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2025年 1万人のインボイス実態調査 報告

当会は2024年度の確定申告に合わせ、適格請求書等保存方式(以降、インボイス制度)の実態調査を行った。
本調査の目的は、2023年10月のインボイス制度開始以降、消費税の課税期間がはじめて1年間となった2024年度における事業者等の影響を詳らかにすることである。
加えて、政府がこれまで答弁してきた、インボイス制度によって引き起こされる消費税負担や事務コストを軽減するための「税制上の特例措置や補助金の拡充」、取引先からの不当な扱いを防止するための「取引環境の整備」が商取引の現場で機能しているかを明らかにすることもねらいとした。

本調査には、1万人超が回答を寄せた。前回の同調査から3000人増加し、問題意識の強さが見て取れる。年代では40代、50代が6割を占めており、就職氷河期世代にインボイスによる困難も突きつけられたかたちだ。
寄せられた1万人超の声から 、制度による重苦の実態を報告する 。

▼実態調査報告会の現地配布資料はこちら


「1万人のインボイス実態調査」 サマリー

【 回答者概要 】
・調査期間18日間で1万人超が回答。昨年の同調査から3000人以上増え、
問題意識の高さがうかがえる
・自由記述欄への回答は8000件超。昨年に比べ、「消費税」への言及が急増
・回答者はフリーランス・個人事業主が8割超。年代では就職氷河期世代に
あたる40代、50代が6割超を占める
【 インボイス制度への賛否 】
・97.3%が制度に反対しており、“インボイス反対”は世論の大勢
・9割以上が投票時に政党・候補者のインボイス制度に対するスタンスを重視
【 消費税の負担感 】
・課税事業者の9割超が消費税に強い負担を感じている
・制度を機に免税から課税事業者になった2割特例利用者で納税額15万円
以下の事業者は、前年度に比べて納税額が数倍~10倍まで増加した者が
多い
【 消費税の価格転嫁 】
・登録事業者の約8割が消費税等の負担を価格に転嫁できず
・登録事業者の4割超が消費税等の支払いを「所得や貯蓄」から捻出。1割
超は「借金」をして消費税等を支払う
【 取引環境の整備・公的支援 】
・インボイス制度によって一方的な値下げや取引排除に遭った事業者の
97%が公正取引委員会に申し立てせず
・申し立てをしなかった理由では、6割が「取引先との関係性を懸念」
・9割の事業者がIT導入補助金や相談窓口等の公的支援を使用せず
【 今後の見通し 】
・「2割特例」「8割控除」といった負担軽減措置等がなくなる(引き下がる)
26年10月以降の見通しについて、5割が「不安」。「廃業・転職を視野に
入れている」事業者は「運輸・通信業」「建築・土木・工業」「電気・ガス・熱供給・水道業」でそれぞれ2割前後と、特に強い危機感
・「廃業どころか首吊りも考える」といった死に言及したコメントを50件以上確認

回答者属性

▼ 8割超がフリーランス・個人事業主《設問4》。年代では就職氷河期世代にあたる40代、50代で6割超を占める《設問2》
▼ 直近の年間売上が600万円未満の事業者が約6割《設問5》
▼ インボイス制度を機に課税事業者になった事業者は3割超《設問7》
▼ 都市部の回答率が高い一方、全国各地に当事者が一定数存在し、影響の広さが浮き彫りに

【2】 あなたの年齢を教えてください。
【3】 あなたの会社/事業の業種を教えてください。(複数回答可) n=10,538
【4】あなたの働き方を教えてください。(複数選択可) n=10,538
【5】 事業/会社の規模についておうかがいします。 直近の年間売上を教えてください。
【6】 インボイス制度の 登録状況についてお伺いします。
【7】 事業/会社の消費税の 課税状況について教えてください。

スタンス

▼ 業界や事業規模、登録の有無を問わずほぼすべての人(97.3%)が制度に反対しており、“インボイス反対”は世論の大勢といえる《設問11》
▼ 強い反対の意思は投票行動にも影響を及ぼし、9割以上が政党・候補者のインボイスへの賛否を重視 《設問33》

