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Chapter 1-1 夜明け前、私は壊れかけていた 『わたしはまだ、わたしをやっている―渡野凪沙 再生の物語』#01

DV・モラハラ・浮気──夫からの暴力と裏切り、そして振り払えない母の呪縛。
40代、別居中。自信を失った主婦が、「書くこと」で少しずつ自分を取り戻していく、実話に基づいた再生の物語。

Chapter 1-1 夜明け前、私は壊れかけていた

夜が明ける気配はなかった。
冷たい雨が、窓の向こうで静かに降っていた。
時計の針はとっくに日付を越えていて、街灯はまだ青白い光を投げかけていたけれど、それすら雨に滲んで、ぼやけて見えた。

明け方になれば、少しは光が差し込むかもしれない。
けれど、この朝に限っては、それすら期待できない気がした。
春になったはずなのに、空気はまだ冬の冷たさを引きずっていた。
三月も終わろうとしているのに、私は毛布を手放せずにいた。

リビングのソファに丸くなって座り、裸足の足先を抱える。
床の冷たさが、ひたりと身体をのぼってくる。
毛布の端を無意識に引き寄せ、かろうじて身を守っているような姿勢だった。

目の前に置かれたノートパソコンの画面だけが淡く発光している。
部屋の一角が、その青白い光でかすかに浮かび上がっていた。

頭の中は、ぐちゃぐちゃだった。
恐怖、悲しみ、恥ずかしさ、悔しさ、怒り、憎しみ……
言葉にならない感情たちが暴れ回り、どれがどれだかわからない。
ただ、気が狂いそうだった。

──ほんの数日前の出来事だった。

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