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ウミガメのスープのつくりかた


しゅへと申します。

趣味でウミガメのスープ(水平思考クイズ)の問題を作っています。そんな奴いるんだ!?

この記事ではウミガメのスープの作問に興味がある方向けに、みんなに「良い問題!」と言ってもらえる問題をたくさん作るためのメソッドをお伝えします。


【基本】
が具体的な作問メソッド、【すこし応用】が心がけるべきことの章なので、そこだけでも読んでもらえるとあなたにも良い問題が作れるようになります。


後半、【理論】【応用】はよりコアなウミガメラバーの方向けに問題類型の話とかをしています。前半だけでは物足りなかった方はぜひ。






【基本】これだけ!作問の4ステップ


最初に、もっとも作りやすいパターンの作問方法を示します。

とにかくまず1問作ってみたい明日までに10問作って組織に送らないと妹の命が危ない、といった方はひとまずここだけでも読んでくださればと思います。


① モチーフを決める


適当になにか単語を思い浮かべます。

ランダム単語ガチャなどもおすすめです。

ここでは例として「手相」という単語を使うことにします。



② 連想する


モチーフが決まったら、その単語から連想されることを考えてみます。

「手相」であれば、

・手のシワを見る ・手を握る
・性格を当てる ・未来を予言する
・夜の屋外にいる ・ショッピングモールにいる
・有名になると本を出す    など

こんな感じです。実際はそんなに数は要りません。



③ 言い方を変える


連想されたことのうち、言い方を変えることで別の状況にミスリードできないか考えます。

・手のシワを見る → 幾何学図形を見る → 数学?
・手を握る → アイドルの手を握る → 握手会?
・性格を当てる → 就活生の性格を当てる → 自己分析?

【言い方を変える】
  (A)具体化 手を握る → アイドルの手を握る
  (B)抽象化 手のシワ → 幾何学図形


ここでは「手を握る → アイドルの手を握る → 握手会?」を採用します。

するとこの時点で、

【問題】
男はアイドルの手を握った

【答え】
男はアイドルの手相を見て占いをした

という問題の原型が作れました。

問題文を見た回答者は、「握手会?」とミスリードされます。
そこから手相占いにたどり着く、というのが今回の問題のコアになります。



④ 不思議にする


③で作った原型に状況を足して、不思議にします
不思議な文にすることで、「どういうこと?知りたい!」という回答者のモチベーションを引き出します。

まずは、③でミスリードさせた状況の常識を考えます。

例では「手相(占い)」から、「手を握る → アイドルの手を握る → 握手会?」と「握手会」にミスリードさせました。

そこで、ミスリードさせた先の「握手会」の常識を考えます。

【握手会の常識】
・(CDを買うなどして)大金を使う
・1時間以上並んで自分の番を待つ
・緊張してアイドルとうまく話せない
・すぐに剥がされる  など

これも実際には数は要りません。
常識が思いついたら、その逆を③の問題文にくっつけて状況を不思議にしてみましょう。

例として、「大金を使って握手する」を使います。
これの逆なので、「握手して大金を手に入れる」にして、くっつけると、

【問題】
男はアイドルの手を握って大金を手に入れた。どういうこと?

【答え】
男は手相占い師。番組でアイドルを占い、結婚の時期を的中させたことで人気が爆発。相談依頼が殺到したのだ。

こんな感じで不思議な問題文ができあがります。
問題文だけを見たら、一見アイドルの握手会なのに、男が大金を得るなんて不思議ですね。

答えは問題文に合わせて作ります。問題文のミスリードを回収できるように話をでっち上げましょう。問題のコアはあくまでも③で作ったミスリードですから、それ以外の部分は筋が通ってさえいればOKです。




無事、ウミガメのスープが作れました。おつかれさまでした。





【すこし応用】「良い問題」を目指そう!


