言葉を教えていたはずなのに、教えられていたのは私だった。
「ありがとう」を言いなさい、の先にあるもの。
お礼を言いましょう。
「ありがとう」を言おうね。
保育をしていると、
何度も使う言葉だ。
もちろん、
礼儀として必要な場面もある。
でも、
私が本当に心を動かされたのは、
教えたから出たありがとう
ではなかった。
子どもたちは、
驚くほど自然に
「ありがとう」を言う。
落ちたものを拾ってもらった時。
手伝ってもらった時。
バスを運転してくれる先生に。
「ありがとう」
その言葉には、
大人みたいな社交辞令がない。
ただ、
“気づいた”
が入っている。
「先生、ありがとう」で気づかされること
私は幼稚園で、
たくさんの「ありがとう」を聞いてきた。
でも、
本当に心に残っているのは、
子どもが、
自分で気づいて、
自然に出した「ありがとう」だ。
例えば、
「先生、いつも一緒に遊んでくれてありがとう」
そんなふうに突然言われることがある。
その瞬間、
こちらも気づかされる。
「あ、この子はそこを見ていたんだ」
って。
保育者は、子どもの言葉から逆に学ばされる
保育って、
つい教える側だと思ってしまう。
でも実際は、
子どもの言葉から、
こちらが学ばされることの方が多いのが事実。
その子が、
何に安心したのか。
何が嬉しかったのか。
どこに心を動かされたのか。
「ありがとう」を通して、
見えてくる。
だから私は、
子どもの「ありがとう」が好きだった。
心地よかった。
あの言葉には、
評価じゃなく、
発見があるから。
私は一度、「ごめんなさい」を言えなかった
でも、
「ごめんなさい」は違った。
私は一度、
それを言えなかったことがある。
ある日、
A君の上履きに、
B君が落書きをしてしまった。
A君は笑っていた。
でも、
放課後、
A君のお母さんが園に来た。
「息子が落書きをされたんです」
私はその時、
ちゃんと謝れなかった。
正しい説明より、先に必要だった言葉
疲れていた。
当時妻が病気で入院したり
息子の世話と送迎、家のこと
今までやったことの無かったことの
多くをやっていた。
クラスの子どもたちのことも
保育のことも考える、持ち帰りの仕事も
あった。
完全に余裕がなかった。
問題を大きくしたくなかった。
たぶん、
私は向き合うことから逃げていた。
もちろん、
状況確認は必要だった。
事実を整理することも必要だった。
でも、
今ならわかる。
あの時、
最初に必要だったのは、
正しい説明じゃなかった。
「すみませんでした」
だった。

「ごめんなさい」は、問題解決ではなく痛みを受け取る姿勢
その後、
保護者同士の関係も悪化した。
私は何度も謝った。
電話もした。
手紙も書いた。
でも、
最初に言えなかった「ごめんなさい」は、
後から取り戻すのが本当に難しかった。
最近読んだ記事の中に、
「ごめんなさいは鮮度が命」
という言葉があった。
読んだ瞬間、
あの日のことを思い出した。
本当にその通りだった。
相手が傷つくのは、
出来事そのものだけじゃない。
自分の痛みを、
ちゃんと受け止めてもらえなかった
そう感じた時、
人は深く傷つく。
子どもたちは、もっとシンプルだった
大人になるほど、
正しさを考える。
説明を考える。
言い訳を探す。
でも、
子どもたちはもっとシンプルだ。
嬉しかったら、
「ありがとう」
傷つけたら、
「ごめんなさい」
そこに、
変なプライドがない。
私は、
子どもたちに言葉を教えていたつもりだった。
でも本当は、
人と向き合うことの基本を、
ずっと教わっていたのかもしれない。
「ありがとう」は行動に気づく力。
「ごめんなさい」は痛みに気づく力。
子どもたちの言葉って、
時々、大人よりもまっすぐ心に届くことがありますね。
だからこそ尊い存在なんだな。
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『何ヶ月も生徒が来なかった私が、Preplyで最初の1人に会うまで』
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