【11】インボイス制度について、 あなたの立場をお聞かせください。
【33】選挙において、各政党・候補者の インボイス制度へのスタンス(賛否)を重視しますか。

【 代表的なコメント 】

ようやく事業を始めたばかりのところで収入が減って最悪。早く廃止してほしいと願うばかりです。インボイス制度に賛成する党、議員には絶対に投票しないし、反対と口で言っているのに行動が伴わない人にも絶対に投票しません。(東京都豊島区/40代/クリエイター、サービス業/フリーランス・個人事業主、会社員(正規雇用)/1000万円以上~2000万円未満/免税事業者)

消費税

▼ 課税事業者の9割が消費税に強い負担を感じている《設問10》
▼ 制度を機に免税から課税事業者に転換した際に利用できる「2割特例」の利用率は、インボイス登録事業者の7割
▼ 2割特例利用者で今年度の消費税納税額が15万円以下の事業者では、納税額が前年度から数倍~10倍まで増加した者が多い《設問8・9》。さらに詳しく見ると、4倍前後の部分にボリュームゾーンが見てとれる。課税期間が
3ヶ月分だった前年度から、今年度は制度開始後はじめて1年分の消費税が発生したことにより、納税額が4倍
近くになった事業者が多かったと見られる

【10】課税事業者の方のみ、お答えください
消費税納税額に対する負担感について教えてください。

【 代表的なコメント 】

★ 今年は経過措置で10万円前後ですが、2年後はこれが50万になリます。少ない年金では暮らせないと思って個人タクシーをしているのに、意味がありません。(東京都世田谷区/70代以上/運輸・通信業/フリーランス・個人事業主/200万円以上~400万円未満/インボイス制度を機に課税事業者になった)

前年度と直近の消費税納税額の比較

回答の税額を前年度比率に換算し、分布図で示しました

【8・9】 〈課税事業者の方のみ、お答えください〉
あなたの会社/事業の前年度と直近の消費税納税額を教えてください。
 🔴 2割特例利用者  🔵もとから課税事業者
《例》 2割特例利用者の消費税納税額の推移イメージ

価格転嫁

▼ 消費税分等を「価格転嫁できた」登録事業者は5%に満たず、約8割が負担を価格に上乗せできていない
▼ 「所得や貯蓄」を減らして消費税等の負担を補った登録事業者は4割超。1割超は「借金」をして納税

【15】〈インボイス登録した方への設問〉
新たに生じた消費税額や事務コスト費用を、
自社で提供する商品・サービスの価格に転嫁(上乗せ)しましたか。
【16】 〈インボイス登録した方への設問〉 n=4,532
新たに生じた消費税額や事務コスト費用をどのように補填しましたか。(複数回答可)

【 代表的なコメント 】

★ 軽運送をしています。もともと、荷物1個いくらで報酬を貰い、消費税や物価高などでの価格転嫁は皆無で、ただただ生活費を減らしています。特例措置がなくなれば、廃業せざるをえないと考えています。(北海道札幌市/40代/運輸・通信業/フリーランス・個人事業主/600万円以上~800万円未満/インボイス制度を機に課税事業者になった)

▼ インボイス登録を機に価格交渉した事業者は2割にとどまり、半数以上が価格交渉せず
▼ 取引先との圧倒的な力関係の差やあらかじめ決められた予算等により、「価格交渉も価格転嫁も難しい」といった声が散見

【14】〈インボイス登録した方への設問〉
インボイス登録を機に、取引先と価格交渉はしましたか。

【 代表的なコメント 】

★ デザイン業では適正な価格など存在しない。客先の予算にあわせて都度金額を変えている。相見積もりなどと言われると、取引継続のためにさらに少ない見積もりを出さないといけなくなる。価格転嫁というが、まったくイメージできない。立場の弱い中小企業、個人事業主に課すべきではないと思う。というより消費税を廃止すべき。(千葉県我孫子市/60代/クリエイター/フリーランス・個人事業主/400万円以上~600万円未満/インボイス制度を機に課税事業者になった)

★ 能登半島地震の被災者相手の仕事をしているのに、被災者相手に価格高騰と小規模事業者潰し! 価格転嫁できる状態じゃない。(石川県羽咋郡/50代/建設・土木・工業, 電気・ガス・熱供給・水道業/フリーランス・個人事業主/1000万円以上~2000万円未満/免税事業者)

