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児童の誘拐には「消費者」がいる / 「サウンド・オブ・フリーダム」

21世紀になった頃から世界中で特に問題になっている事柄は、「児童の誘拐」とそれに伴う「人身売買」そして「児童ポルノ」である。ところが、このような犯罪は消費者がいるからこそ成立している。大多数の人びとの義憤に応えるように、メル・ギブソンなどの製作総指揮によって撮られた映画が、2023年の映画「サウンド・オブ・フリーダム」だ。児童の売買春の実態を描いた本作は全世界で大ヒットを記録し、「史上最も興行収入で成功したインディペンデント映画」の一つとして数えられている。ちなみに、約1500万ドルの製作費に対し、興行収入は2億5000万ドルを超える。
米国政治に詳しい方はお察しかもしれないが、本作の題材は QAnon の提唱する陰謀論と関係している。こうした児童の売買春の当事者は「実は世界を影で操る組織」の構成員である、という主張だ。本作の大ヒットの原因にはこうした政治の背景がある。なお、劇中では QAnon に言及されない。
また、メル・ギブソンが本作の製作を主導した理由はもちろん、「過激なカトリック」としての怒りだろう。いずれにせよ、現在も行われている児童の誘拐などの題材について、映画で世間に訴えるという有意義な作品である。
本作はアメリカの国土安全保障省のエージェントだったティム・バラードという男の経験に基づくフィクションだ。児童ポルノの流通を捜査していた主人公ティム(ジム・カヴィーゼル)がホンジュラスで誘拐された児童のことを知り、コロンビアまで行って現地の当局およびエージェントたちと協力しながら、女児の奪還を目指すーー、という作品だ。シンプルな筋書きゆえに、児童の売買春という題材だけに集中して鑑賞できる。脚本も撮影も実にヘタクソな映画だが、本作は問題を提起することが全てなので、別に構わない。
児童ポルノは犯罪であり、またどう考えても精神の疾患である。昨年には日本サッカー協会の影山雅永技術委員長(当時)がパリ行きの機内で児童ポルノを閲覧して現地で逮捕され有罪となり、技術委員長の職を解任されている。自己責任と言うべき年齢にも達していない児童の性を搾取するという所業は、僕に言わせればキチガイ沙汰である。厳罰に処されて然るべきだ。ところが、このような人物が決して少なくないからこそ、つまり消費されるからこそ、児童が誘拐されるという事件が後を絶たない。そもそも、ジャニー喜多川の事案は明白に性犯罪であったはずだ。
このことは、本作の配給に関する一件にも現れている。
本作は2018年に撮影を終了しており、公開するだけの状態になっていた。20世紀フォックスの子会社が配給権を得ていたものの、ウォルト・ディズニー社が20世紀フォックスを買収したところ、本作は「お蔵入り」にされた。映画の製作者たちは本作の配給権をスタジオから買い戻し、ある製作会社がクラウドファンディングによって本作の世界配給と宣伝の費用を支出し、2023年にようやく公開することができた。
なぜ、ディズニー社は本作をお蔵入りにしたのだろう。
公開されると「史上最も興行収入で成功したインディペンデント映画」になったことは皮肉である。

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