"○○以外"の考えを排除し始めたら「末期症状」
当たり前の話ですが、自分の考え方は所属する組織の環境に強い影響を受けます。
また多くの場合、人は自分のキャリアを今の仕事の延長線上で考えがちです。
もちろんこれが間違っているとかおかしいというわけではありません。ただ、自分のキャリアを今の仕事の延長線上だけに限定してしまうとどうしても選択肢が少なくなり、可能性を狭めてしまいます。
また、自分の所属組織のメンバーだけをロールモデルとしてしまうのも、価値観の偏りにつながります。自分の組織は「正しいことをしている」「世の中を良くする仕事をしている」と信じることは素晴らしいことですが、グローバルな舞台で活躍を求められていたり、自分のキャリアアップを考えるのであれば、常に視点は高く持っておかなければなりません。
自分が仕事をしている世界は、意外と狭いものです。
まさに、「井の中の蛙、大海を知らず」の典型のまま過ごしていくビジネスマンも多いと言います。世界規模のビジネスをしているとしても、視点が自分の活動範囲に基づくものに限定されていれば個人のキャリアアップにはつながりにくくなります。
そのうえ日本企業ではいまだに1つの会社に長く勤め続ける方が一般的なので、残念ながら「分野」や「スキル」を極めるよりも「その会社だけのスペシャリスト」になってしまいがちです。
そうやって形作られたキャリアは、"汎用性があるかどうかが不明確"です。
市場のニーズが底冷えした時、つぶしの利かない人材あるいは組織が出来上がってしまい、企業としては大きな不良在庫を抱えることになってしまうわけです。
営業や経理、人事などは汎用的なスキルといえそうですが、その会社独自のルールに最適化されすぎている場合には他の会社や組織で活躍できるとは限りません。
たとえば、蔓延る悪慣の中に
ベンダーロックイン
と言うものがありますが、これも日本固有の視野が狭い手法の1つです。ベンダーロックインとは「ある特定のメーカーや販売会社がユーザーを自社製品で囲い込むこと」です。なによりも圧倒的にお客さまに嫌われますので、止めておいた方が良いでしょう。
囲い込む側であるベンダー側の論理からみた時に「なぜ囲い込むのか?」というと、「自社の顧客が競合他社に奪われないように参入障壁を高めたいから」です。我が社でなければいけない理由が強ければ強いほど顧客は競合他社に移ることが難しくなります。
航空会社のマイレージはその典型例で、日本航空でマイレージが溜まっていてそのマイレージを使ってクラスアップグレードができ、その旅行で更にマイレージが貯まると全日空に乗り換える理由が見つけづらくなります。
次に、ユーザー側の論理から見た時に「なぜ囲い込まれたいのか?」というと、「誰もがちょっとした束縛が好きだから」…ではなく
「高いスイッチングコストを払いたくないから」
です。何かしらの理由で初めて選択したベンダーと長い付き合いをしていると、細かいことを言わなくても相互理解が進むので、長い付き合いをしているベンダーの方が楽です。「多少高いかな?」と思ったとしても便宜的な相見積もりを他ベンダーから取り、それを既存ベンダーに見せて安くさせて、既存ベンダーと付き合い続けます。
違うベンダーに乗り換えるということは、相当な努力と費用を要するのです。
ベンダーロックイン自体に良し悪しがあるわけではありません。ベンダーロックインは「自分自身によるガバナンス」を差し出す代わりに、「高くても安心」を手に入れていることを理解することが必要です。
ここで、50歳くらいで早期退職をした元大企業のある役職者のエピソードを例にしましょう。
初めての転職ということで、転職サービスを展開する企業が行っている「転職面接対策トレーニング」を受けに来た方でした。そこで行われた模擬面接で、面接官役の人が「では、あなたはどんな業務が得意ですか?」と質問しました。
すると、その元部長は「私は部長職ができます」と答えたそうです。
「部長職…それは具体的にどんなものか?」と面接官がさらに問いかけると、「えーっと、決裁を承認するとか…」というトンチンカンな回答が返ってきたそうです。
「部長ができます」という答えは以前から冗談のような話として聞いたことがありましたが、実際にあったのですから笑えません。
このようにスキルアップの意識を持たずに企業に長く勤めるとその会社でしか通用しない、つまり汎用性のない仕事しかできなくなるリスクがあるのです。
日本以外の先進国では日本よりはるかに人材の流動性が高いので、「その会社の仕事しかできない」状態にはなりにくいようです(失業率も高くなりがちですが)。
終身雇用が大前提にあった日本社会では「自分の所属組織を何よりも深く理解する」ことがキャリアにおいて最重要ミッションだったわけですが、現在のキャリアの多様化を考えればそれはリスクと言わざるを得ません。
また、長く同じ組織にいると価値観そのものにも影響が出てきて、場合によっては排他的な思考や行動が常態化する場合もあります。なによりも経営者がそれを社員に求めます。
しかも「会社」というレベルではなく「自分のいる部署」の範囲で価値観が固まってしまうと、さらに視野が狭くなります。そうなると社内での派閥争いや出世レースでの足の引っ張り合いに精を出し始めたりするわけです。
こうなると、"グローバルなビジネス"は到底できません。
自分が仕事を通じて価値を創造するより狭い世界にいる他人の言動を気にし始めたら、末期症状や危険信号と思っていいでしょう。仕事に集中できない状況である証拠ですし、それが常態化すると人材としての価値は徹底的に下がってしまいます。
