失敗した串には、全部理由がある
焼き鳥屋にとって、
失敗した串には全部理由がある。
偶然はない。
焼きすぎ。
生焼け。
焼きムラ。
塩の振りすぎ。
提供の遅れ。
全部理由がある。
一番ダメなのは、
焼きすぎだ。
焼き鳥は、
火が入ればいいわけじゃない。
水分を残す。
香りを残す。
食感を残す。
そのギリギリを狙っている。
焼きすぎた瞬間、
それは戻らない。
だから焼きすぎは失敗だ。
焦げも同じだ。
炭火だから焦げていいわけじゃない。
焦げた香りと、
焼きすぎた香りは違う。
職人はそこを見ている。
生焼けも失敗だ。
急ぎすぎた結果だ。
注文が重なった。
焦った。
確認が甘かった。
理由はある。
だが、お客さんには関係ない。
生焼けは生焼けだ。
焼きムラもある。
本数が増える。
手が回らなくなる。
本来動かすべき串が動かせない。
本来返すべき串が返せない。
するとムラになる。
これも理由がある。
塩もそうだ。
毎日違う。
湿度も違う。
気温も違う。
同じように振っても、
同じ結果にはならない。
だから毎日確認する。
それでも濃い日がある。
薄い日がある。
職人はそれを嫌う。
そして意外と多いのが、
炭が弱い。
火力不足だ。
焼けないわけではない。
だが時間がかかる。
提供が遅れる。
水分も抜ける。
香りも弱くなる。
良いことはない。
ただ、
本当に怖いのは失敗ではない。
妥協だ。
新人はよく言う。
これくらいでいいかな。
たぶん大丈夫かな。
少し焼きすぎたけど大丈夫かな。
少し塩が強いけど大丈夫かな。
その積み重ねが怖い。
一回なら問題ない。
だが常用化する。
それが基準になる。
それが文化になる。
僕は違う。
おかしいと思ったら捨てる。
廃棄する。
もったいない。
確かにもったいない。
だが、
出す方がもっともったいない。
僕らからすれば、
一日に数百本焼く中の一本かもしれない。
だが、
お客さんにとっては違う。
その一本が答えだ。
その一本で店を判断する。
その一本でまた来るか決める。
失敗した串には、
全部理由がある。
だが、
妥協には理由がない。
職人のレベルを決めるのは、
技術だけじゃない。
どこまで妥協しないかだ。
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