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文車妖妃のアルエさん⑦ #生成AI#AIアート#AIイラスト#AI動画#アート

【文車妖妃(ふぐるまようひ)】
古い恋文にこもった想いから変化した妖怪。
美しい女性の姿をしているが、その体は恋文や巻物によって形づくられている。彼女が存在するのは、捨てられない想いが強く残っているからだ。取るに足らない想いは、きっとただ消えていくだけなのだろう。

恋文に込められた想いが消えたとき、文車妖妃はどうなるのだろう

前のお話はこちら

ナマコには恋愛感情がないのか

ぼくが入社してしばらくするとチームは課になり、ぼくの肩書は課長代理になった。そんなぼくの直接の部下になったのがエンドーさんだ。女優顔負けの金髪美女で、前職は誰でも知ってる超大企業の秘書だった。給料より「ライターになりたい」という夢を追って転職してきた変わり者だ。

入社時には朝礼の場がざわめいたくらい別次元のルックスをしている。

街を歩くだけで何度もファッション雑誌にスカウトされる人

うちの課では、部下ごとに一ヶ月の目標を設定し、月末に進捗などを確認するミーティングを必ず行っていた。そのミーティングでエンドーさんが言った。

「ナマコさんって私に一切興味ないですよね?」

ない。っていうか圧が強いので少し苦手だった。
「ないです」とも言えず固まるぼくに、エンドーさんはこう続けた。

「私のこと好きな人って、すぐわかるんですよ。
 目線とか態度で。」

おい、怖いこと言い始めたぞ、この人……。

「前職ではそれが面倒くさかったので、今は仕事しやすくて助かってます。でもナマコさんってうちの会社で一番変人ですよね。」

君のこと好きじゃないだけで変人扱いなのか…。
でも確かに周りの男はみんなエンドーさん大好きだった。
…いや、ナマコなんだから変わっててもいいだろ。

「ゲイっぽくもないし、謎なんですよ。ヤバい彼女がいたのは知ってますけど…」

それがあったので、好きじゃない人と付き合うのはやめたのだ。

「ぼくにだって気になる人くらいいますよ!」
「ちょっと!!!その話詳しく!!!」

もうミーティングどころではない

その後、同じ課の女子ライターたちから質問責めにされた。確かに気になる人はいるけど、「それは恋愛感情なのか」と言われれると違う気がする。あと、ぼくみたいなのと釣り合う人ではない。

でも一緒にいると楽しいのだ

池袋デートだ!その2

アルエさんはオタクだ。
ジャンルはアニメから歴史まで幅広いのだが、絶妙に腐っているので男子では理解できない領域に踏み込んでくる。例えば「TIGER●BUNNY」の場合、カップリングとしては主人公バディも好きだけど、最推しはサポート役の「ベンさん&斎藤さん」っていうおじさん2人だったり(不要な情報)。

2人で会うときは、アルエさんが希望するオタクスポット巡りが基本になっていた。オタクの聖地と言えば秋葉原だが、女性のオタクの聖地にあたるのが池袋だ。それゆえに、池袋でのデートが多かった。

じゃあ行こっか!

今回、ぼくはアルエさんから2つのミッションを与えられていた。
まず一つは、池袋駅前で献血を受けること
400ml献血すると『カ○ジ』のポスターがもらえるのだ。

アルエさんの代わりにぼくが献血を!?

ちなみにアルエさんは常に貧血気味なので400mlの献血ができない。
…それ以前に、ぼくはナマコなのに献血して良いのか?
っていうか、そんなに献血しても大丈夫なのか?

できた。

「ナマコさんありがとー!」
「ギギギ……(いいってことよ…)」

ナンジャタウンの死闘

アルエさんに与えられた2つ目のミッションは、サンシャインシティ内にあるアミューズメント施設「ナンジャタウン」に行くこと。『TIGER ● BUNNY』のコラボイベント中だったからだ。

店舗ごとにコラボメニューがあり、そのメニューを頼むとオマケとして限定グッズがもらえる。「限定グッズ」とか言いつつ、紙製のコースターとかカードみたいなショボいささやかなアイテムばかりだ。
メニューは意外とボリュームがあるのも多いので、基本的には気になるメニューだけ食べて終わりにするのだが……。

変わり種もあるけど、だいたい美味しい

「さて、そろそろお腹もいっぱいだけど、アルエさんはまだ食べたいものある?」

こう聞いたぼくに、アルエさんは言った。

「……全部だよ」
「……え?」

「全メニュー」を「制覇」するんだよ…

本気の目だ
ぼくは覚悟を決めた

地獄のランチが幕を開けた。
アルエさんがそんな量を食べられるはずもなく、完全にぼくの胃袋に頼っていることを察したからだ。

コラボメニューが「ある」のがいけない!!!
「ある」のがいけない!!!!

その日は土曜日。
アルエさんとぼくは午前中からナンジャタウンに来ていたが、お昼が近くなるとどんどん人が増えてくる。当然、コラボイベント目的のファンが大部分なのだが。

満タンのお腹を抱えてイベント店舗の案内図を見ながら歩いているとき、横を歩いていたアルエさんが人の波に流されそうになってしまった。反射的に、ぼくはアルエさんと手をつないでしまった。

あっ・・・・・

なんかすっごい脈拍が上がって体温が高くなった。
なんだこれ。
そもそもナマコには心臓がないはずなのにどうなってるんだ。

特に2人とも何も言わず、そのまま手をつないで歩いた。
なんだこの感覚。もう20代も後半だというのに、中学生かな?

夕方になって、池袋駅でぼくとアルエさんは解散した。
特に手をつないだことに関してお互いに言及することはなかった。っていうか、ぼくのお腹はコラボメニューではち切れる寸前になっていて、ぶっちゃけそれどころじゃないレベルで死にそうだった。

「ナマコさん!今日はありがとう!楽しかった!」
「ひぎぃ…ごっつぁんです…」

帰りの電車の中で、ぼくは何となくエンドーさんに言われたことを思い出していた。

「気になってるなら付き合ってみればいいじゃないですか」

ナマコさんって中学生なんですか?

間違いなく楽しいんだろうけど、年齢を考えてもいい加減に付き合えるわけないじゃないか。そもそも、向こうの気持ちはどうなるのさ。

そんなことを考えながらも、なんだかモヤモヤするようになったのだった。


(つづく)

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