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still. quiet rebellion|なぜ手取りは少ないのか

このシリーズは、
表向きの説明をなぞるためのものではありません。

1周目では見えなかったことや、
うまく扱えなかった違和感を、
今の自分の経験と照らし合わせながら見直していく。

2周目を、自分の条件で設計し直すための、
小さな、そして密かな反逆です。



会社員として働いていたころ、給与明細を見るたびに、いつもどこか腑に落ちない感覚がありました。

給料。。。これだけ?

数字はたしかに年々増えている。
でも、働いても働いても
暮らしの側には
それほど余裕が増えた感じがしない。

いつしか「そんなのか」と
自分を納得させて
長いあいだ、
あまり気にしませんでした。

「たぶん、ちゃんとしてくれてるだろう」
「みんなも何も言わないから一緒だろう」
そういう何の根拠もない当たり前。

けれど今振り返るとあの違和感には、それなりの理由があったのだと思います。

物価は上がる。
賃金も上がる。
それ自体は、
一見すると良い流れに見えます。

実際、賃上げという言葉は、前向きなニュースとして語られることが多い。
もちろん、賃金が上がること自体は悪いことではありません。
むしろ、本来は必要なことだと思います。

ただ、それだけで生活実感まで伴うかというと、話はそう単純ではありません。

日本の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる累進課税になっています。
国税庁の所得税速算表では、課税所得に応じて税率は5%から45%まで7段階に分かれています。

ただし、ここで間違えてはいけないのは、上の区分に入ったからといって、所得全体に高い税率がかかるわけではないということです。

所得税は、いわゆる超過累進税率です。
上がった部分に対して、より高い税率がかかる。

だからと言って、給料が少し増えた瞬間に全部が損になる、という話ではありません。
でも、名目上の賃金が上がれば、課税所得も増える。
その分、税負担も少しずつ増えやすくなります。

さらに、社会保険料も給与に連動します。
たとえば厚生年金保険料は、毎月の給与に基づく標準報酬月額と、賞与に基づく標準賞与額に保険料率をかけて計算されます。保険料率は18.3%で、会社と本人が半分ずつ負担します。

企業はコストをかけて賃上げをする。
働く側も、数字の上では給与が増える。

それでも、手取りの増加は思ったほど大きくない。
そのうえで物価高が続けば、暮らしの感覚としてはこうなります。

増えたはずなのに、残らない。

このように、物価や名目賃金の上昇によって、税率区分や負担感が実態とずれていく現象は、
ブラケット・クリープと呼ばれます。

アメリカでは、連邦所得税の税率区分などについて、インフレに応じた調整が毎年行われています。
IRSも2026年分の税制上のインフレ調整を公表しています。

一方で、日本では、少なくとも所得税の税率区分について、毎年インフレに連動して自動調整される仕組みは見えにくい。

だから、賃上げは良いニュースの顔をしていても、生活者の実感としては、少し違う受け止め方になることがあります。

「数字は増えた。
でも、余裕は増えていない。」

この違和感は、個人の感覚の問題だけではないのだと思います。
制度と物価と賃金が、そういう形でつながっている。

ただ、こういう話を、私は誰かに説明したいわけではありません。

知識は、調べれば見つかります。
税率表も、社会保険料の仕組みも、探せばちゃんと出てくる。

でも、知っていることと、暮らしの中で実感として結びつくことは少し違います。

誰かが言ったから。
有名な人が言っていたから。
ニュースでそう見たから。

それだけで受け取ってしまうと、情報はいつまでも自分のものにならない。

大事なのは、その情報が自分の場合どういう意味を持つのかを、一度考えてみることなのだと思います。

会社員なのか。
個人事業主なのか。
経営者なのか。

扶養があるのか。
住宅ローンがあるのか。
親の介護が近いのか。
健康状態に不安があるのか。

同じニュースでも、置かれている条件によって、意味はまったく変わります。

だから、賃上げという言葉を聞いたときも、
「よかった」で終わらせるのではなく、
「自分の場合はどうなのか」まで、少しだけ引き寄せて考えてみたい。

会社員という立場では、給与の受け取り方を大きく変える自由は限られています。
毎月の給与明細に違和感を覚えても、できることはそれほど多くありません。

私も、長いあいだそうでした。

何となく働き、何となく受け取り、何となく減っていく。
その流れの中に、自分の人生設計の大事な部分を預けすぎていたのだと思います。

だから2周目は、少し考え方を変えたい。

時間を切り売りするだけではない形。
給与一本に寄りすぎない収入の持ち方。
小さくても、
自分で選べる余地を残すための器

そういうものを、今のうちから少しずつ育てておきたいと思っています。

答えが出たわけではありません。
まだ試している途中です。

けれど、何も知らないまま同じ場所に立ち続けるよりは、
構造を知ったうえで、自分なりの持ち方を考えていく方がいい。

変化の大きい時代は、流れにうまく乗れた人だけのものではないと思います。
流されずに、自分の足場を確かめようとする人にも、きっと意味がある。

世の中を変えるなんて、大きなことは言いません。

でも、
自分の半径1kmくらいは、ちゃんと守っていたい。

だから、誰かの正解をそのまま受け取るのではなく、
得た情報を、自分の条件に置き換える

私にできる静かな反逆は、
たぶんそのあたりから始まります。


気になったら、少しだけ立ち止まってみてもいいかもしれません。
自分の足で立って、自分で考えるために。



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