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【閑古鳥雑貨店のプク】確定申告に追われる夜、猫は領収書の上で寝ている|女店主の二月


今月は個人事業主にとって、確定申告の季節です。
青色申告の書類と領収書を机に広げたまま、夜だけが静かに深くなっていきます。

そしてその上で、なぜか猫は、いちばん大事な紙を選んで寝るのです。




二月の終わり。

レジ横の机に、領収書が山になっている。

白い紙。
白い封筒。
白い画面。

白ばかりなのに、心はどこか黒い。

「……こんなに経費あった?」

誰に聞くでもなく、つぶやく。

答えてくれる人はいない。
いるのは、テラスのガラス越しに丸くなったプクだけだ。




今日も店のドアベルは三回しか鳴っていない。

売上は、正直だ。
数字は、もっと正直だ。

ノートパソコンの青い光が、店の棚を照らす。
木のブローチも、絵本も、ガラスの花瓶も、
どこか申し訳なさそうに並んでいる。

「ごめんね、売ってあげられなくて」

いや、違う。
“あげる”じゃない。
売れなかっただけだ。





プクがのそのそ起き上がる。

伸びをして、
しっぽを立てて、
ゆっくりこちらへ歩いてくる。

そして。

領収書の上に、どすん。

「ああああああ」

仕分け済みと未仕分けが、混ざる。

プクは気にしない。
まるで言っているみたいだ。

――数字より、撫でろ。

「今それどころじゃないの」

そう言いながら、結局撫でる。

やわらかい。

数字は冷たい。
毛は、あたたかい。





今年は思ったより利益が出ていない。
けれど赤字でもない。
なんとも言えない位置に、きれいに着地している。

「がんばった、ってことでいいのかな」

プクは、喉を鳴らす。

それを肯定と受け取ることにする。





深夜一時。
商店街の街灯が、ひとつ消えた。

パソコンの画面に、送信完了の文字。

ふう、と息を吐く。

達成感というより、
肩から力が抜ける感じ。

プクは、いつの間にか私の椅子の足に寄りかかっている。

数字の一年は、これで終わり。

けれど、
店の一年は、また明日から始まる。

「来年は、もう少し笑って出せるといいね」

返事はない。

ただ、しっぽが一度、床を叩いた。

それで充分だと思う。





個人事業主の二月は、確定申告で気持ちが荒れがちですが、
せめて猫のトイレまわりだけは整えておきたいと思っています。



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※商用利用可能なフリー素材の画像、イラストを使用しています。


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