一行目の壁を突破する方法
あなたは文章の書き出しで手が止まったことがありますか?
頭には書きたいアイディアが
あふれているのに……。
アセればアセるほど
キラキラしていたアイディアが逃げていく。
どんどん輝きを失っていく……。
そんな時はどうするか?
“アタマの強化”です。
“アタマの強化”は私が考案した
【なんちゃってストーリーテリング】
において最も重要なスキルの一つです。
あ、最初にお断りしておきます。
【なんちゃってストーリーテリング】
はディズニー映画のように
「人の心に魔法をかける」
破壊力はありません。
たとえるならカニカマです。
「本物のズワイガニが喰いてー!」
という人には通用しません。
登山でいえば高尾山とエベレスト
ぐらいの違いでしょうか。
手っ取り早くカニカマを食べながら
高尾山をロープウエイで登ろう!
というカジュアルなライティングスキルです。
だからプロ作家を目指されている方は、
きっちり基礎から学ぶことをおすすめします。
【なんちゃってストーリーテリング】は
私が新人脚本家時代に
生き残るために培ったサバイバル術。
黒いおばあちゃんの知恵袋なのです。
さて前置きが長くなりました。
今日は
【なんちゃってストーリーテリング】
のスキルの一つ
『アタマの強化』をお話します。
28年前、私がまだ新人脚本家の頃――。
時代はまだ底意地の悪いプロデューサーが
肩で風切るハラスメント天国でした。
新人脚本家はプロデューサーの下僕、
百円ライターなどと呼ばれ、
日常的に使い捨てにされていました。
特に私のようにスキルのない新人は、
テレビ局のプロデューサー様(以下、局P)
の格好のストレス発散相手でした。
「つまんねぇなぁ。お前、頭が弱いんだよ」
などと日常的にののしられ。
必死に書いた原稿を目の前で
ゴミ箱にドサッと捨てられていました。
その捨てられた原稿には局P様の書き込みがあり、
それを見たければ(=まだ仕事を続けたければ)
ゴミ箱から原稿を拾い上げて、
家で拝めというのです。
当時、局P様は私にとって天上人でした。
しかし、誰にでもこんな態度ではありません。
局P様は売れている役者や脚本家には
ヘコヘコとサラリーマン丸出しになります。
その切り替わりの早さは
コントを見るようでした。
早く人間になりたい。
あっち側に行きたい……。
その想いが当時の私の燃料でした。
私はゴミ箱から原稿を拾い上げ、
トボトボと家に帰り、
自分の原稿のチェックポイントを洗い出します。
プロデューサーがつまらないと思った部分は
雑に赤線で塗りつぶされています。
1ページすべてがバツだったり、
何ページにもわたって横に赤線が引いていたりと。
無事な部分を全部足しても
20ページの原稿の中に2、3ページほど。
それっぽっち無事でもなんの意味もありません。
そんな残がいなど、新たに書き直した原稿と合うはずもなく、
結局、二日間徹夜ですべて書き直しました。
「ぜんぜん変わってないじゃん」
とまたゴミ箱にドサッです。
意味がわかりませんでした。
「お前頭が弱いンだよ」
こっちは言われた通りに直しているのに……。
そんなやりとりを2回ほどした後でした。
「何回言わせんだよ。頭が弱いって言ってンだろ。頭変えないでケツだけ拭いても中身が変わるわけねぇだろ」
混乱しました。
頭弱いって
オレがバカって意味じゃなかったの?
原稿の書き出し部分のこと?
……確かに一稿から
「つまんねぇなぁ。お前頭が弱いンだよ」
としか言われてなかった……。
「早く言ってよー!」である。
頭が弱いとか、ケツだけ拭いてもとか……。
そんな言い回し、業界でスレた人にしか通じないって。
それはさておき……。
私は気持ちを切り替え、
アタマを強くする方法を探りました。
今回は一週間時間をもらい、
そのうち5日使って、
強いアタマを考えることに費やしました。
参考にしたのは、
ディック・ウルフ先生の
「Law&Order」シリーズ。
改めて傑作作品たちの出だしを
インパクトという視点で見ると、
元々、面白かったドラマが
「すげぇ! アタマすげぇ!」
と正座するレベルでした。
私がディック・ウルフ先生を
マネた原稿を送ると、
敵の反応が変わったのです。
「出だしは面白いですね。どう着地させるか一緒に考えましょうか」
なんと言葉づかいまで変わっているではありませんか!