いま紹介したメソッドを使えば、質はどうあれ、問題の量産が可能です。
まずは出来とか気にせず、たくさん作ってみるのがおすすめです。


とはいえ、せっかくなら「良い問題」を作りたい!と思うかもしれませんね。ということでここからは、あなたの問題を「良い問題」へブラッシュアップするための3つの観点をお伝えします。

その前に、そもそも「良い問題とは何か?」について、最初に述べておきます。

⓪ 良いか悪いかは回答者が決める


いくらそれが自信作であっても、回答者が解き終わったあとに良い反応を返してくれなければ、良い問題ではありません。残念ですが。

設定が凝っている、常識の隙を見事についている、思いがけない質問が解き筋になっている……。ウミガメの問題をたくさん作っていると、私も「これは面白いぞ」と自画自賛したくなる問題が稀に出来上がります。

しかしいざそれを出題すると、思わぬところで停滞したり、答えに辿り着いても回答者をモヤモヤさせてしまったり、面白ポイントが伝わっていなかったりする。

つまり、ウミガメの問題は実際に出題してみないと、それが良い問題かはわかりません。言い方を変えれば、回答者が「良い問題!」と思ってくれるかどうかで決まるわけです。


ではどんな問題なら、回答者に「良い問題!」と思ってもらえるのでしょうか。

実は先ほど私が述べた、自画自賛したくなる問題、「設定が凝っている、常識の隙を見事についている、思いがけない質問が解き筋になっている」ような問題は、回答者にハマれば良い問題と言ってもらえやすいです。

それではなぜ、そういう要素を盛り込んだ問題でも、スベッてしまうことがあるのでしょうか。それは問題構成のどこかに、回答者が「気持ちよく解く」ことを阻害する要素が含まれているからです。



ウミガメのスープを含めた謎解き全般は、「ストレスとカタルシス」という要素を持っています。

答えがわからない問いを投げられ、あれこれ考えているとき、回答者はストレスを感じます。わからないことがストレス

そして答えがわかったときに、あー!というカタルシス(気持ちよさ)が返ってくる。これが謎解きの醍醐味です。



作問者はつい設定に凝ったり、回答者の裏をかくことに力を注ぎがちです。これはストレスとカタルシスで言えば、より重いストレスを回答者にかける方向性ですね。

それはそれで大事なことですが、ストレスはあくまでもカタルシスのためのもの。正解の瞬間に、もしストレスを一気にカタルシスへ変換することができなければ、得られたカタルシスよりストレスが勝り、問題への不満として現れます。


つまり、いかにしてストレスをかけるかと同じくらい、いやそれ以上に、ストレスをどうカタルシスに変換するかが重要です。そしてその変換を司るのが、納得感です。



前置きが長くなりました。まとめましょう。

ウミガメのスープの問題の良し悪しは、回答者が決めます。

回答者が「良い問題!」だと思ってくれるためには、謎解きの本質であるストレスとカタルシスを理解し、設計する必要があります。

特にストレスをカタルシスに変換する「納得感」を確保することが重要です。

そこで次に、問題の納得感を高めるための3つの観点を見ていきましょう。



① 答えのコアがハッキリしている


回答者は与えられた問題文から、用意された答えにたどり着こうとします。
とはいえ、出題者が用意した答えを回答者が細部まで再現し尽くすのは至難の業です。

そこで、実際に出題した際、問題のコアさえ見抜ければ正解にするという運用が非常に重要です。そうしないと意味もなく長引いてみんながイライラしてしまいます。

言い換えると、作問する段階で、この問題のコアはこれだ!と明確にしておくことが重要です。

【問題】
母は息子のために大好物を用意したが、息子はそれを食べず、母は息子に感心した。だが、後に息子から本当の理由を聞いた母は、「知らなかった」とひどく驚くことになった。どういうこと?

【答え】
息子一家が正月に実家へ帰省した。母は息子の好物であるエビフライを出したが、息子は手を付けず、欲しがる孫に譲った。母は息子の父親らしい振る舞いに感心した。しかし後になって、息子から「実は最近、エビのアレルギーになったんだ」と打ち明けられ、「知らなかった」と驚いたのだった。

筆者が作成


問題のコアとは、ここで引っ掛けてやろう・困らせてやろうと思ったポイントのことです。

この問題では、

・息子は大人になってからアレルギーになった
隠された登場人物(息子の子供=孫)がいる
・母は息子が子供(=孫)に好物を譲ったと勘違いした

これらが問題のコア、つまり「引っ掛けてやろう」というポイントです。

作問する際はこの「引っ掛けてやろう」という悪意が重要です。その悪意が問題のコアであり、それがくじかれた瞬間が「正解!」を言ってあげるタイミングとなります。

問題のコアがしっかり定まっているという条件は、つまり問題の引き際が決まっているということ。適切なタイミングで適切に「正解!」を出してあげて、回答者の脳を汁でびしゃびしゃにしてあげましょう。それが「良い問題!」という評価につながります。

