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病気で半年休職、貯金を崩し続けた。「傷病手当金」を知っていれば月15万円もらえたのに

うつで休職に入って3ヶ月目。有給休暇はとっくに使い切り、給与はゼロ。家賃、光熱費、食費、通院費、毎月20万円が出ていき、入ってくるお金はない。通帳の残高が目に見えて減っていきます。「貯金がなくなる前に、復帰できるだろうか」。そう思いながら、ただ治療に専念する日々。

半年後、貯金は約180万円が消えていました。そして退職後、ハローワークで失業給付の手続きをしに行ったとき、職員から問いかけられます。「傷病手当金は、申請されましたか?」。その瞬間、失われた90万円の存在を知ることになります。

病気やケガで長期休職した人が、退職後にはじめて存在を知る制度。それが傷病手当金です。

休職中は、制度を調べる余裕などありません

「なぜ休職中に調べなかったのか」と問われても、答えは簡単です。体調が悪いからです。

うつや重い病気で仕事を休んでいる人に、細かい制度の条文を読んで、申請書を書いて、医師に証明欄を記入してもらう。そんな気力が残っているほうが稀です。多くの人は「貯金がなくなったら、その時考えよう」と思いながら、ただ治療に専念することを選びます。

そして退職後、ハローワークの窓口でようやく知る。休職中に申請できたはずの給付が、毎月15万円近くあったということを。この情報の届かなさが、制度の最大の問題点です。

給与の約2/3、通算1年6ヶ月。これが傷病手当金です

傷病手当金とは、健康保険法第99条に基づく制度で、健康保険の被保険者(会社員)が病気やケガで仕事を休んだときに給与の約3分の2が支給される仕組みです。

たとえば月給約23万円の場合、傷病手当金の支給額は月約15万円。半年間の休職なら、約90万円が支給される計算になります。180万円の貯金減少のうち、半分は防げた可能性があった、ということです。

支給条件は以下の4つ。

  • 健康保険の被保険者であること(会社員なら基本的にOK)

  • 連続3日間の待期期間を満たしていること(入院や自宅療養で3日連続休めばOK)

  • 4日目以降の休んだ日から支給対象

  • 通算1年6ヶ月まで受給可能(2022年1月の健康保険法改正で「最長」から「通算」に変更。いったん復職して再び休んだ場合、残りの日数を後から使えます)

長期入院、自宅療養、メンタル不調での休職、どれも該当します。ハードルは、一般的に想像されるよりもずっと低い制度です。

2年以内なら、遡って請求できます

「もう退職した。今さら手遅れだ」。そう思いがちですが、実はまだ間に合います。傷病手当金の時効は、各支給日から2年。つまり2年以内なら、過去に遡って請求が可能です。

実際、退職後3ヶ月経ってから協会けんぽに書類を提出し、約85万円が振り込まれたというケースもあります。180万円の貯金減少のうち、約半分を取り戻せた計算。

とはいえ、休職中から受給していれば毎月15万円が口座に入り、貯金を崩す額も精神的な負担もぐっと軽くなっていたはずです。遡及請求は救済策ではありますが、ベストタイミングは「休職に入って、待期3日を過ぎた直後」。これが原則です。

退職後も受給できる。ただし、落とし穴あり

傷病手当金は、健康保険法第104条の規定により、条件を満たせば退職後も引き続き受給できます。条件はシンプルです。

  • 退職日までに継続して1年以上、健康保険の被保険者だったこと

  • 退職日に出勤していないこと

2つ目が、とんでもない落とし穴です。

退職日に「最後だから挨拶に行こう」「荷物を片付けに顔を出そう」と、一度でも出社してしまうと、退職後の傷病手当金を受給する権利を失う可能性があります。出社した時点で「働ける状態だった」と判断されるためです。

知らなければ、普通にやってしまう行為です。退職日が決まったら、絶対に出社しない。これだけは徹底してください。退職金の数十万円、時には100万円以上を左右する一日です。

会社は、教えてくれません

最大の問題は、会社の総務部が案内してくれないケースが多いこと。

休職の手続きをしたとき、退職の手続きをしたとき。「傷病手当金」という単語が一度も出てこないまま、書類のやり取りが終わってしまう。そんな現場が、全国にあります。

なぜか。会社に申請義務がないからです。総務が親切心で教えてくれる会社もあれば、担当者自身が制度を知らない中小企業もある。本人が知らなければ、スルーされる構造が出来上がっています。

体調が悪いときに「自分の身は自分で守れ」と言われるのは、本当に理不尽です。ですが現実として、知っているかどうかで90万円の差がつく。この事実は、残念ながら変わりません。

これから休職する可能性がある方。今まさに休職中の方。身近な家族や友人が長期休職に入った方。「傷病手当金」。この5文字だけでも、今日、誰かに伝えてあげてください。制度を知る機会が1回増えるだけで、救われる人が確実にいます。


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