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NovelJam2025 デザインノート③ 東京「チーム遠隔共同体」のデザイン

実質40数時間程度で(睡眠時間含む)小説を1本ゼロから完成させ、装丁のデザインも込みで出版まで持っていく、ライブな文芸ハッカソンNovelJam。中身の文芸作品のことが多く語られるイベントなので(まぁ当然だけど)、ここではデザインについて見ていきます。中身の話はほぼしません(すみません)。
NovelJam2025デザインノート、第二回は東京の「チーム遠隔共同体」。こちらのデザイナーH-Cait(はーきゃっと)さんは献身のデザインです。NovelJamというイベントでは、自ら仕事を作りに行く系のデザイナーは特に輝きを増すんだと改めてわかった。


作品『SPY×BANKER』

東京:チーム遠隔共同体
デザイナー:H-Cait 著者:花雲ユラ 編集:結城玲夏

BCCKSの作品情報によるとラブコメであるという。が、表紙の表情からはラブコメ感はうすく、どちらかというとシリアスなドキュメンタリーの匂いがしている。
むろんそのあたりを「帯」による付帯情報が補っているのだけど、想定される(ラブコメに食指が動く)読者層を置き去った感があり、ここが勿体ない。

書籍も含む商品のパッケージは、明らかな指名買いでないかぎり、見込み購入者とは一瞬の勝負になる。本の中身に共感しそうな読者のペルソナが、対峙した瞬間に not for me になってしまったら挽回はかなり難しい。帯で内容を訴えようと、ファーストマグネットで離脱してしまった見込み読者で、帯まで積極的に情報を取得しに行く層は多くはないと思う。

逆にハッカードキュメント的な表紙の印象から、そっち好みの読者が惹かれたとしたら今度は付帯情報で not for me になる公算もある。
ジャンルの持つ総体としてのイメージ「らしさ」は、見込み読者に最初に渡す非言語情報としてとても重要で、そこが惜しかったと思う。
レイアウト自体はこなれていてうまい。AIによる生成をベースにしているとは思うが、センターに視線をよせていく構図は王道感もあってとてもいい。

もし仮に、最小限の手数でリテイクするとするならば(そして表紙から叙述トリックを仕掛ける意図がないのであれば)、オリジナルのイラストの配色をキャンディーカラーやパステル調などに振った上で、ポップなタイポによるタイトル処理なんかがあってもいいかもしれない。
表紙に書かれている文字を一文字も読まずとも、全体が纏う雰囲気だけで最初の誘導は可能。物々しい構図にポップな配色、悪くないのでは?


作品『つなぐ手の先に』

東京:チーム遠隔共同体
デザイナー:H-Cait 著者:一之瀬楓 編集:結城玲夏

デザイナーH-Caitさん、二作目はこちら。
いわゆる文芸的な佇まいがこちらの表紙デザインには最初からあり、想定読者とのミスマッチは少ないと思う。なのでシンプルにデザインとレイアウトのみの話。
手とジグゾーパズル、というコンセプチュアルなところは個人的にはとても好き。で、こちらの表紙についても惜しいのはタイトルの配置だろうと思う。

縦組み文字列を右端に置きたいのはもう縦書きに馴染んだ日本人の本能なんだけど、この表紙グラフィックにおいては、その場所は可読性がやや低い。また右下ゾーンは全体のアイストップを担うエリアでもあり、ここは縦書きであっても左側も検討したい。

平仮名の多いタイトルなので、平仮名の柔らかさを生かすため、表情のあるクラシカルな細目明朝体をいっぱいに大きく扱うなどしたら面白いと思う。

これはワンアイデアなのだけど、この「ピースがはまりそうでどうなるんだろ」的な、不安感のあるビジュアルニュアンスを利用して、思い切って下半分をトレシングペーパーを被せたような半調にするとか。それを距離感の演出と捉え、半調にしたことで向上した可読性を使い、手書きのような文字でさらっとタイトルを入れるの。どうですか?

と、辛口で書きましたがチームで売上ナンバーワンのグランプリは見事でした。購入動機を周囲に広め、指名買いの状況をチームで作り上げたのは素晴らしいです。そのプロモーションのために葉書などのグラフィックをせっせと作っていたのは無論デザイナーなわけで、出版が終わって後のプロモーションフェーズでのデザインもまた、書影開発とは別のエキサイトがあったはず。

ノベルジャムのDiscordをウォッチしていたが、デザイナーを筆頭にしたチームの動きがとても良かった。デザイナーとはコミュニケーションを司る者。プロジェクトへの献身は、アーティストではなくプロモーションを仕掛ける方のデザイナーの重要能力だと思う、ほんと。
なにしろお疲れ様でした。改めてグランプリおめでとうございます。

ノベルジャム2025の全作品はこちらで購入できます


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