★ 1年分の消費税となると毎年3月までに支払うためだけに50万近く貯めなくてはならず、生活費、経費、社会保険料…生活出来ない。(宮城県仙台市/50代/運輸・通信業/フリーランス・個人事業主/400万円以上~600万円未満/インボイス制度を機に課税事業者になった)

事務負担

▼ インボイス登録によって経理業務の時間的負担を感じている事業者は約9割《設問17》。経理ソフトの導入など、6割が金銭的コストも増加している結果に
▼ 開始から1年半以上経った今もインボイス登録事業者の6割超が「制度の理解」に苦労《設問18》。複雑すぎる
制度が現場の実態から乖離している現状が明らかに

【17】〈インボイス登録した方への設問〉
インボイス制度の実施前と 比較したときに、
経理業務(経理作業や決算書・申告書づくり等)に係る 時間的な負担感を教えてください。
【18】 〈インボイス登録した方への設問〉 n=4,532
経理業務で大変だった点はどんなところですか。(複数回答可)

【 代表的なコメント 】

★ これまではかろうじて消費税を我慢してきましたが、細かい買い物までいちいち適格請求書を要求され、手間だけが増大してなんの得もない。経理事務としての本来の業務に大きな支障が出ています。ここまで来ると消費税そのものをなくせと強く思います。我慢の限界を試しているのかとまで思います。(京都府京都市/30代/卸売・小売業/会社員(正規雇用)/1億円以上~/もともと課税事業者)

★ 他社の不備(インボイス登録しているのに、適格ではない請求書・
領収書を発行している)が、自社の納税額や事務負担量に影響
する制度は、おかしいと思います。(東京都墨田区/50代/サービス業/会社員(正規雇用)/ 1 億円以上~/もともと課税事業者)

登録事業者の今後

▼ 4者に1者以上が、免税事業者との取引を経過措置の引き下げ段階等で見直しや停止する意向《設問22》
▼ 今後の登録については約1割が取り消しの意向を示し、4割が「わからない」と回答。登録継続によって発生する消費税や事務コストといった負担が、未登録によって生じるデメリットを上回っている可能性《設問23》

【22】 〈インボイス登録した方への設問〉
今後の免税事業者との取引について 教えてください。
【23】 〈インボイス登録した方への設問〉
今後のあなた/あなたの会社における インボイス制度の登録動向について教えてください。

【 代表的なコメント 】

★ 取引先から「経理がめんどくさくなるからインボイスにして」と言われましたが、「こっちの方がよっぽどめんどくさい!」というのが正直な気持ちです。現場の声をもっと反映し、実態に即した制度設計への見直しが必要です。(埼玉県上尾市/40代/クリエイター/フリーランス・個人事業主/
200万円以上~400万円未満/インボイス制度を機に課税事業者になった)

★ インボイスの登録しなければよかった。取引先にインボイス登録しないと消費税分手数料いただきますと言われてインボイス登録したが、結局内税にされてしまい、その上消費税を納付する状況に陥っているのは、完全に騙されました。(岐阜県大垣市/60代/通信業/フリーランス・個人事業主/
200万円以上~400万円未満/インボイス制度を機に課税事業者になった)

未登録事業者の状況

▼「変わらずに取引ができている」 が3割いる一方、「未登録を理由に値引きされた」も3割存在 《設問24》
▼ あからさまな取引排除は1割程度に留まるも、取引先から明言のない“サイレント取引排除”を経験した未登録事業者は約4者に1者 《設問24》
▼ 事業規模別に見ると、規模が大きいほど「変わらずに取引ができている」事例が増えており、小規模事業者ほど負担のしわ寄せがいきやすい構造がうかがえる

【24】 〈インボイス未登録の方への設問〉 n=6,006
インボイス制度開始後の取引の変化で当てはまるものをお答えください。(複数選択可)

【 代表的なコメント 】

★ 法人の方から商談があってもインボイス未対応だと渋い顔をされてしまう。かといって、対応して納税するのは今の売り上げだと家族を養えなくなる。すぐに売上げを上げるのは簡単ではない中、事業経費も生活コストも社会保険料もどんどんあがる。早く辞めるか消費税自体を減税してほしい。(滋賀県長浜市/40代/卸売・小売業, 製造業/フリーランス・個人事業主/600万円以上~800万円未満/免税事業者)

