見出し画像

【連載】アメリカン・ブラックミュージックこの30枚⑯

長かったレビューも今回でついに全30作が完了。

・アメリカ人による作品であること
・アルバム通して聴ける作品であること
・アフロセントリックやアフロフューチャーな要素を感じられること

を軸に選んだ30枚のアルバムについて、最後の2枚を紹介しよう。


㉙Black Radio / Robert Glasper Experiment (Blue Note / 2012)

現代ジャズを牽引するピアニストであるロバート・グラスパーが、2012年にエクスペリメント名義でリリースしたアルバム。後にシリーズ化され3作目まで発売されたけど、エポックメイキングという意味で今回はやっぱり1作目を紹介したい。

2作目以降になるとコモンやスヌープドッグ、それからフェイス・エヴァンスみたいな90年代ヒップホップのレジェンドが参加してくるんだけど、この時点でのゲストはまだネオソウル勢が中心。ただ、それでもエリカ・バドゥやミュージック・ソウルチャイルド、それから盟友ビラルがいたりするので当時のブームを知る人からしたら、かなり豪華なメンバーになっている。

注目はやはりエリカ・バドゥが歌うA-2のAfro Blueやレイラ・ハサウェイがシャーデーをカバーしたA-3のCherish The Dayあたり。ちなみにレイラはあのダニー・ハサウェイの娘さんで、グラスパー作品でのフックアップをきっかけに一気にブレイクした人だ。それまで名前を聴いたことなかったから新人かと思いきや、実は90年にデビューしてた大ベテラン。そういう意味ではネオソウルの時代になってブレイクした故アンプ・フィドラーとも似た境遇と言えるかもしれない。

その他の曲も全般にいい感じだけど、やっぱりネオソウル色強めな曲がいいかな。レデシーをフィーチャーしたB-1のGonna Be Alright (F.T.B.)とかかなり好みな感じ。ラップ系は2曲でそれぞれルーペ・フィアスコとモスデフが参加してるけれど、これもこれでなかなかに悪くない。

インプロ(即興)重視の古典的なジャズとは質感が違ってネオソウル的な雰囲気が強いから、いわゆるジャズをイメージするとちょっと面食らうかもしれないけど、元Bボーイが現行ジャズの世界に踏み込むための入門盤としては前回のホセ・ジェームズ同様おすすめの一枚。

ブラックミュージックに限らず、ちょっとした音楽好きの間ではかなり知名度が高くなってきてる人の代表作だから、まだ聴いたことないという人は一度聴いてみることを推奨。こんなこと書くと怒られるかもしれないけど、おしゃれなムードミュージックとしても機能するし、いろんな意味でちょうど良い一枚だと思う。

㉚The Epic / Kamasi Washington (Brainfeeder / 2015)

ラストは新世代ジャズを代表するサックス奏者のカマシ・ワシントンが2015年にフライング・ロータスのBrainfeederからリリースしたCD/アナログともに三枚組の超大作。

おそらくネイト・モーガンのJourney Into Nigritiaあたりをイメージしたとおぼしきモノクロのコズミックなジャケ、ファロア・サンダースを連想させるスピリチュアルなプレイスタイル、まるで悟りを開いたかのようなその風貌と全てが完璧で、間違いなく新時代ジャズを象徴するアルバムだと感じさせてくれる風格を持った作品だと思う。

ファロア直系なA-1のChange Of The GuardやF-3のThe Messageみたいな激しい曲もあれば、A-2のAskimのようなモーダルなナンバーもあり、さらにはC-1のThe Rhythm ChangesやD-4のCherokeeみたいな慈愛に満ちたヴォーカル曲も入っていたりと曲調的にはバラエティ豊か。まぁ三枚組の大ボリュームだしね。ただ、全体に一本ピシッと線が入っていて芯はブレてないし、アフロフューチャリズム系のブラックミュージックが好きならハマるはず。

どの曲も素晴らしいけれど、あえて一曲取り上げるのであればマルコムXに捧げられたF-1のMalcolm's Themeかな。歌メロ、サックスソロ、終盤でサンプリングされるマルコムX自身の演説とどこをとっても完璧な一曲。今回の30枚レビュー企画の締めとしてもぴったりなんじゃないかと思う。

ちなみに最近はこのカマシに対するイギリスからの回答として、サウスロンドンのヌバイア・ガルシアがめきめきと頭角を表していっているけれど、それはまた別の話。

いずれにしろこのThe Epicは新世代ジャズを象徴する名盤で、これからも歴史に残るであろうことは間違いない。これまで紹介してきたどこかの作品が琴線に引っかかった人ならば確実に楽しめるはずなので是非幅広なリスナーに聞いてみてほしいと思う。


さて、そんな感じで30枚のレビューがひとまず終了。

次回総まとめというか、久々にまとまった数のアルバムレビューしてみての感想みたいな記事を書いて、連載を終えるつもりなので、読んでくださってる方は後1回だけお付き合いください。ではでは。

いいなと思ったら応援しよう!