ロジスティック回帰の結果は論文にどう書く?OR・95%CI・p値の基本
目次
ロジスティック回帰では何を報告するのか
ORの基本的な読み方
ORを「確率が何倍」と書かない理由
95%信頼区間とp値の書き方
参照カテゴリを明記する
調整変数を明記する
本文の記載例
論文に載せる表の基本例
よくあるミス
まとめ
今後作成予定の実践セットについて
はじめに
心理・医療・看護・公衆衛生系の研究では、ロジスティック回帰分析を用いる場面が多くあります。たとえば、以下のような問いを扱う場合です。
あるリスク要因が、うつ尺度のカットオフ値による「陽性/陰性」と関連しているか
治療や介入によって、状態が「改善した/しなかった」と関連しているか
特定の経験が、あるイベントの「発生/不発生」と関連しているか
このように、アウトカムが名義変数である場合、ロジスティック回帰分析は有用な手法です。
一方で、分析結果が出た後に、「この結果を論文本文や表にどのように書けばよいのか」で迷うことがあります。特に、オッズ比(odds ratio: OR)、95%信頼区間(confidence interval: CI)、p値、参照カテゴリ、調整変数といった情報を、どこに、どの程度記載すればよいのかは混乱しやすい点です。
本記事では、今回は、特にアウトカムが二値である場合の二項ロジスティック回帰分析を扱います。ロジスティック回帰分析の結果を論文に記載するときに、最低限押さえておきたい基本事項を整理します。なお、記事内の数値はすべて説明のための架空例です。
1. ロジスティック回帰では何を報告するのか
ロジスティック回帰分析は、アウトカムが二値変数である場合に、説明変数とアウトカムとの関連を検討する手法です。たとえば、以下のようなアウトカムを扱います。
うつ尺度:陽性/陰性
症状の改善:あり/なし
受診:あり/なし
再発:あり/なし
介入継続:あり/なし
ロジスティック回帰の結果を論文に記載する場合、主に以下の情報を報告します。

これらをすべて本文に詳しく書く必要はありません。本文、表、表注を組み合わせて、読者がモデルの内容を理解できるように整理することが重要です。
2. ORの基本的な読み方
ORはodds ratio、つまりオッズ比です。
ロジスティック回帰では、説明変数とアウトカムとの関連をORとして示すことが多くあります。ORは、参照カテゴリまたは比較対象と比べて、アウトカムのオッズがどの程度高いか、または低いかを示します。
基本的な読み方は以下の通りです。

たとえば、ある分析で「高ストレス群」のORが2.10であったとします。この場合、高ストレス群では、参照カテゴリである低ストレス群と比較して、アウトカムのオッズが高いことを意味します。
本文では、たとえば以下のように記載できます。
高ストレス群では、低ストレス群と比較してうつ陽性のオッズが高かった(OR = 2.10, 95% CI [1.45, 3.05], p < .001)。
ここで重要なのは、ORは「確率」ではなく「オッズ」の比であるという点です。
3. ORを「確率が何倍」と書かない理由
ロジスティック回帰の結果を書くときに、査読で指摘されやすい点の一つが、ORの解釈です。
たとえば、OR = 2.00であった場合に、以下のように書きたくなることがあります。
アウトカムが生じる確率が2倍であった。
しかし、この表現は厳密には適切ではありません。
ORは「確率の比」ではなく、「オッズの比」です。特に、アウトカムの発生割合が十分に低くない場合、ORをリスク比や確率比のように解釈すると、関連の大きさを過大に表現してしまう可能性があります。
そのため、論文では以下のように書く方が正確です。
高ストレス群では、低ストレス群と比較してうつ陽性のオッズが高かった。
少し平易に表現する場合には、
高ストレス群では、低ストレス群と比較してうつ陽性に該当する傾向が高かった。
と書くこともあります。ただし、「傾向」という表現はやや曖昧であるため、統計結果を正確に示したい場合は「オッズが高かった」と記載する方が明確です。
4. 95%信頼区間とp値の書き方
ロジスティック回帰の結果を記載する際には、ORだけでなく、95%信頼区間とp値を併記することが一般的です。
4-1. 95%信頼区間は推定値の不確実性を示す
95%信頼区間は、推定値の不確実性を示す指標です。ロジスティック回帰では、ORとともに95%信頼区間を示すことが一般的です。
たとえば、以下のような結果があったとします。
OR = 1.80, 95% CI [1.20, 2.70]
この場合、ORの点推定値は1.80であり、95%信頼区間は1.20から2.70です。
ロジスティック回帰では、95%信頼区間が1をまたぐかどうかが一つの確認点になります。