これが逆に、出題者が細部までこだわり、たとえば先ほどの問題で「息子たちが正月に帰ってきた(お盆ではない)」「料理はエビフライ(エビチリではない)」というところまで当てさせようとすれば、必要以上に長引いて爽快感が損なわれてしまうでしょう。

どこで引っ掛けようとしているのか、つまり問題のコアが明確な問題ほど良い問題という評価に繋がりやすいのです。


② 動線が用意されている


①で悪意が重要だと書きましたが、絶対に解けないような理不尽な問題を作れという意味では当然ありません。

問題の良し悪しは回答者が判断します。「良い問題!」と思ってもらうには、答えに至るまでの道筋に無理がないことが重要です。

回答者がもしギブアップしてしまっても、「そう考えればよかったのか!」という納得感やサプライズがあれば良い問題だと言ってもらえます。

まずは、問題が作れたら、回答者が正解するまでの道筋を考えてみましょう。
スタートからゴールまで、どういう質問をしていけば答えに辿り着くのか、その最短ルートを想像してみるわけです。

【問題】
初対面の女の非常識な言動に、仕事中の男は耳を疑ったが、やがて女に同情した。何があった?

【答え】
バラエティ番組の収録中。新人の女性アイドルが、不自然なヤジや奇妙な動きで大暴れしていた。共演していた芸人の男が女の髪に隠れた耳に何か入っているのではと疑い、注視するとイヤモニが入っていた。男は、女がドッキリ企画で裏から無茶な指示をされて動いているのだと察し、同情したのだ。

筆者が作成

この問題は、

「耳を疑う」は慣用句として使われている?→NO
女の耳に何かが入っている?→YES
イヤホンが入っている?→YES
女は誰かに指示されている?→YES
バラエティ番組を収録している?→YES

といった質問で解けると想定しています。
もちろんこれは最短ルートですから、実際はもっと右往左往するはずです。

道筋を想定する際には、まず問題文のどこから攻めれば良いかの「取っ掛かり」が用意されているかが重要です。この例題では「耳を疑う」から崩すのが第一段階として設定されています。

問題の中には、どこから攻めていけばいいか取っ掛かりがない問題文になってしまっているものもあります。実は上の例題も、「耳を疑う」を見逃すと特徴的な文言がなく、回答者も「女と男は知り合い?」などあいまいな質問しかできずなかなか真相に辿り着けません。けっこうギリギリを攻めた問題文だったということですね。

まずここを質問してもらう、次にこう、でトドメがこう。そんなふうに動線が説明できるか?と自問してみてください。その動線に無理がなければ、回答者に深い納得感を与えることができます。

ちなみに最短ルートを考えると「簡単なのでは?」と不安になってしまうかもしれませんが、実際に出題すると回答者は思った以上に右往左往するので心配要りません。



③ 現実離れしていない


②で述べた動線の納得感とも通じますが、問題にファンタジーなどの現実離れした要素を入れるのは、問題の良し悪しという観点では危険だと言えます。

【問題】
男は1日おきに会社を休むが、上司からはとても評価されている。なぜ?

【答え】
その国のカレンダーは「月日火日水日木日金日」だから。

筆者が(不本意ながら)作成


架空の国の話だった、というオチです。
こういった、言わば人を喰ったような問題は、もちろんウミガメのスープとして成立はしているのですが、どうしても納得感が薄くなります。

「そう考えればよかったのか!」「どうしてそれを思いつかなかったんだ!」という、一種のアハ体験のようなものが納得感を引き出します。一方、回答者が「思いつく範疇の発想だった」と思えない問題は、答えを明かしてもどっちらけな空気になってしまうでしょう。

くり返しますが、決してそういう問題がウミガメのスープではないと言いたいのではありません。ただ、回答者がそれを良い問題と評価するかは(回答者の好みもあるとは言え)一般的には厳しくなるでしょう。

その意味では、現実的な話でも、特定のマニアックな知識に依存する問題もリスクがあります。同じく回答者が「思いつく範疇だった」と思ってもらえなくなるからです。

もちろん、どんな問題も何らかの知識に依存します。①の例題はアレルギーの知識、②の例題はバラエティ番組の知識がないと厳しいでしょう。とはいえ度合いの問題です。10人いて1人知ってるかどうかという知識は避けるべきでしょう。逆に、小中学校で習う知識なら遠慮なく出して良いと思います。




【理論】ウミガメのスープとは何か?


