休ませる、という焼き方
焼き鳥は、焼いている時間だけが火入れじゃない。
休ませている時間も、
火入れだ。
お客さんから見ると、
職人はずっと焼いているように見える。
だが実際は違う。
焼いて。
休ませて。
また焼く。
その繰り返しだ。
なぜそんなことをするのか。
理由は単純だ。
表面と中心の温度差をなくすため。
強火で焼くと、
表面から熱が入る。
当然だ。
炭に近いのは表面だからだ。
すると表面は熱い。
だが中心はまだ冷たい。
例えば表面が80℃でも、中心は40℃。
そんな状態が起こる。
そのまま焼き続けるとどうなるか。
中心に火が入る前に、表面が焼けすぎる。
水分が抜ける。
硬くなる。
食感が悪くなる。
だから休ませる。
休ませると、表面の熱が中心へ移動する。
表面は少し温度が下がる。
中心は少し温度が上がる。
温度差が小さくなる。
その状態で再び焼く。
すると均一に火が入る。
焼き鳥は、ただ焼けばいいわけではない。
熱を移動させながら焼いている。
特に休ませることが多いのは、ねぎまや手羽先だ。
焼き上がるまでに時間がかかる。
そして水分を残したい。
そういう部位ほど、休ませる意味が大きい。
休ませずに焼き続ければ、外側だけが先に仕上がる。
中心に火を入れようとすると、表面は焼きすぎになる。
結果として食感が悪くなる。
職人が嫌うのは、生焼けだけじゃない。
焼きムラだ。
だから休ませる。
では、いつ休ませるのか。
難しい。
感覚だ。
焼き上がる中盤。
串を見ながら判断する。
何分と決まっているわけじゃない。
炭の状態。
焼き台の温度。
肉の大きさ。
全部が違うからだ。
だから感覚になる。
ただ、その感覚も適当ではない。
何年も焼き続けた結果の感覚だ。
焼き鳥は、火の上に置いている時間だけが技術ではない。
何もしないように見える時間にも意味がある。
休ませる。
それもまた、焼き方のひとつだ。
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