マイカーをパンダにした日
私は車にあまり興味がない。
だから、前の車には16年乗った。
10年を過ぎた頃から、ディーラーの営業さんは会うたびに、
「そろそろ新しい車にしませんか?」
と声をかけてくれた。
でも私は、
「まだ大丈夫です。」
「気に入っているので。」
と言い続けた。
営業さんも、そのうち半分あきらめていたと思う。
ところが、ある日。
街で一台の軽自動車を見かけた。
それが、Honda N-ONEだった。
「あれ?」
「なんだか、パンダに似てる。」
その瞬間だった。
十年以上動かなかった私の心が動いた。
三日後には契約していた。
営業さんは驚いていた。
「まさか、本当に買ってくださるとは!」
その営業さんは、自分でもN-ONEに乗っているそうだ。
もっと高い車を勧めるのかと思っていたら、N-ONEの魅力を本気で語り始めた。
あとで聞いたら、N-ONEをたくさん販売したと誇らしそうに話していた。
なるほど。
この熱さなら、買ってしまう人もいるかもしれない。
私は、パンダらしさを追求したくなった。
メーカーには天井が黒いツートンカラーのオプションもある。
最初はそれにしようと思った。
すると営業さんが言った。
「天井より、サイドミラーだけ黒にした方がパンダっぽいですよ。」
その一言で決まった。
おかげで5万円くらい節約できた。
営業さんの売上は減ったかもしれないけれど、私のパンダ度は上がった。
ナンバーは4696。
「しろくろ」である。
軽自動車なので黄色いナンバープレートだけれど、寄附金付きだと白っぽいデザインにできるという。
さらにフレームを付けて黄色い縁を目立たなくした。
シートカバーも白黒のモノトーン。
誰にも気づかれないようなこだわりばかりである。
納車の日。
営業さんは車を見て、
「パンダ、かわいいですね。」
と言ってくれた。

そう。
営業さんも、ちゃんとパンダに見えていた。
たぶん、ほとんどの人は気づかない。
でも私は、駐車場に停めてあるパンダカーを見るたびに、一人でニヤニヤしている。
それで十分幸せなのである。
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