ここからはさらにマニアックな作問の話をしていきます。

実はウミガメのスープには、【基本】にて解説した作問テクニックでは生成できない問題の類型が存在します。ここでは、そもそもウミガメのスープはどのような問題を扱うのか、その問題の類型について掘り下げて考えます。

⓪ 原論


小説家の小川哲さんは『言語化のための小説思考』にて、ミステリというジャンルの小説について次のように述べています。

「情報量の差」が生まれる文章はミステリ的な構造になっていて、著者と読者のコミュニケーションそのものが「謎解き」になる、という性質を持つ(「ウミガメのスープ」は、この構造を使ったゲームだ)。重要なのは、謎が解けた瞬間(「情報量の差」が埋まった瞬間)にカタルシスを生むことができるかどうか、という点にある。

小川哲『言語化のための小説思考』p.52


このお話を前提にすると、ウミガメのスープとは『回答者が出題者とコミュニケーションすることで「情報量の差」を埋めてカタルシスを得るゲーム』と定義できます。

では「情報量の差」はどのように生まれるのでしょうか。ここでは大きく、①隠蔽と②改竄に分けて考えます。

①隠蔽とは、そこにあったものをそのまま隠してしまい、無かったことにしてしまう行為です。これは後で示す「物語復元型」という類型に対応します。

対して②改竄とは、そこにあったものを別のものにすり替えてごまかす行為です。これは「意味誤誘導型」という類型に対応します。

ウミガメのスープの出題者は、基本的に問題文において、状況を隠蔽するか改竄するかして、回答者との情報差を作り出します。では具体的にそれぞれの方法でどのような問題が作られるのかを見ていきましょう。



① 物語復元型(隠蔽)


この類型では、出題者はまとまりのある一連のストーリーのうち一部を切り出して問題文にし、回答者は示されていない隠されたストーリーを復元しようとします。

物語復元型で最も有名な問題は、「ウミガメのスープ」という問題です(以下、ゲーム名との混同を避けるため「原典」と呼びます)。

〜ウミガメのスープ 原典〜

【問題】
とある海の見えるレストランで、男は「ウミガメのスープ」を注文した。スープを一口飲んだ男は、店員にそれが本物の「ウミガメのスープ」であることを確認し、勘定を済ませて帰宅した後、自殺した。いったいなぜ?
【答え】
男はかつて数人の仲間と海で遭難した。食料はなく、仲間たちは生き延びるために力尽きて死んだ者の肉を食べ始めたが、男はかたくなに拒否していた。見かねた仲間の一人が、「これはウミガメのスープだから」と嘘をつき、男に人肉のスープを飲ませ、救助が来るまで生き延びさせた。男はレストランで飲んだ本物の「ウミガメのスープ」とかつて自分が飲んだスープの味が違うことから真相を悟り、絶望のあまり自ら命を絶った。

原典では、主人公が船で遭難して空腹に喘いだなどのストーリーが隠されており、言わばラストシーンだけが切り出されて「何があった?」と提示されます。

そして回答者は正しく物語を復元できた際に、「そういうストーリーだったのか!」というカタルシスを得るのです。

重要なのは、原典の問題文にミスリードが含まれていないという点です。問題文は、海の見えるレストランで起こったこと、そしてその後の顛末を、(自死の動機以外は)過不足なく伝えています。よって、モチーフのミスリードを起点にする【基本】の作り方では、この物語復元型の作問はできません。

ストーリーの一部を切り出して、徐々に全体像がわかっていくカタルシスは、王道のミステリ小説の手法と同じです。犯人は誰なのか?犯人の過去にいったい何があったのか?が少しずつ明かされる楽しみです。

