花たびそうや号は華やかに北海道の最果てへ
春の道北を急行列車とともに満喫、花たびそうや号の乗車記です
鈍行とも特急とも違う車内の様子や、駅でのおもてなしの雰囲気をお届け。
ようこそ春の道北へ
旅の始点は旭川駅。北海道の中心付近に位置し、道北と道東の玄関口となる駅です。
2011年開業の4代目駅舎は天井が高く開放的。北海道の木材が使用された内装は温かみがあり、ベンチも多く利用者の憩いの場になっています。
入線
列車の入線時刻は9時52分、少し早めにホームに上がります。
3番線のホームには行き交う乗客に見送る人、写真を撮る人、テレビの取材や横断幕を持った駅員などで賑わっていました。





甲高いタイフォンが響き、がらがらと音を立てながら発車します。
たくさんのお見送りの旗振りに、車内から手を振り返します。
乗車中の列車は、例年5月のゴールデンウィーク後の土日に運行される花たびそうや号。旭川と北海道のてっぺんの稚内を二日に分けて往復する観光列車です。
必要なのは乗車券と急行券。
乗車券は必要な区間分を購入するほかに、新千歳空港駅で買える「きた北海道フリーパス」もおすすめ。道北エリアが3日間乗り放題でとてもお得です。
注意が必要なのが指定席急行券。人気の列車なので指定席を確保するのはひと工夫必要になります。発売日の10時ぴったりに駅窓口で頼むか、旅行会社のツアーに申し込む方法もあります。
車内の様子
高架の旭川駅を出て少しすると、新旭川駅を通過。東の網走へ向かう石北本線と別れ、北を目指します。

網棚の荷物や窓際のお茶などで雑多な様子は、長距離列車の趣
1・4号車は昔ながらのボックス席。4人が足を付き合わせるスタイルはかつての急行列車のようです。昭和生まれの車両は旅の雰囲気たっぷり。
特に宗谷色の4号車は、記念品の売店があり人の往来も多かったです。控えめな照明と合わせて少しディープな感じがしました。
トイレは和式で石鹸も完備。

吊り革には花飾り
手前のロングシートは自由席
2・3号車は二人席。北海道の普通列車でも使われる車両です。トイレは洋式。どちらかというと明るくも落ち着いた空気。
どの号車もロングシートの部分は自由席なので、そこでくつろぐことができます。テーブルもありお弁当を食べるときにはありがたい設備です。(一回15分程度での利用のお願いはあります)
また窓が開く車両で、乗客同士外と車内から窓越しに会話したり、外から写真を撮ってもらったりと開放的な感じです。

出発の時の賑やかな車内は少し落ち着き、ボックス席のグループや相席の人同士、あるいは一人一人の時間が流れています。
田園風景と住宅が並ぶ車窓はまだまだ見慣れた景色。
案内の方から旅のしおりが配られました。
車内案内やこれから停まる駅と時刻、沿線の魅力が詰まったしおり。
これ美味しそうだとか、このマスコットなんだろう?なんて会話は、旅を一層ワクワクさせてくれます。


旅の合間にちょうど楽しめます
駅でのおもてなし
花たびそうや号の運行日には、駅で臨時の売店やマスコット、地域ごとの小さなイベントが開かれたりします。5つの途中駅とともに終点の稚内駅までの道のりをお送りします。
比布駅 〜ピピカフェ
最初の停車駅は上川盆地の端に位置する比布駅。
到着を知らせる放送が流れると、乗客たちはぞろぞろと通路に列を作り始め、私もそれに混じります。


大賑わいのカフェではパンやお菓子のほかキハ丼(キノコハンバーグ丼)の限定お弁当もありました。
いちごが特産のようで、いちごのスイーツやマスコットも。
他にも様々な物産が並び道の駅のようでした。


乗務員が手持ちのベルを鳴らしながらホームを歩き、発車を知らせます。
20分の停車時間は気づけば終わっていて、ホーム上のたくさんのお手振り・旗振りの中、急行列車は駅を後にします。
士別駅 〜武士とレトロバス
1時間ほどで峠を越えて、少しすると列車は士別駅に到着。
この日、外は雨模様でしたが、それでもほとんどの乗客が外に出ていました。ホーム上の出店で買い物、跨線橋から列車の写真を撮ったり、マスコットと記念撮影も。思い思い駅での時間を過ごしていました。


未だ現役で使われています

自販機でホットコーヒーを買い、比布駅のパウンドケーキと列車内でゆっくり楽しみました。
停車時間が長いので、焦らずに好みなものを選べるのもうれしいですね。
美深駅 〜駅弁・鉄分豊富
列車は田園風景が広がる名寄盆地を駆け抜けると、赤い煉瓦の駅舎が目をひく美深駅へ。


ここでは珍しい切符(補充券)が買えるとのことで窓口には列が。また鉄道グッズも多数販売されていたり、2階にはかつての美幸線の資料室もあり、見るものは多かったです。
時刻はお昼時。
花たびそうや号は6時間半の乗車時間。途中駅での軽食販売のほかに、ネットで事前に予約すると駅でお弁当を受け取ることができます。
今回はここ美深町にあるご飯やノンノさんのお弁当をいただきました。