業界カーストの底辺にいる新人脚本家には、
これ以上のごほうびはありません。
教祖様を盲信する信者と変わりません。
完全に調教されていました。
そこからは夢心地の打ち合わせを何度かして
決定稿にたどり着き、オンエアもされました。
“アタマの強化”という一点だけで乗り切ったのです。
このスキルがあれば、
脚本家として生きていける。
私は自信をつかみました。
後日、先輩の脚本家に
その局P様の話をすると、
「ああ! あいつはドラマ素人。ぜんぜん字が読めないから」
えっ? あの局P様がドラマ素人……?
いやいや、それにしても言い過ぎだろ。
仮にも超一流大学をご卒業して
テレビ局に入社されたんだぞ。
“字が読めない”はずがない。
どうしてこの村の人たちは、
極端な言いまわしばかりするのでしょうか。
ただ先輩脚本家の言葉は正しかった。
しばらくして、
その局P様はドラマ制作部から外れ、
経理部に移られ、ただのサラリーマンに
おなりになった。
あとで聞いた話をまとめると。
元局P様は、
ベテラン脚本家からは相手にされないので、
新人脚本家ばかりを使っていたそうです。
そしてナメられないように
尊大な態度をしていたのです。
私の教祖様はバリバリのカニカマ野郎でした。
で、何が言いたいかというと、
アタマさえ強い物が書ければ、
カニカマ原稿でも
ある程度は通じるということです。
今、あなたが読んでいるこの投稿。
その一行目を覚えていますか?
あなたは文章の書き出しで手が止まったことがありますか?
こう聞かれてドキッと
しない人はいないはずです。
文章を書く人なら
書き出しで詰まることなど
しょっちゅうだと思います。
気になって先が知りたくなりませんでしたか?
少なくともここまで
読み進めてくれたのですから、
多少は関心を引けたはずです。
これが“アタマの強化”。
つまり出だしのインパクトです。
ただ文章の書き出しで手が止まるのは
当たり前のことです。
だってそこが一番難しく
時間がかかる場所ですから。
そこに関してはカニカマも
ズワイガニも一緒です。
いずれにしろインパクトのあるアタマは、
それだけで推進力があるので
手が勝手に動いて続きが
スラスラと書けてしまいます。
そこから先をカニカマにするのか
ズワイガニにするのかは、
あなたの努力次第ですが……。
最後に、
“アタマの強化”の練習法を紹介します。
まずは抜群に推進力のある言葉で
練習するといいです。
具体例としては、
「殺されるかと思ったよ」
など読み手に
「えっ? ヤバいじゃん! 何があったの?」
と思ってもらえるようなものです。
その後に続くのは、
なぜその状況になぜ至ったのかの説明です。
ここから続く引っぱり方を
簡単な会話形式でお見せします。
「この前さ、殺されるかと思ったよ」
(インパクのあるアタマ)
「えっ? まじ? なんで? というか誰に?」
「医者」
「はあ? なんで医者がお前殺すの?」
「実はオレ肺がんでさ」
(中ぐらいにインパクトのある謎)
「は? そういう冗談やめろよ」
「ガチガチ、こんな冗談言わねぇよ」
ここから肺がんになったストーリーを語り、
中ぐらいの疑問の回答。
そしてどんな状況か下地ができたところで、
どうして医者に殺されそうになったか
を語ります。
「医者がオレに使った抗がん剤が全然効かなくてさ、やたらフラッと気を失うようになって、
気がついたら床に倒れていて乾いた血で顔が床に張りついていた。気絶した時に頭をどっかにぶつけて、頭から血が出ていたみたい」
「でも薬は効いたんだろ?」
「ダメダメ、全身脱毛した上に逆に転移が増えちゃってさ」
などとまだ引っぱります。
「なんちゃってストーリーテリング」には
引っぱりスキルもあるのですが、
それはまた後日。
そして引っぱって、引っぱって、
最後に取ってつけたように、
“どこでも涙”
というスキルをはりつければ、
カニカマ原稿の一丁上がりです。
プロの中にもカニカマな人はいます。
まずはその人たちをダマせるように、
“アタマの強化”
を身につけて下さい。
以上、
「なんちゃってストーリーテリング」
アタマな強化編でした。
レッツ・カニカマ!
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