見出し画像

地下ビブリオの宴 '23 Winter







日本を代表する読書家が集い、

無理難題のシチュエーションに
最適な本を推薦する。


地下ビブリオの宴




地下ビブリオに魅せられた

狂気の活字中毒者、「毒書家」による宴が

2023年の大詰めに再び開催される………





実況:ベンジャミン・サキソフォーン・角栄


実況「地下ビブリオ、知性と感性がぶつかり合うまさに知的地下格闘技。あの宴がいま、再び開かれます。今回で11回目の開催となる地下ビブリオ、解説の美舞さん、どういったところが見どころになるでしょうか」


解説:美舞  舞美


解説「宴も10回を超えてきたところで、参加者の意識といいますか、だいぶこの地下ビブリオを理解してきているなという、レベルがどんどん上っていますよね。それぞれの戦い方といいますか、今回もどういったプレゼンになるのか、楽しみです」


実況「さぁでは、今回の地下ビブリオ、そのお題を発表致します」





解説「これはまた長い…」

実況「しかしお題としては割とシンプルな方でもありますかこれ」

解説「そうですねぇ、第9回でしたっけ、『自分はミック・ジャガーの生まれ変わりだと主張する駄菓子屋のジジイに、現実をわからせるための本』というお題もありましたから、それに比べるとだいぶ考えやすい」

実況「ただこれ、女性目線での、ということになりますでしょうか」

解説「女性視点ですね。今回の毒書家がどちらも男性ということなので、その辺の女性心理といいますか、あとはシチュエーションがかなり日常的で想像しやすいだけに、選択肢が幅広くて逆に考えづらいといったところもあるのかなと思います」



実況「それでは、本日の宴の主役、この無理難題に立ち向かう活字中毒者の入場です!」




毒書家1:yomHito


実況「Instagramフォロワー数、300万。TikTok総視聴数、1億。この男が面白いといった本は売れる。いま出版業界が最も注目する読書インフルエンサー! yomHito(よむひと)!!!」




毒書者2:中谷 進


実況「3歳で読んだ『白い巨塔』に感銘を受け、医者の道を志す。本は最高の処方箋、手術室にも東野圭吾を持ち込む男! 第3回、8回大会覇者、中谷 進!!」




実況「さぁ、まずはyomHitoさん。満を持して、宴初参戦となります。今の心境は」

yomHito「フォロワーの方たちからけっこうDMで、地下ビブリオ出てくれって声をもらってて、なので負けられないですね」

実況「今日の宴のために、なにか対策は準備されたのでしょうか」

yomHito「自分は普段から読んだ本をNotionにまとめて整理しているんですけど、さすがにここまで入り組んだお題だとなかなか選定が難しくて、最終的には、僕自身のカンで選びました」


実況「続いて、第3回、第8回の覇者、中谷さん。今回もユニフォーム、白衣での登場ですね」

中谷「あっ、まぁ、ええそうですね、ええ私は、はい」

実況「今回のお題について、印象はいかがですか」

中谷「んー、まぁ、はい、けっこう、何ていうんですかねその…、えぇ、難しい、いやうん、ちょっと、…ごめんなさい」




実況「いよいよ、地下ビブリオ、その幕が切って落とされます。ルールはシンプル。毒書家は1人ずつ、お題に合った本を1冊プレゼンしていただきます。制限時間は3分間。プレゼンは口頭のみ、資料の使用は禁止されています。判定は選ばれた読書家1000人による投票です。得票数の多いほうが勝者となります」


実況「それでは、先攻、yomHitoさんの地下ビブリオです」


yomHito「僕の選んだ本は、夕木春央さんの『方舟』です」



解説「これはちょっと意外ですね…、『方舟』はミステリ小説なので中谷さんの得意分野なのですが、yomHitoさんがあえてそこを狙ってきたということでしょうか」

実況「対戦相手の中谷さんにも動揺の顔が浮かんでいるように見えます。ではyomHitoさん、3分間でのプレゼンをお願いします。」



yomHito  プレゼン


今回のお題、正直かなり難しかったです。

まずいろんな恋愛小説を思い浮かべました。
しかし、元カレをその気にさせるというのが、果たして本1冊読んでもらうだけでできるのか?  答えはNOだと思います。そんな魔法みたいな本があるなら、1000万部くらいは売れるでしょうね。

僕はこの『方舟』で、読書そのもの以上に、読書体験を共有するという作戦を提案したいと考えました。同じ本を読んで、その本について語り合う。その時間を充実させることを考えたときに、『方舟』はうってつけです。

解説の美舞さんが仰った通り、『方舟』はミステリ小説です。

主人公は友人たちとレジャー中、アクシデントで地下シェルター施設に閉じ込められてしまいます。たまたまその場に居合わせた家族合わせて10人で脱出を試みますが、助かるためには、施設の仕掛けを使って1人が犠牲となり他の9人を逃がすしか方法がないとわかります。