①がミステリの王道であること、あるいは原典がこの類型に属するために、「ウミガメのスープの問題」とは物語復元型の問題を指すと考える人もいるでしょう。②の意味誤誘導型は邪道、あれはウミガメのスープではないという声はたびたび聞かれます。この点については後ほど私見を述べさせてください。


② 意味誤誘導型(改竄)


この類型では、問題文の中にミスリードを誘う要素が含まれていて、回答者はそれに引っ掛かることで擬似的な情報量の差に巻き込まれます。

「擬似的な」と言ったのは、少なくとも出題者の側からすると「十分に情報を提示している」と主張できなくもないからです。

【手相の問題】
男はアイドルの手を握って大金を手に入れた。どういうこと?
→「手相を見る」という行為を「手を握る」と表現しただけ

【耳の問題】
初対面の女の非常識な言動に、仕事中の男は耳を疑ったが、やがて女に同情した。何があった?
→「耳を疑う」とは「女の耳に何か入っているのではと疑う」という意味

もちろん出題者は「悪意」をもってこうした言い換えや説明不足を発生させるのですが、①物語復元型がストーリーの再現を試みるのと違い、②意味誤誘導型は回答者が自分の誤認識を正すことに主眼があります。それによって「そういう意味だったのか!」というカタルシスが得られます。

その点で、この②意味誤誘導型は「意味怖(意味がわかると怖い話)」の構造によく似ています。一見すると不自然ではない文の中に違和感となる要素を蒔き、認識を反転させて快感と共に恐怖させる。

現在のウミガメのスープは②意味誤誘導型が主流になりつつあるのも、「意味怖」のように短い時間でさっと楽しめるものとして受容されているからかもしれません。



どちらが本物のウミガメのスープか?


いま述べたように、①物語復元型と②意味誤誘導型では、「情報量の差」を生み出す方法と、回答者に与えるカタルシスが異なります。ウミガメのスープが大雑把に「情報量の差を埋めてカタルシスを得るゲーム」と括られているので、こうした方向性の違う2つの類型を含む形になっています。

原典が①物語復元型であることから「①こそが本物のウミガメのスープだ」と主張されるのは、②意味誤誘導型の作問を得意としている私からすると複雑な思いです。

しかしそうした主張が、もし「ウミガメのスープ=②意味誤誘導型」という一般的な誤解への反動なのであれば、私のこうした分類は有用ではないかと思います。

つまり、いまは②意味誤誘導型が流行っているけれども、①物語復元型という類型もあって、それぞれで特徴と魅力があるという認識を共有する

そして①物語復元型にじっくり時間をかけて取り組める場が広まれば、私はこの2つは共存しうるし、どちらが本物か?という問いも意味を失っていくのではないかと思います。



【応用】物語復元型のウミガメを作ろう!


というわけで、最後に物語復元型と私が呼ぶ問題類型の作問メソッドを考えていきます。

先ほど書いたように、私はそもそも意味誤誘導型の作問を得意としていて、物語復元型はあまり経験がありません。しかしこの2つに共通するテクニックは存在しますし、私なりに物語復元型を作るにはどうするかをがんばって書いていきます。

① 3段構成の物語を作って切り出す

物語復元型はとにもかくにも、まずは物語がなければいけません。一つの完成した、導入から結末までがあるショートショートを書くイメージです。

とはいえ、そこまで入り組んだものは必要ありません。
代わりに、「A→B→C」という3段で構成される物語を意識してみましょう。

それさえできれば、物語復元型の問題文は「Cのみ」ないし「B→C」または「A→C」で作ることができます。あとはこの3つのうち、問題として成立しそうな切り出し方を選定すれば良いわけです。


Bを抜いてA→Cを切り出すパターン


【問題】
男は自分が出演した映画を観て非難された。なぜ?

【答え】
男は「いまから〇〇観ます! 映画泥棒新しくなってる!?」とツイートしたところ、「はやくスマホの電源切れよ」と叩かれた。

筆者が作成

これは、
A:映画を観た
B:映画泥棒のツイートをした
C:非難された

Bを抜いて「A→C」を切り出した問題です。
用意する物語自体は、これくらい軽いものでも十分問題に使えます。


他にも例を出すと、

【問題】
女の未完成の作品が人々に賞賛された。なぜ?

