くるくるとイチゴ香りし緑雨かな [700字]
五月雨が止み、雲から漏れた光が並木道を揺らしていた。
そこへ市営バスがやってきた。
降りてきたのは二十歳前後の二人。
ひとりは女性。ケーキの箱を持っている。
ひとりは男性。黄色い花束を持っている。
二人は慣れた様子で道なりに歩き始めた。
「誕生日なのに、雨を降らせるとは、さすが高木」
「いくら高木でも、雨を降らせたりはしないでしょ。……いや、わかんないか。いちごを乗せたチョコレートケーキが好きなぐらいだから」
「そこは許せないのか」
「あたりまえでしょ。いちごのケーキといえばショートケーキでしょ。白いクリームの上に赤いツヤツヤいちご。それが最適解なの!」
「いや、おまえ、『意外といける』ってパクついてたでしょ」
「えー、なに? あんた高木派になったわけ? 合宿のときは、ドン引きしてたくせに」
「そりゃそうだろう。パジャマを裏返しのまま寝てるんだぞ。気持ち悪いだろ」
「たしかにそれは生理的に受け入れられない。……でもなぜか、文鳥には好かれてたんだよね」
「あいつの部屋にいったとき、放し飼いにされてたアレか。 窓も開いてるのに逃げないんだよな」
「高木は文鳥使い」
「さすがだ、高木」
大きな門をくぐり、奥まで続く石畳を二人は歩いた。
ポツポツと降り出した雨が、石畳の色を変えていく。
しばらく無言で歩いた二人は、高木の前で立ち止まった。
「誕生日、おめでとう!」
墓石の前にケーキと花束を置き、二人は手を合わせた。
緑雨に混じり、いちごの香りが三人を包み込んだ。
(了)
俳句の入門書を読んでいます。
タイトルに意味なくその影響がでています。
こちらの企画に参加させていただきました。
■セリフ
「おめでとう!」
■三題
・いちご
・パジャマ
・文鳥
投稿締切(任意):2026年5月28日(木)23:59
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