★ 免税事業者なのですが、取引先からは報酬から消費税分引かれていることが多く、また、その分価格を上げようにも消費税分の価格の上乗せが許される景気状態ではないと感じています。経過措置終了後は免税事業者との仕事はやめる、と言われた取引先もあります。(福岡県福岡市/30代/クリエイター, 卸売・小売業, 製造業/フリーランス・個人事業主/~200万円未満/免税事業者)

公正取引委員会

▼ インボイス制度によって一方的な値下げや取引排除に遭った事業者の97%が公正取引委員会に申し立てせず
▼ 申し立てをしなかった理由では「取引先との関係性を懸念」が6割を占め、最多。取引先を変えるリスクの大きさから、問題を黙認せざるを得ない状況がうかがえる
▼ 約2割は「相談窓口を知らなかった」。政府の「きめ細やかな周知」に課題

【26】インボイス制度の開始以降において、
一方的な値下げや取引排除等に遭った方にお聞きします。
公正取引委員会等に申し立てたことはありますか。
【27】 前問で「申し立てをしなかった」と答えた方にお聞きします。 n=4,246
公正取引委員会等に申し立てをしなかった理由を教えてください。(複数回答可)

【 代表的なコメント 】

★ 兼業で働いていた某出版社で、『登録するようにお願いし、登録しない場合は明言を避けつつ値引き交渉をするように』と指導をしていた漫画編集部を見たことがあります。『結局は力の強い企業側が圧力をかけるやり方はいくらでもあるんじゃないか』と不信感を募らせました。(東京都墨田区/20代/クリエイター/フリーランス・個人事業主,会社員(非正規雇用)/200万円以上~400万円未満/免税事業者)

★ 取引先2社から一方的に値下げされ、収入が大きく減った。公正取引委員
会に連絡したが、対応してもらえなかった。また、変更なしで継続してくれている会社からも、特例が終了したら取引がどうなるかわからないと言われている。このままでは収入が足りず、廃業するしかなくなるかもしれない。
(京都府京都市/30代/クリエイター/フリーランス・個人事業主/200万円以上~400万円未満/免税事業者)

公的支援

▼ 9割がIT導入補助金や相談窓口等の公的支援を使用せず
▼「煩雑で使いにくい」「根本的な解決にならない」「制度の対象外」といった声が多数見受けられ、「相談窓口の存在を知らなかった」というコメントもあり、多くの事業者にとって公的サービスが問題を解決する選択肢になっていない

【31】以下の、公的支援を受けたことがある方は、チェックを入れてください(複数回答可) n=10,538

【 代表的なコメント 】

★ コールセンターに聞いても公正取引委員会に聞いても『よく相談してください』しか言われなかったのでもう利用する気にもならない。[インボイスコールセンター、公正取引委員会の相談窓口を利用](東京都豊島区/40代/クリエイター, サービス業/フリーランス・個人事業主, 会社員(正規雇用)/1000万円以上~2000万円未満/免税事業者)

★ 一過性のものは解決にならない。[小規模事業者持続化補助金(インボイス枠)を利用](東京都中央区/60代/サービス業/フリーランス・個人事業主/400万円以上~600万円未満/免税事業者)

★ 個人経営に近い小さな法人に対してはどちらも全く役に立たない。[インボイスコールセンター、下請けかけこみ寺相談窓口を利用](東京都品川区/50代/情報サービス/フリーランス・個人事業主/600万円以上~800万円未満/インボイス制度を機に課税事業者になった)

今後の見通し

▼ 「2割特例」「8割控除」といった負担軽減措置等がなくなる(または引き下がる)26年10月以降の見通しについて、5割が「不安」《設問29》。負担軽減措置の延長を望む声が自由回答欄に多数見られた
▼ 約15%が「廃業・転職を視野に入れている」。業界別で割合が高かったのは、インフラを担う「運輸・通信業」「建築・土木・工業」「電気・ガス・熱供給・水道業」で、2割前後となっている《下記、右グラフ》

【29】2026年10月から、インボイス制度における経過措置等が変わります。
そこで、2026年10月以降の会社/事業の動向で、当てはまるものを教えてください。
【業種別】 「廃業・転職を視野に入れている」と答えた割合 n=10,538
※割合は各業種別に回答数を分母として算出

