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丸いものがあった。
世界には丸いものしかなかったから、世界の全てだった。生まれることも、なくなることもなく、ただ存在していた。
ある時、丸いものは思った。
「ないものがほしい」
しばらく考えて、思いついた。
「半分に分かれることにしよう」
半分になったら、ないものを半分、お互いに持つことになる。
世界は二つに分かれて、半月型のものが二つできた。左半分は痛みを感じた。初めての感覚だったから驚いて、右半分に聞いた。
「何かが起きた。つらい」
右半分は答えた。
「多分同じだ。つらい」
痛みは世界になかったものだった。でも今では両方が持っている。
二つはもっと自分にないものがほしいと思ったので、さらに分かれることにした。丸いものは、四つになった。また全員が同じ痛みを感じた。
もっと小さく分かれることにした。そうしたら誰かが持っていて、誰かが持っていないものができるかもしれない。分かれる時にはいつも痛みが伴ったが、分裂は続いた。
生まれた地点や、時間にズレが生まれたことで、少しずつ違いが生まれるようになった。
ある時、女と男という大きな違いが生まれた。
分裂は女のみから発生するようになった。違いが違いを生んで、世界は「なかったもの」で膨らみ続けた。
気づいた時には、丸いものはあまりにもたくさんになっていた。
「もう一度丸いものに戻ろう」
そう提案したものもあったが、別のものが反対した。丸いものは、もう二度と一つになることはできなかった。
分かれる時の痛みには「さびしさ」という名前が付けられた。
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