さらに組織は、そう言った人材を要職に置きっぱなしにしていると、組織のレベルがその人材以上になることはなくどんどん衰退していってしまいます。
残念な人材にならないためには、とにかく「自分の市場価値を意識する」ことが大切です。転職を経験した人ならばわかるかと思いますが、自分自身の市場価値を客観的に測定し、かつそれを「自分が人事担当者だったとしたら?」という目線で見た場合に、採用したくなる価値が見いだせなければもう人的リソースとしての価値はないも同然です。
そうならないためにも、価値を意識するために効果的な方法の1つが「レジュメを書くこと」です。レジュメ…つまり職務経歴書は自分を売り込むための説明書になります。
レジュメは、正式には要約・概要のことを言います。
アジェンダと同義だと思っている人もいるかもしれませんが、全く別物です。
レジュメ :話の内容をまとめ、要約したもの。
アジェンダ:打合せや会議で話し合うべき議題。
です。もちろんウソを書くことは許されませんし、自分の組織内でしか通用しない表現も使えません。レジュメを書くことを通して、自分のキャリアを客観的に見ることができますし、言語化をすることができます。
転職をする前提でなくても、自己評価や自己分析、自己最適化を図る上でもレジュメを書くのはとても有効な手段です。自分自身のスキルの棚卸しにもなりますし、キャリア設計をする上でも重要な指標になります。
実のところ、私も定期的にレジュメを更新しています。
なんのことかって?それは
スキルシート
です。
みなさんもそれぞれの会社などで都度更新するように言われているはずですが、「更新しない本人」「更新させようとしない上司」になっていませんでしょうか。
とはいえ、伝統的な日本企業にずっといた人の中には、レジュメを書いたことがない人の方が多いようです。一度もレジュメを書いた経験がない人にとっては、そもそも書き方が思いつかないかもしれません。
本格的に自分の職歴や技能と向き合ってみてください。
もし目を背けたくなる人がいたら、その人は既に末期に片足を突っ込んでいるのかもしれません。
「自分にはどんな強みがあり、どこに価値があるのか」
「そもそもどこを伸ばしていかないと市場で受け入れられないのか」
自らや自らを取り巻く環境を客観的に知ることは極めて重要です。自分のキャリアに不安を少しでも感じるのなら、まずは自分のキャリアそのものを言葉で表現することが絶対条件です。
ちなみに「いい会社に勤めている」「高い役職に就いている」ことは、実際に転職するときにはあまり意味がありません。今や人材マーケットも目が肥えてきていますから、「会社の肩書抜きで勝負ができる人」を求めています。そのため「社内の論理だけで生きてきた人」は評価されにくくなってきているようです。
逆に企業名などのステータスで採用しようとしている節があるなら、その企業は選択しないほうがいいかもしれません。少なくとも面接官はあなた自身を見てはいませんし、そのような人を面接官に採用するような企業というわけですから、それがあなた自身の希望する環境かどうか今一度考えたほうがいいのではないでしょうか。
また企業名がステータスとして有効なのはその会社に在籍している間だけであって、そこから一歩でも外に出てしまったら全く意味がありません。
そもそも、採用する側にとっては「何をやってきたか?」という質問をすることはあっても、「何をやってきたか?」が直接的に採用に結び付かないことを知っています。
その回答から「この人はこれから何ができるのか?」を知るために聞いているものでしかありません。
みなさんは、今現在「自分自身には何ができるのか?」と問われた時に、
「〇〇だったらできる」
という言い方をすると思いますが、その際に「今まではこうやってきたから、そのやり方なら」と勝手に決めてつけていませんか。
過去の組織、過去のやり方に固執し、それ以外を認めなくなってきたらそれ以外の組織にいる人たちから見ると、どんどん不必要な人材になっている…と言うことを自覚した方が良いでしょう。
もちろん特殊な資格であったり、汎用的なスキルがすぐに証明できるのであれば十分武器になるのですが、「与えられたタスクをひたすらこなしていた」タイプの人にはなかなか厳しい世の中になりました。
これからの人材に必要なのは「外の(客観的な)ものさしで自分が測れること」に尽きます。社内だけのものさしや判断基準だけで生きていくのは、もはや時代遅れといっていいでしょう。
それでも、まだ組織のものさしに準じていればまだマシです。
どこのものとも思えない、その人個人の勝手なものさしや基準にのみ従っている人は、もう既に社会不適合者となっている可能性もあります。自分を客観的に測る基準を知っておかなければ、キャリアに対する不安はそのまま現実のものとなって表れてくることになります。
そのためには、どんどん外部の人と交流する機会を持つことが大事です。
視野を広げ、視座を高く維持することが必要となってきます。
今はSNSなどを見ればいくらでも外部で開かれている勉強会や交流会を知ることができます。会社帰りの数時間を、同僚との飲み会ではなくそのような勉強会に充てることで得られる体験は全く別次元になることは間違いありません。
そういう勉強会には無料のものが多く、さらに本来なら高額の登壇料が必要な人がぶらっと現れたりすることもあります。別にそこで名刺を配りまくる必要はありません。まずはどんな人がいるのか観察するだけでもいいでしょう。
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたサポートは、全額本noteへの執筆…記載活動、およびそのための情報収集活動に使わせていただきます。