95%信頼区間が1をまたがない場合、通常は5%水準で統計的に有意であることと整合します。一方、95%信頼区間が1をまたぐ場合、OR = 1、すなわち差がない可能性も信頼区間に含まれるため、統計的に有意とはいえません。
ただし、信頼区間は単に「有意かどうか」を判断するためだけのものではありません。推定値がどの程度不確実か、結果がどの程度安定しているかを確認するためにも重要です。
たとえば、同じOR = 2.00であっても、以下の2つでは推定の精度に対する印象が異なります。
OR = 2.00, 95% CI [1.80, 2.20]
OR = 2.00, 95% CI [1.05, 3.80]
後者の方が信頼区間の幅が広く、推定値の不確実性が大きいと考えられます。
4-2. p値だけでなく、ORと95%CIを併記する
論文では、p値だけを示すのではなく、ORと95%信頼区間を併記する方が望ましいです。
たとえば、以下のような書き方では情報が不足しています。
高ストレス群は有意であった(p < .001)。
この記載では、関連の方向や大きさ、推定値の不確実性がわかりません。
より適切には、以下のように記載します。
高ストレス群では、低ストレス群と比較してうつ陽性のオッズが高かった(OR = 2.10, 95% CI [1.45, 3.05], p < .001)。
このように書くことで、以下の情報を一文に含めることができます。
何と何を比較したのか
関連の方向はどうか
関連の大きさはどの程度か
推定値の不確実性はどの程度か
統計的有意性はどうか
本文では主要な結果を中心に記載し、詳細な数値は表に整理すると読みやすくなります。
4-3. 統計表記の補足
心理学系の論文でよく用いられるAPAスタイルでは、p値のように1を超えない値については、先頭の0を省略して p = .023, p < .001 のように表記します。
一方で、ORや95%CIのように1を超える可能性がある値については、OR = 0.62, 95% CI [0.41, 0.94] のように、1未満の値であっても先頭の0を付けます。
ただし、実際には投稿先の雑誌によって表記ルールが異なるため、最終的には投稿規定に従う必要があります。
5. 参照カテゴリを明記する
性別や群分けのようなカテゴリ変数をモデルに入れる場合、ORは必ず何らかのカテゴリを基準にして計算されます。この基準となるカテゴリを参照カテゴリといいます。
たとえば、性別を「男性」と「女性」に分け、男性を参照カテゴリとした場合、女性のORは「男性と比較した女性のOR」を意味します。
また、ストレス群を「低ストレス群」と「高ストレス群」に分け、低ストレス群を参照カテゴリとした場合、高ストレス群のORは「低ストレス群と比較した高ストレス群のOR」を意味します。
参照カテゴリを書かないと、読者はORの意味を正確に理解できません。
参照カテゴリの示し方には、主に2つの方法があります。
表注で説明する方法
1つ目は、表には分析結果だけを示し、参照カテゴリを表注で説明する方法です。

