということだと思っています。そして「再現できないことが、すでに強みである」とも考えていて、その独自の立ち位置にレバレッジをかけていくことが重要だと捉えています。
規制・行政との向き合い方──「対決」より「飛び込む」

相川)皆さんが取り組んでいる領域は、規制や行政との関係が事業の命運を左右します。どうやって乗り越え、味方にしてきたか聞かせてください。
小川)過去には短期就労をめぐって、働き手保護や雇用管理のあり方が社会的な論点になった歴史があります。そのため、タイミーとしても制度趣旨を踏まえ、関係省庁や自治体、有識者の皆様と対話を重ねてきました。政策判断に必要な情報は多岐にわたるため、現場の実態やデータを正確にお届けすることが、事業者としての責任だと考えています。現在は、人手不足の深刻化に加え、働き手の側にも「短時間だけ働きたい」「生活や本業と両立したい」といった多様なニーズがあります。そうした実態を踏まえ、働き手保護を前提に、健全なスポットワークのあり方を丁寧に説明してきました。
上地)僕らのお客様には行政や政府機関も多いので、まず大事なのは、どこに課題があり、どの部署がその解決を担っているのかを理解することです。省庁の中にもさまざまな部署や役割があって、それぞれ重視する観点が異なるので、アプローチの仕方を間違えるとなかなか話が前に進まないこともあります。また、行政や政府機関にはさまざまな制度やプロセスがあるので、表に出ている要件だけでなく、その背景にある課題を丁寧に理解しながら進めることが重要だと思っています。僕らのように行政や政府機関と仕事をしていると、本当にいろんな要件が出てくるんですけど、それをひとつひとつクリアしていくと、RPGのように次の扉が開いていく感じなんです。 そのため、行政や公共分野を深く理解している人材に参画してもらうことも重要です。組織の進め方やコミュニケーションのあり方を理解しているので、よりスムーズに課題解決につなげることができます。
青柳)業界と行政、両方あります。規制改革の議論では、ライドシェア解禁を推進する側とタクシー協会側が対立するような構図でしたが、私たちは「対決」ではなく、その中に飛び込んで声を聞くというスタンスをとってきました。規制緩和すればいいというだけじゃなくて、背景や経緯を理解した上で新しいやり方を提案するという立ち位置です。最初はタクシー協会の集まりで「黒船だ」と言われましたし、国交省でも「ITの人がなんでタクシーをやるんだ」と言われました。でも向き合い続けた結果、今では大阪と愛知のタクシー協会会長から推薦をいただいて協会にも入れましたし、今週は国交省の自動車局長と大阪タクシー協会会長が自動運転のデモ開設に来てくださった。2年前では考えられなかった状況です。誰よりもやりきって実績を示すしかない、ということだと思います。
転職するなら? ── スピーカー3人が語る「入りたい会社」とその理由

相川)キャリアイベントということで、最後のテーマはこちら。今もし自分が求職者だとしたら、残りの2社のどちらに入るか、理由とともに教えてください。
青柳)タイミーには、FinTechの事業を立ち上げた経緯もあって、自分が入ったら副社長にしてほしいくらい貢献できると思っています(笑)。ただ前職の関係で少し難しい面もあって……。もう1社、Solafuneの上地さんですね。沖縄出身でアメリカの大学に行って、グローバルな領域で本当に面白いことをやっている。小川さん世代のライジングスターでいえば上地さんだと思っていて、体が2つあったら飛び込んでみたいですね。
上地)学生の時にスタートアップのインターンを3社だけ受けたことがあって、その1つがタイミーだったんですよ。2018年頃、まだ卓球台で卓球している人がいるくらいの時期に行ったことがあって(笑)。どちらに行くかという話では、僕はベースのスキルセットよりも、「飛び地」みたいなことが得意なので、それが求められる方に行きたい。スキルセット的にはnewmoの方が活躍できるかもしれないですが、アフリカに行きたければ呼んでください、という感じですかね。
小川)同い年だから正直やりにくいんですが(笑)。青柳先輩にはいろいろ教えていただきたいというところもあって。newmoの話でいうと、今からスタートアップをやるなら「ロールアップ」が王道だと思っていて、タクシー業界って地方に数百社の中小事業者がいるじゃないですか。テクノロジーがそんなに強くないところを、圧倒的なテクノロジーの強みを持つnewmoがロールアップして、中央集権で生産性を全部管理してあげるというのは、めちゃくちゃ勝ちパターンじゃないですか。もっと早くスピードを上げてやっていく中に入れたら楽しそうだなというのが正直な感想です。
『Startup Market 2026』は、7社のVCが推薦する出展スタートアップ63社が出揃う日本最大級のスタートアップキャリアカンファレンスです。
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Startup Market実行委員会
共催VC:ANOBAKA/サイバーエージェント・キャピタル/ジェネシア・ベンチャーズ/W/HeadlineJapan/mint/TeamMakeCapital
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