【 代表的なコメント 】

★ 下請け業者さんが厳しくて廃業に追い込まれている。今はうちの会社で
被ってあげれるが、2割が限界。下請けさんが廃業してしまうとうちも
困る。いつかは共倒れしてしまう。(兵庫県姫路市/40代/農林・水産・鉱業/経営者/1億円以上~/もともと課税事業者)

★ 社会保険料なども軒並み値上がりしている中で、今まで免除されていた消費税の納付が義務付けられたのに給料は今まで通りで、正直、家族を支えるのにも支障が出ている。せめて2割特例をそのまま継続させてほしい。(茨城県小美玉市/30代/クリエイター/フリーランス・個人事業主/400万円以上~600万円未満/インボイス制度を機に課税事業者になった)

★ とにかく手間ばかり増えている。公益社団法人なので仕訳が大変。シルバー人材センターなので会員の配分金には消費税が含まれているが会員には消費税を支払わせられないから、センターの消費税負担が倍増している。会員が就業すればするほど税額が増える悪循環。公益なので利益を出すことは出来ないのに。インボイスは不要です。(奈良県北葛城郡/50代/サービス業/会社員(正規雇用)/1億円以上~/もともと課税事業者)

★ 小さい島なので商店が数件しかないのに、インボイスの影響で1番大きい卸先がなくなり、農協のみの出荷になりました。個人でのやりとりがあるものの、地場産業を広めたくても数を増やせず、また他の農家さんと被った時に余り気味になってしまい、売り先に困っています。一方で、資材費や肥料などで税金を払っているので、インボイスでまたお金を取られるとなると、農家を続けていくことが難しくなります。小さなコミュニティを壊してしまうし、誰も幸せにならない制度だと思うので、これを早急にやめてほしいです。そして、消費税も廃止にしてほしいです。 (東京都小笠原村/50代/農林・水産・鉱業/経営者/~200万円未満/免税事業者)

★ 制度の学習、ソフトウェア導入、税理士費用が非常に負担。導入補助金が一部あるから大丈夫という事ではない。事務負担はタダではない。只でさえ人件費が高騰する中、納税額以上に負担がある。税額負担が増えた分、依頼主に価格転嫁が出来る訳では無い。時限的に軽減措置をしているから大丈夫という理屈も理解が出来ない。現場の実体はそんなに甘くはない。軽減措置が無くなる時には、当然廃業が視野に入る。 (東京都新宿区/40代/クリエイター/フリーランス・個人事業主/400万円以上~600万円未満/インボイス制度を機に課税事業者になった)

総評

当会は2024年度の確定申告に合わせ、適格請求書等保存方式(以降、インボイス制度)の実態調査を行った。本調査の目的は、2023年10月のインボイス制度開始以降、消費税の課税期間がはじめて1年間となった2024年度における事業者等の影響を詳らかにすることである。加えて、政府がこれまで答弁してきた、インボイス制度によって引き起こされる消費税負担や事務コストを軽減するための「税制上の特例措置や補助金の拡充」、取引先からの不当な扱いを防止するための「取引環境の整備」が商取引の現場で機能しているかを明らかにすることもねらいとした。

