書評 「世界秩序が変わるとき~新自由主義からのゲームチェンジ~」斎藤ジン 著
久しぶりに書評です。
秋の連休、なかなか雑事で忙しかったこともあり、きちんと書評を書けるほど心を動かされた読書がありませんでした。
こちらは久しぶりに面白かったので、書き留めておきます。
新書で手軽だし、面白過ぎて、電車内だけでなく、駅の構内やエレベーター待ちでも歩きながら読んでしまった。二宮金次郎みたいに。
きっかけ 新聞の週末版で紹介されていた方
手に取ったきっかけは、某新聞の週末版で、著者の斎藤さんが大きくフィーチャーされていたから。
気になるタイトルのため、こんなことはめったにないのですが(書店派なので)、アマゾンですぐ注文しました。
読み始めて三日で読み終わりました。論旨は明快、よみやすかったです。
でも、読み終わって気づいたのですが、初版は24年の12月。
なので、出会いがまるまる1年遅かった。。
でもその書いた当時の予言がいま次々当たっていて、この方の眼力は本当だな、と、かえって思わされました。
本のあらましと著者の斎藤さんについて
いちおうジャンルとしては、国際経済系の話です。
しかし累計10万部を超えています。
国際経済の話でありながら、国際政治の話であり、身近な経済の話であり、私の人生が、これまでなぜこんな人生だったのか?を解説してくれる本であり、これから身近な私の人生がどうなるかを占ってくれる本でもあります。
例によって、略歴欄やオビから抜粋しますと、、
「ソロスに10億ドルを儲けさせた、ベッセント財務長官の盟友」「NHKニュースウオッチ9,NHKスペシャル、おはよう日本、テレ朝ワイドスクランブルなど各メディアで話題沸騰」とあります。
裏表紙のオビには、著者の主張が大書されています。
「世界は、アメリカを地殻変動の震源地とする「大転換」のただ中にあり、これから起きる変化は日本にとって有利なものになる」
とあります。具体的には、
・覇権国家は自らの地位を脅かす存在を叩く
・アメリカは、中国を封じ込めるために「強い日本」が必要
・日本のエリートたちも陥っている「エスタブリッシュメントの罠」
・日本は「古いゲーム」をうまくやりすぎて、アメリカに睨まれた
・大蔵省に書簡で「銀行を潰せ」と伝えた米クリントン政権
・習近平独裁体制の強化で「裸の王様」のリスクが高まる中国
・べ英中退率の今後に関する3通りのシナリオ
・日本以外で最大のチャンスを迎えている国とは?
です。
表紙の見返しには、こうあります。
「日本は今、数十年に一度の千載一遇のチャンスを迎えている。東西冷戦後の世界秩序を支えてきた「新自由主義」が崩壊し、勝者と敗者がひっくり返る”ゲームチェンジ”が起きているのだーー。マネーの奔流を30年近く見て来たコンサルタントによる初の著書。」
何が書いてある本か、明快ですね。
著者の斎藤さんですが、略歴には、
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在ワシントンの投資コンサルティング会社共同経営者。1993年に単身で渡米、ジョンホプキンス大学高等国際問題研究大学院修士。(略)ヘッジファンドを含むグローバルな機関投資家に対し、各国政府の経済政策分析に関するコンサルティングを提供。
==
とあります。もうひとつ斎藤さんをあらわす属性がありますが、内容のすばらしさとの関係を説明するには私は表現力が足りないと思うので、ここでは私は明かさないことにします。
感想:みんなうすうす気づいているような、言われてみればその通りのような指摘
斎藤ジンさんは文藝春秋社としてしばらくフィーチャーしていく方のようです。自分が認識したせいもあると思いますが、広告などの見出しで見かけるようになりました。
さきほどリンクで紹介した文春社の紹介ページにあるとおりなので繰り返しになってしまいますが、ざっくりまとめますと、
・世界の覇権国は、百年規模の単位で移り変わる
・1920-30年代に大英帝国からアメリカに遷移した。
・その後はアメリカが覇権国である時代が続いている。
・中国がその地位に挑戦しようとしているが、いくつもの理由で覇権国になるのは難しいとジンさんは見ている。
・覇権国は、自由にゲームのルールを定めることができる。カジノのオーナーと同じ。
・ジンさんの見立てによると、ゲームのルールはほぼ30年周期で変わる(揺れ戻る)。
・この30年間は、「新自由主義」「小さな政府」(レッセフェール。市場原理主義。政府は経済や産業に口出ししないのがよしとされるルール)が、ゲームのルールだった。