【答え】
小説家である夫の妻は、夫の真似をして自らも小説を書いていたが、完成には程遠く行き詰まっていた。夫の死後、女は自分の未完成の作品を「夫の未完成草稿」として出版社に持ち込み、その作品は「死の淵で見た新境地」として数々の賞に輝いた。

筆者が作成

これは1つ前の問題よりも入り組んでいますが、
A:女は未完成の小説を持っていた
B:小説家の夫の死後、夫の未完成原稿として出版社に持ち込んだ
C:賞に輝いた

Cだけを切り出して「A→B」を復元させようとした問題です。
その際、Aの要素(未完成の小説)も一部問題文に入れていますが、そうしないと不思議な問題文にならないからです。


ちなみに原典も、

A:遭難した経験
B:レストランでウミガメのスープを食す
C:真相に気づいて自死する

の3段に整理でき、このうち「B→C」を切り出して「A」を復元させる問題でした。

特に有用なのが、「A→C」で切り出して「B」を復元させる問題です。因果関係の中継地点が抜けるので、不思議な状況が作りやすく、かつ回答者にヒントを与えやすくなります(AからもCからも攻められる)。


② 【すこし応用】はすべて当てはまる


私が【すこし応用】で述べた3つの要素、「答えのコア」「動線」「現実的」は物語復元型にも当てはまると思います。それどころか、物語復元型こそこの3つを注意深く点検する必要があると言えるでしょう。

物語復元型の強みでもあり弱点でもあるのは、回答者により深い思考を要求するという点です。単なる言い換えによる引っ掛けを正せば良い意味誤誘導型と違って、物語復元型は回答者自身が物語を紡いでいく必要があるからです。

そのおかげで解けたときのカタルシスは、1冊の小説を読んだ後のように深いものになるでしょう。一方で、そのカタルシスを準備するために、物語復元型は回答者へより大きなストレスを与えています。

「ストレスとカタルシス」は【すこし応用】でも触れました。ウミガメのスープのみならず謎解き全般に当てはまる原理です。これを無視した問題は、回答者をただイライラさせるものであり、そもそも何のためにその問題を作ったの?という疑問さえ生まれるでしょう。

「答えのコア」「動線」「現実的」は、問題が回答者によって解かれること、つまり「ストレスとカタルシス」という原理を理解したら自然に生まれる視点だと私は信じています。大きなストレスを与えるからこそ、確かな納得感を引き出せるように工夫しましょう。


③ 生成AIは物語復元型に向いている

生成AIにウミガメのスープの作問をさせると、2025年12月の時点でも「まだまだだなぁ」と感じるような状況です。しかしそれは意味誤誘導型においてであり、物語復元型に対しては、私はAIでも十分に対応できると考えています。

なぜなら、物語復元型は物語を切り出すことで謎を作る類型だからです。そして現時点でAIは、少なくとも「ちょっと面白いショートショート」を作ることなら十分可能です。

実際、私が物語復元型を作ろうとしたとき、参考にするかは別にしてまず生成AIに「現実の世界を舞台にした、星空を主題にしたショートショート」のように指定していくつかアイデアを募ります。

そしてその中で、「このアイデアは3段構成にして例えばBを抜いたら不思議な問題文になるぞ」と考えたりします。プロンプトを工夫すれば、その作業さえAIが代わりにやってくれるかもしれません。





【結語】忘れてください


ウミガメのスープは水平思考のゲームです。
そんなゲームに、ロジカルなメソッドなど存在しません。
自由に作ってください。そして私に解かせてください。

ここに書いたのは、ロジカルな思考の結果というより、私が経験的に得たうまくいくやり方でしかありません。1つでも参考になる内容があれば幸いです。しかし、最終的には、全て忘れてください。

なお、ウミガメのスープは作問しただけでは終わりません。

特に重要なのは、それを出題したときの「YES/NOの判定」、あるいは「ヒントの出し方」「正解判定のタイミング」です。これを間違えると、どれだけ素晴らしい問題でも一気に駄作判定されます。世知辛い。

初めて出題するぞ、という方のための記事も用意があります。
失敗したくない方はこちらもどうぞ。



ここまでお読みくださりありがとうございました。

それでは、また海の見えるレストランでお会いしましょう。










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