本調査には、1万人超が回答を寄せた。前回の同調査から3000人増加し、問題意識の強さが見て取れる。年代では40代、50代が6割を占めており、就職氷河期世代にインボイスによる困難も突きつけられたかたちだ。インボイス制度開始後はじめて課税期間が1年となった今回、課税事業者の9割超が消費税に強い負担を感じていることがわかった。これは、インボイス登録事業者の約8割が消費税負担・事務コストを価格に転嫁できていないことが最大要因と考えられる。特に、制度を機に課税事業者に転じて2割特例を利用した小規模事業者では、前年度比で数倍から10倍前後まで納税額が跳ね上がっていた。
中小企業庁による価格転嫁の調査(フォローアップ調査結果  2024年9月 )では、「4次請け以上の階層においては、全額転嫁できた企業の割合は1割程度にとどまり、全く転嫁できなかった又は減額された企業は、4割近く(36.0%)に上る」と、政府も価格転嫁の難しさを認めているが、8割超がフリーランス・個人事業主、年間売上200万円以上~400万円未満がボリュームゾーンであった当会の調査では、下請構造の最下層に位置する事業者が多いと見られ、全額を価格転嫁できた登録事業者は5%に満たなかった。
インボイス制度によって新たに生じた消費税や事務コストを「価格に転嫁
したくてもできなかった」と回答した人を事業規模別に見ると、200万円以上1000万円未満でそれぞれ5割を超えている一方、1000万円以上の事業者でも3~4割が価格転嫁できていない。業種別に見て突出していたのは、「運輸・通信業」「電気・ガス・熱供給・水道業」で、それぞれ約6割が価格転嫁できていなかった。
結果、インボイス登録事業者の4割超が消費税等の支払いを「所得や
貯蓄」から捻出し、「借金」をして支払った登録事業者は1割超に上った。
消費税は、売値に転嫁できなければ事業者自身が身を削って払うより他
なく、「預かったものを納める」性質の税金ではないことがデータから示さ
れたかたちだ。
例えば、2割特例を使った年間売上330万円のフリーランスデザイナーの場合、制度開始前には0円だった消費税が、2023年度は1万5000円(課税期間3ヶ月分)、2024年度には6万円、そして、2割特例が終了する26年10月以降、納税額は15万円になることが予想される(簡易課税第5種の場合)。しかし、「6万円」の転嫁が十分にできていない現状、その2倍以上の消費税を残り1年半の間に全額転嫁できる財務体質を構築することは不可能と言わざるを得ない。
そこで重要となるのが「価格交渉」だが、インボイス制度を機に価格交渉を行った登録事業者は2割に過ぎず、取引先との圧倒的な力関係の差や、決められた予算内で取引価格が決まる商慣習等、交渉のテーブルにつくことすら難しい現場の実態が多数、報告されている。価格転嫁は、商取引の“強者側”にしか許されない。人手不足が問題になっている建設業の経営者からは、「今は軽減措置でなんとか耐えしのいでいるが、これから先こちら側で全てを背負うことが不可能なので心労が限界」という声があり、免税事業者に発注する企業側が消費税負担を負っていることがわかる。「下請けと共倒れしてしまう」と危機を訴える声もあり、消費税の押し付け合いは負担軽減措置期間ですでに限界に迫っている。

消費税の負担のみならず、インボイス制度では度々、煩雑な経理業務が問題視されてきた。制度開始後、経理業務での時間的負担を感じている者は9割近くに及び、6割が経理ソフトの導入や税理士への顧問料などで金銭的コストも増加していることがわかった。また、具体的に大変だった点をたずねると、「2割特例や8割控除、簡易課税といった制度の理解」が最多となっており、制度開始から1年半が経った現在も理解に苦しむほど複雑な税制となっていることもわかる。「増税分を誰が負うのか」という押し付け合いに加え、その徴税コストまでもが民間に丸投げされ、生産性が大きく毀損されている。

免税事業者では、取引先から明言のない“サイレント取引排除”が約4者に1者に起きていた。事業規模が大きいほど「変わらずに取引ができている」との回答が増えており、小規模事業者ほど「値引き」や「取引排除」といった悪影響を被りやすいと言える。
一方で、そのような被害に遭った事業者のうち、公正取引委員会に申し立てをした事業者は3%に満たなかった。理由は、「取引先との関係性を懸念」が6割を占めて圧倒的で、約2割は相談窓口の存在すら知らなかったと答えている。
IT導入補助金といった環境支援においても、約9割の事業者が公的支援を使用していないと回答。数少ない利用者からも、「一過性のものは解決にならない」「『よく相談してください』しか言われなかったので利用する気にならない」といった声が見られた。これらは、「インボイス制度の円滑な導入のため取引環境の整備を進める」という政府答弁と現場が乖離していることを端的に示しており、政府の“支援”は、当事者にとってインボイス問題解決の選択肢になっていないと言わざるを得ない。

今後の見通しについては、約65%の事業者が「不安」または「廃業・転職も視野に入れている」と回答。業界別に「廃業・転職も視野に入れている」と回答した割合を見ると、「運輸・通信業」「建築・土木・工業」「電気・ガス・熱供給・水道業」で2割前後となっている。インフラを担うこれらの産業に強い危機感があることは防災面でも問題であり、地方では建築業者の廃業が進んだ結果、災害時にすぐさま復興にあたる地元業者と災害協定が結べない自治体も出てきているという。

