10期目から11期目へ。もっと、人へ。
株式会社ミーティングは、5月末で10期目を終え、6月から11期目に入りました。10年。そう書くと、ひとつの区切りのようにも感じます。でも実際には、何か大きな達成感があるというよりも、「気づけばここまで来た」という感覚のほうが近いかもしれません。もちろん、簡単な10年ではありませんでした。うまくいったこともあれば、思うようにいかなかったこともあります。自信を持てた仕事もあれば、もっとできたはずだと悔しさが残る仕事もあります。嬉しい出会いもあれば、苦い経験もあったかもしれない。それでも、この10年を振り返ると、起業した頃にぼんやりとイメージしていたことは、ずいぶん形にできてきたように思います。
会社を立ち上げた頃、僕は「ブランディング」という言葉をよく使っていました。今でこそ、ブランディングという言葉はさまざまな場面で使われるようになりましたが、10年前はまだ、今ほど一般的な言葉ではありませんでした。打ち合わせの中で「それは広告と何が違うんですか?」と聞かれることも少なくありませんでした。
広告をつくること。デザインを整えること。コピーを書くこと。PRを仕掛けること。Webサイトをつくること。イベントを設計すること。もちろん、それらはすべて大切です。そして僕たち自身も、それらを仕事としてやってきました。ただ、僕たちが本当にやりたかったのは、単に何かをつくることではありませんでした。
その会社や地域、商品や人が、何を大切にしているのか。どんな価値を持っているのか。なぜ、それを続けているのか。誰に、どんなふうに届いてほしいのか。そして、これからどこへ向かおうとしているのか。そうしたことを、クライアントの皆さんと一緒に考え、言葉にし、形にし、世の中へ届けていくこと。僕たちがやりたかったブランディングは、そういう仕事でした。
この10年で、その仕事の意味を、少しずつ共有できる方々と出会うことができました。最初からすべてが明確だったわけではありません。こちらの考えがうまく伝わらなかったこともあります。期待されていることと、自分たちが大切にしたいことの間で、悩むこともありました。「これは制作なのか、戦略なのか」「どこまでが自分たちの役割なのか」と考え続ける場面もたくさんありました。
でも、目の前の仕事に向き合いながら、対話を重ねながら、少しずつ、少しずつ、僕たちなりのブランディングの形ができてきたように思います。
単にかっこいいものをつくるのではなく、単に目立つものをつくるのでもなく、単に売るためだけの言葉をつくるのでもなく、その人たちが本当に大切にしている価値を見つけ、それがちゃんと伝わる状態をつくる。言葉にするとシンプルですが、実際にはとても難しいことです。なぜなら、価値というものは、最初からきれいに整理されているわけではないからです。むしろ、日々の仕事の中に埋もれていたり、当たり前になりすぎて見えなくなっていたり、本人たちですら言葉にできていなかったりします。
それを一緒に掘り起こしていく。ときには問い直す。ときには違和感を口にする。ときには背中を押す。そして、言葉やデザインや場づくりを通じて、外に向けても、内に向けても届く形にしていく。その積み重ねが、僕たちの10年だったのだと思います。
そして、その10年を支えてくれたのは、これまでお仕事をご一緒させていただいた方々なのは間違いありません。また、うちの会社が恵まれていると感じるのは、クライアントとの関係が、仕事だけという枠を超えて、一緒に目指すべきところを目指す仲間のような気持ちになってくださっている方が非常に多いということだと思います。もちろん、簡単なことばかりではありませんが、前向きに、より良いものを一緒につくろうとしてくださる方々と仕事をさせていただいている。それが、この10年間で本当にありがたいことだと思っています。
また、これを実現させてくれているのは、一緒に進んでくれている仲間がいてくれるからだということも忘れてはいけないと思っています。
会社というのは、仕組みが大事だと言われます。属人的ではない組織のほうが強いと言われます。誰がやっても同じ品質で、同じように成果が出る状態をつくることが大事だと言われます。それは、たしかに正しいと思います。
会社として成長していくためには、仕組みも必要です。再現性も必要です。
業務の整理も、役割分担も、マネジメントも、育成も必要です。その意味で、僕たちももっと整えていかなければいけないことがたくさんあります。
でも一方で、僕たちの会社は、ある意味でその真逆をいっているところがあります。誰がやるか。誰とやるか。その人が何を感じるか。どう考えるか。どんな言葉を選ぶか。どんな表情で、どんな温度で、相手と向き合うか。そういうことを、とても大切にしている会社だと思います。
効率だけを考えれば、もっと均一化したほうがいいのかもしれません。仕組み化し、標準化し、属人性を減らしていくほうが、組織としては強く見えるのかもしれません。でも、僕はやっぱり、仕事の最後の最後には「その人だから」というものが残ると思っています。
この人が言うから届く。この人が考えたから面白い。この人が向き合ったから、相手が心を開く。この人の違和感があったから、企画が深くなる。この人の丁寧さがあったから、信頼が生まれる。そういうことが、仕事の中には、必ずあると思っています。
目の前の相手が何に困っているのか。本当は何を言いたいのか。まだ言葉になっていない想いはどこにあるのか。その事業や地域や商品に宿っている価値は何なのか。どこに光を当てれば、人の心が動くのか。それを感じ取る力は、その人自身のあり方と深く関係していると思います。
だからこそ、もっと人へ。11期目を迎えるにあたって、僕はそう思っています。
そのためには、仲間一人ひとりにも、改めて、何が自分の強みなのかを考えてほしいと思っています。それは、すぐに答えが出るものではないかもしれません。でも、仕事をしながら、自分自身に問い続けてほしい。
会社の中で役割を与えられるだけではなく、自分の強みを自分で見つけていく。誰かと比べるのではなく、自分が深められるものを深めていく。苦手とか得意とかすぐ安直に決めないで欲しい。やるべきことがあれば、苦手も克服しないといけないし、得意なことも意味がなければ捨てなくちゃいけない。それが、その人自身の成長にもなるし、会社の力にもなると思います。
人にこだわる、ということを聞くと、一見、そのままでいい、人間性だけを大事にすればいいというように、甘く見えるかもしれません。でも、むしろ逆だと思っています。
人にこだわるからこそ、厳しいことがたくさん待っている。AIでは代わりにならない経験を重ねること。自分の足で動き、物事を前に進めること。小さな違和感や変化に気づけること。努力し続け、考え続けること。そして、他にはいない、なかなか出会えない人になっていくこと。
人としての魅力や強さは、ただ持って生まれたものではなく、日々の行動や経験の中で磨かれていくものだと思います。そういう一つひとつが、仕事の質につながっていくのだと思います。
そういう意味では、11期目は、また新しい挑戦の年になると思います。ただ、立ち返る場所は、やっぱり人なのだと思います。
人にこだわる会社であるために、僕たち自身も、自分たちの言葉や行動を磨き、もっと人として成長していきたいと思います。どうぞ今後ともよろしくお願いします。