いったい誰がその犠牲になるのか。そんな極限状態の中で、なんと主人公の友人が1人、何者かに殺されてしまいます。犯人はこの9人の中にいる。

主人公たちは、犯人を突き止めることを決心します。もちろん、その犯人に「犠牲」になってもらうために。

『方舟』を読み終えた人は、必ずその衝撃を他者と共有したくなります。語り合わずにはいられないのです。この『方舟』が共通項となり、話題が広がり、本が2人を再び繋げてくれるはずです。




実況「yomHitoさんの地下ビブリオ、どうお聞きになりましたか」

解説「本の内容で気を引くのではなくて、読書体験を共有して本で関係をつなげるっていうのが、読書インフルエンサーらしい発想だなと思います。『方舟』はもう、強烈ですから。2人にとって忘れられない本になるでしょうね」




実況「では続きまして、後攻、中谷進さんの地下ビブリオです」

中谷「えー、私の選んだ本は、木下龍也/鈴木晴香『荻窪メリーゴーランド』です」



実況「おっと、yomHitoさんから「やられた」という声が漏れましたね」

解説「いやぁ、これはまた…痺れますね。そう来たか、という」

実況「では中谷さん、3分間でのプレゼンをお願いします。」




中谷 進   プレゼン


私が紹介したこの『荻窪メリーゴーランド』はですね、短歌集なんですね。57577の、短歌です。

まぁあの、お題のね、最後に「元気だしなよ」って書いてあるでしょ。あんまり元気ないのかなって思うのでね。フラレたばっかりだし。しかも20代後半なら、仕事もね。忙しい盛りでしょう。あんまり分厚い本渡しても、しょうがないかなと思いまして。

短歌集ですからね、開いたら、ぱっと、目に入ってくるわけです。もちろん全部読んでもいいし、読まなくてもいい。でもなんか目に入ってくる短歌っていうのはね、きっとそのときに、あの、自分がほしいと思ってる言葉だったりするんでしょう。

木下さんと鈴木さんって2人が、恋愛をテーマにして短歌を作って、載ってるわけなんですがね。短歌っていっても、すごく親しみやすくてですね、


「おんぶして位置情報を重ね合いながらふわふわコンビニへゆく」


「無印で買うバスタオル 包み込むときには君のかたちに変わる」

日常の切り取り方ですね、うまいですよ。説明しすぎない、しすぎないから、こう、人それぞれ、いろいろ思い出すっていうかな。

お題の男性は、おそらく恋愛に対して、あまり思い出したくないこともね、あるんでしょうけれど、これをパラパラめくってたら、その嫌な思い出の奥にね、もっとすごく大切な思い出があることが、あの、思い出せるんじゃないかな。





実況「中谷さんの地下ビブリオ、いかがでしたか」

解説「まさか短歌集で来るとはっていう、そこの意外性もありつつ、しっかりお題に沿っているというか、真っ向勝負してますよね。元カレの心情に寄り添って、まさに「本は最高の処方箋」といったところで。お見事でした」



実況「さぁ、両者のプレゼンが終了しました。現在投票を集計中です。解説の美舞さん、あらためて2人の地下ビブリオ、どうご覧になりましたか」

解説「2人とも、最初に私が想像していたような本とは違う角度から来たので、そこはかなり意外でした。ただやはり、女性目線というところが、もう少し欲しかったかなという気もしています」

実況「そこはやはり、地下ビブリオの難しさというか、奥深さといったところでしょうか。ちなみに美舞さんなら、この本というのはありますか」

解説「そうですね…もし私がこういう状況なら、ちょっと元カレのことは試してみたくなりますね。10年ぶりだから、成長した部分とか変化した部分とか。あとは単純に、自分の好きなものを受け入れてくれるかとか。宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』とか渡しちゃうかもしれないです」

実況「なるほど、お題に入り込んで、という部分もあっても面白いですね。さぁ、投票がまとまったようです。第11回地下ビブリオ、果たしてどのような結果となったのでしょうか!  投票結果は、こちら!!」






実況「472対528!!  勝者、中谷 進!!!」

解説「いやぁ、やっぱり強かったですね、経験値の差も出たと思います」

実況「勝者の中谷さんには純金の図書カード(500円分)が送られます! 中谷さん、これで3勝目となりました」

中谷「いやぁ、最初にね、『方舟』と来たときはね、そんなのあり〜と思ったんですけどもね、いやほんとにね、素晴らしい作品ですし、『荻窪メリーゴーランド』も、ぜひみなさんにも読んでもらいたい、はい」


実況「地下ビブリオの宴、これにて閉幕です。無理難題に挑む狂気の毒書家たちの熱き戦い、次はどんなドラマを見せてくれるのか! またお会いしましょう!!」









地下ビブリオの宴

次回 「バールのような本」







※本稿はこちらの企画に「本」カテゴリとして参加しています。https://note.com/calm_avocet202/n/nb6c713b0bfd0

いいなと思ったら応援しよう!