・これが1995年ぐらいからつづいた。冷戦終結が1990年前後。完全に合致はしないが、ポスト冷戦期と重なる。
・冷戦期のゲームのルールは、「大きな政府」(政府が経済や産業をコントロール)だった。西側陣営と東側陣営ががっつり競った。結果、資本主義、民主主義が、共産主義、社会主義に勝った。
・ポスト冷戦では、大きな政府が必要なくなり、自由を謳歌。とくに繁栄したのがグローバルなサプライチェーンの構築で富を享受したグローバリストたちと、インターネット革命を拡散させてきたデジタリストたち。
・日本について。日本は、冷戦期には、覇権国の都合で、勝ちやすい席に座ることができた。共産主義陣営と対峙する上で必要な地理的環境にあった。軽武装加工貿易立国として経済復興した30年だった。1945-1975年ごろ。
・しかし強くなりすぎると、覇権国アメリカは手のひら返しで、日本を叩き始めた。自動車、半導体、なんでも経済摩擦で日本たたき。要求にいくら応じてもゴールポストを動かし続けた。憤ってもしょうがないことで、覇権国はいつでも自分の都合でカジノのルールをかえられるのだから。
・日本は世界のルールがポスト冷戦、新自由主義となっても、大きな政府、産業保護を続けた。とくに雇用。バブル崩壊と不況が襲ったが、大きなリストラは断行せず、雇用を守った。失業率はあがらなかったが、企業の固定費は高止まりし思い切った投資ができず我慢の時間を過ごした。
・これが失われた30年の正体。
・2014年のクリミア奪還あたりから兆候があらわれていたが、2025年現在、ロシアや中国ほかの国々も(イスラエル、ベネズエラ、イランなどもそうかなあ)により、いまの秩序を覆そうという動きが加速。新自由主義、小さい政府、市場原理万能といったいままでのゲームのルールが、狂いが生じて来た。グローバリストやデジタリストも、国家の枠組みにとらわれざるをえなくなっている。「産業のコメ」と言われる半導体も企業まかせではなく国家プロジェクト化。経済ブロック化が目に見えて進み、世界を縦横にうごくサプライチェーンはかえって企業リスクになりつつある。
・つまり、覇権国アメリカは、再び、ゲームのルールを「大きな政府」「産業統制」に変えつつある。
・ここは日本にとって追い風、大チャンスであるというのがジンさんの意見。これまでのルールでは勝たせてもらえなかった日本だが、再び冷戦期のような東西対立に似た時代に突入、アメリカは、日本を勝てる席に座らせようとしているのだ、という。
読んですこし時間がたち記憶があいまいになりましたが、私は本書の論旨を、ざっとこんなふうに理解をしております。
読んでいてとても明快だったし、
・自分が生きて来た時代がどんな背景に突き動かされていたのか
だとか、
・理由がわかればこれからはもう少しうまく戦えるんじゃないか
とか、
・いまからが日本は再び大チャンスの時代なら、きちんと活かさなきゃ
とか思いました。
人によっては、例えばエマニュエル・トッドの「西洋の没落」とかを読んだ方からすると、数百年単位でのものごとの捉え方ではなく、キリスト教とイスラム教などの宗教対立といった大きな歴史トレンドでもなく、「ファンドにもうけさせる」といった短期タームでの時間解釈の本ですね、などと言う方もいるかもしれない。
ですが「現世利益」をなによりも重視する私としては、この30年周期ぐらいの世界トレンドの捉え方のほうが好ましく、すっと体に染みてくる感覚がありました。
だって私の人生もおそらくあと30年あるかないかでしょう。
そう考えると、ジンさんが唱える新たな30年のゲームのルールがどうなっていくのか見届けたいという気がしてきましたし、そのあとまた元のルールにもどるのか、はたまた覇権国そのものが入れ替わるようなことがあるのか、といった事も気になり、元気をもらった気がしました。
おまけ:Next Actionどうする?
さすが有名なファンドに助言してきた方だけあって、近未来がどうなるかを論理だてて説明しており、読んでしまった自分は、このあとどう動こうか?と考えてしまう本でした。
つまり、Next Action, Next To Do を私たちそれぞれに問うてくる本でもありますね。
自分の場合はどういう勝ち筋があるのか、、
ジンさんによると、勝ちやすい環境が目の前に転がり込んでいるというではありませんか。
この冬休みにもう一回読んで、ちゃんと考えようかな。