表の中にReferenceを明記する方法

どちらの形式でも構いませんが、「何と比較したORなのか」が明確になるように記載する必要があります。
6. 調整変数を明記する
多変量ロジスティック回帰分析を行った場合は、どの変数を調整したかを明記します。
たとえば、年齢、性別、教育歴を調整したモデルであれば、本文または表注にそのことを記載します。
本文では、以下のように書くことができます。
年齢、性別、教育歴を調整したロジスティック回帰分析の結果、高ストレス群では、低ストレス群と比較してうつ陽性のオッズが高かった(OR = 2.10, 95% CI [1.45, 3.05], p < .001)。
表注では、以下のように記載できます。
Note. 年齢、性別、教育歴を調整したモデルである。
調整変数を書かないと、そのORが未調整モデルの結果なのか、多変量モデルの結果なのかがわかりません。また、どの変数を考慮したうえでの関連なのかも不明になります。
複数のモデルを示す場合には、Model 1、Model 2などで調整変数を分けて説明することもあります。
例:
Model 1は未調整モデル、Model 2は年齢と性別を調整したモデル、Model 3はさらに教育歴と収入を追加して調整したモデルである。
7. 本文の記載例
ここでは、ロジスティック回帰の結果を本文に書く場合の例を示します。数値はすべて説明のための架空例です。
7-1. ORが1より大きい場合
年齢、性別、教育歴を調整したロジスティック回帰分析の結果、高ストレス群では、低ストレス群と比較してうつ陽性のオッズが高かった(OR = 2.10, 95% CI [1.45, 3.05], p < .001)。
7-2. ORが1より小さい場合
ソーシャルサポートがある群では、サポートがない群と比較してうつ陽性のオッズが低かった(OR = 0.62, 95% CI [0.41, 0.94], p = .024)。
7-3. 説明変数が連続変数の場合
年齢はアウトカムと有意に関連しており、年齢が1歳高いことに対応してうつ陽性のオッズが高かった(OR = 1.03, 95% CI [1.01, 1.05], p = .004)。
連続変数の場合、ORは「その変数が1単位増加したとき」の変化を示します。年齢であれば1歳、尺度得点であれば1点の増加に対応するORです。
カテゴリ変数とは異なり、連続変数には参照カテゴリはありません。そのため、連続変数については「何をReferenceにするか」ではなく、「1単位が何を意味するか」を明確にすることが重要です。
7-4. 統計的に有意ではなかった場合
高ストレス群では、低ストレス群と比較してアウトカムのオッズが高い方向の関連がみられたが、統計的に有意ではなかった(OR = 1.30, 95% CI [0.90, 1.88], p = .160)。
有意ではなかった場合も、p値だけでなく、ORと95%CIを示すことで、推定値の方向や不確実性を読者が確認できます。
8. 論文に載せる表の基本例
ロジスティック回帰の結果は、本文だけでなく表にまとめることが多いです。以下は基本的な表の例です。

表にはOR、95%CI、p値を示し、表注には略語、参照カテゴリ、調整変数などを記載します。
多くの心理・医療系雑誌では、縦線を使わず、横線を最小限にした表が好まれることがあります。ただし、表の形式は雑誌や投稿規定によって異なるため、投稿時には必ず投稿先の規定を確認する必要があります。
9. よくあるミス
ロジスティック回帰の結果を書く際によくあるミスは、以下の通りです。
ORを「確率が何倍」と解釈する
ORは確率ではなく、オッズの比である。p値だけを書く
関連の大きさや推定値の不確実性がわからない。参照カテゴリを書かない
何との比較か不明になる。調整変数を書かない
モデルの内容が不明になる。アウトカムの定義が曖昧である
ORが何に対するものか不明になる。表と本文でカテゴリ名が異なる
読者が混乱する。有意でない結果を「関連がない」と断定する
信頼区間や検出力を考慮する必要がある。
特に、有意ではなかった結果を単純に「関連がなかった」と断定することには注意が必要です。サンプルサイズが小さい場合や信頼区間が広い場合、推定値の不確実性が大きい可能性があります。
そのため、有意でない結果についても、ORと95%CIを確認したうえで、慎重に記載する必要があります。
10. まとめ
ロジスティック回帰の結果を書く際には、OR、95%CI、p値だけでなく、参照カテゴリ、調整変数、アウトカムの定義を明確にすることが重要です。
特にカテゴリ変数では、ORが「何と比較した値なのか」を読者が理解できるように記載する必要があります。また、ORは確率ではなくオッズの比であるため、「確率が何倍」といった表現は避けた方が安全です。
本文では主要な結果を簡潔に述べ、詳細は表に整理すると読みやすくなります。表注には、略語、参照カテゴリ、調整変数、必要に応じて分析モデルの説明を記載します。
ロジスティック回帰の結果を論文に書く際には、単に統計ソフトの出力を転記するのではなく、読者が結果の意味を正確に理解できる形で整理することが求められます。
11. 今後作成予定の実践セットについて
本記事では、ロジスティック回帰分析の結果を論文に記載する際の基本を整理しました。
今後、Rでロジスティック回帰を実行し、OR、95%CI、p値を出力して、論文用の表と本文記載例にまとめる実践セットを作成予定です。
実践セットには、以下の内容を含める予定です。
Rコード
練習用の架空データセット
論文用の表の作成例
本文記載例
Table, Note(注釈)の例
なお、実際の投稿時には、投稿先雑誌の規定や分野の慣習に合わせて、表記や表形式を確認する必要があります。