自由記入欄に寄せられた8000件超の声を分析すると、昨年の同調査と比較して圧倒的に「消費税」そのものへの言及が増え、「フリーランス潰しの税制」といった憤りの声が多数見られた。
そして、「死」について言及したコメントが50件以上確認されたことは、何より重く受け止めなければいけない。そのうちの半数以上は、インボイス制度を機に課税事業者になった者であった。「国から死ねと言われている気がする」という声も散見され、消費税・インボイス制度が個人の尊厳を踏みにじる異常な税制であると感じざるを得ない。

市民団体のアンケートに1万人もの声が集まり、そのうちの97.3%がインボイス制度に反対という結果が出た。この圧倒的な結果は、インボイス制度が生業・事業の障害となっていることの証左である。また、9割以上が投票時に政党・候補者のインボイスに対するスタンスを重視すると回答していることは、当事者にとっては制度施行後からが問題の始まりであり、廃止を含む抜本的な見直しがなされない限り、“政治的争点”であり続けると予想される。

政府は、「インボイスの円滑な実施には適切な価格転嫁が重要」と答弁しているが、負担軽減措置が講じられて1年半が経過した現状でも、価格転嫁ができていないことが1万人の声から明らかになった。当会は、2021年12月の活動開始から一貫してインボイス廃止を訴えるものであるが、本調査結果を踏まえ、多くの事業者の眼前の不安と困難をいち早く取り除く必要があると判断し、いわゆる「2割特例」「8割控除」を含むインボイス制度の「激変緩和措置」および「経過措置」の延長を求める。
また、公正取引委員会への申告が3%未満である現状、実効性ある監視・救済措置を講じることについても強く要請する。


〈調査概要〉
調査期間 : 2025年3月28日~4月14日
調査対象 : フリーランス・個人事業主、会社員、経営者など、インボイス制度の影響を受ける方
調査方法 : Webアンケートツールを用いたオンライン調査
有効回答数 : 10538件
調査主体 : インボイス制度を考えるフリーランスの会

調査協力 : 株式会社七夕研究所
データサイエンスと文系分野の研究を融合させた
独自のアプローチを行う、2023年7月7日設立の民間研究組織。
https://www.tanabata-inst.com/

※コメントに付随した( )内は、(事務所所在地/年代/業種/働き方/直近の年間売上/インボイス登録状況)
※本調査のグラフは小数点以下第2位を四捨五入しているため、必ずしも合計が100とはなりません。
※複数回答の質問を掛け合わせた集計では、多く回答した方の影響が偏らないよう、回答者1人分の重みを均等に調整しています。 このため、各項目の数値が小数点になる場合があります。

● 「インボイス制度を考えるフリーランスの会」について
2021年12月、オンライン署名の起ち上げを機に発足した市民グループ。フリーランスのライター、デザイナー、声優、俳優、経理に携わる会社員など、さまざまな立場の当事者が全国各地で活動する。
25年5月現在、オンライン署名は国内最多となる58万筆超。
ホームページ https://stopinvoice.org/
オンライン署名 https://chng.it/qxfBrFFnYh

本実態調査の分析資料及び、質問項目の一覧、当事者の声を集めた資料等のデジタルデータは、こちらのGoogleドライブに格納してございます。


調査結果の分析も、ぜひご覧ください。
  ↓  ↓  ↓



●寄付のお願い●
日本最多のオンライン署名数となったことからも、活動に対する大きな期待と責任を感じています。そして、活動も長期化しています。
私たちは10名ほどのメンバーで構成されたボランティアの有志チームで、メンバーの多くが仕事・子育て・介護に向き合うフリーランスや個人事業主、会社員です。
私たちの活動は、皆さんの声で成り立つものです。
一方で、皆さんの声を集め、政府やメディアに届ける活動には日々、経費が生じています。今回の調査の実施・報告書作成も手弁当で行っています。
【主な費用例】
22年10月 日比谷野音イベント 約80万円
23年5月 全国の自治体に陳情書送付 約30万円
23年6月 国会前イベント 約70万円
23年6月 外国特派員協会記者会見 約40万円
23年9月 官邸前イベント 約40万円
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