駅間風景
美深駅を13:03発車、距離も時間もおおむね中間地点です。
車窓は平地が減り、線路は天塩川に寄り添って先へ続きます。
初野、恩根内、そして豊清水信号場での列車交換。ここ数年で廃駅となったこれらの駅たちのことも、車内放送が教えてくれます。


最近ジェラート屋さんができまして、そば味がおすすめです
音威子府村に入ると、まだ現役の天塩川温泉、咲来、そして音威子府駅を通過していきます。
音威子府は帰りの上り列車で停車。行きと帰りで停車駅が異なるため、それぞれ違ったおもてなしが用意されています。

新緑と雪が残る山に雪国の春を感じました。

天塩中川駅 〜お祭り
特急列車も止まる駅ですが、普段は一日の平均利用者が10人以下とされています。
でも今日は特別。



乗車中に温かいものが食べれるのはうれしいです

「さぁなんだろうねぇ、ちょっとこれなんて名前?」
となんだか嬉しそうに他の方に尋ねていました

物珍しそうに、でも手を振り返す特急の乗客が印象深かったです
イベントというよりは、お祭りのようで神輿が来ても違和感ない様相。小さな子供からご年配の方まで笑顔で、「駅があるって、鉄道っていいなぁ」とつらつらと思いました。
最北へ
この辺りから田園風景はなくなり、牧草地帯が広がります。天塩中川駅あたりが田んぼの北限と言われていて、この先は田舎のローカル線というよりは何もない風景。
いよいよ最果てといった車窓です。
物置の秘境駅の糠南、そしてわずか二月前に廃駅になったばかりの雄信内と南幌延。
並走する車や撮影地の三脚たち、廃駅の駅前から手を振る人の姿の傍を通り過ぎながらレールは北へ続きます。



幌延駅 〜トナカイ
幌延は、アイヌ語で「大平原」を意味する言葉から転化した地名。またサロベツ原野やトナカイ牧場が有名です。
特産のワインやトナカイのソーセージなど、まさにここでしか食べれないものが並んでいました。


景色は同じでも、今日の宗谷本線は初めてのことばかりで刺激的です
幌延駅を出て、景色は牧場に牛、沼や原野が広がる丘陵地帯が続きます。ひとしきりイベントを終え後は終点へ走るだけ。



晴れていれば利尻富士も見えます
でもこの景色もすきです
日常離れした風景を眺めながら、ふとこれまでのことを思い返します。
遠いところに来たなぁとぼんやり思いながら、開いた窓から少し顔を覗かせていました。
終着
丘陵地帯が途切れると、市街地が現れます。
終点を知らせるオルゴールが車内に鳴り、高架の上から港町を眺めると、列車は日本で一番北の駅、稚内に到着しました。



長旅も目的地について、一息。
乗客は駅で待ち合わせたり、列車を撮影したり。そのうち各々がその日の居場所へと散って行きます。
駅近くのホテルで泊まる人。すぐの特急で折り返して旭川に帰る人。利尻島に渡ったり、少し線路を戻って、最北の温泉街 豊臣温泉へ行かれる方も。
駅の近くには夜景も望める稚内公園や、有名な防波堤ドームもあります。
6時間半の時間はあっという間に過ぎて、まだ夢を見ているような感覚が残っていました。駅では暖かく迎えられ、色々な食を味わえて、車窓からは北海道らしさを感じることができました。とても楽しくて、また乗りたいと思える列車でした。
復路の花たびそうやのおもてなし。それと入りきらなかった要素を詰めて後編も作る予定です。

乗車日:2025.5
稚内の夜と霧
おまけです。
今夜の宿は稚内駅徒歩5分、国民宿舎 氷雪荘。
和室の部屋と、3点ユニットバスの珍しい組み合わせ。青々した畳が気持ちよかったです。

外は既に暗くなり、ただ寝るにはまだ早い時間。とりあえずと荷物を置いて外へくりだします。

走り去る狐
撮る人間
人よりもたくさんの鹿とすれ違いました

実は二回目で、前回はお味噌汁の美味しさにびっくりしました
潮の風味で、その味噌と出汁の味が忘れられないです

いつからあるのでしょうかと訊くと
もうこのお店ができる前、40年以上前からあったわよ。と女将は笑って言いました

飲食店とスナックが集まる区画
いつか旅先でこんなお店に交じってみたいですね

ただただ楽しかったとしか言えないのがもどかしくて。

曖昧で幻想的な景色に居心地の良さを感じて、
それに最北の街で散歩している高揚感もあり
今は少し、このままでいいやと思ってしまうのでした。

たまたま通りかかったコンビニに、どこか運命を感じて、どうせならとお酒とおつまみ買って帰ることにしました。
稚内駅徒歩5分のセイコーマート、稚内中央店は05:00~23:00の営業。駅近のホテルや、稚内の始発列車に乗るならおさえておくと安心です。


