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『キッズ・ザ・カフェ』第1話【創作大賞2024 漫画原作部門 応募作品】

【あらすじ】

『キッズ・ザ・カフェ』……とある商店街にある、その名の通り、子どもだけが集まるカフェのようなもので、毎日いろんな子どもたちがやってくる。子どもたちの居場所を作ろうと、店主・増田勇雄が始めたプロジェクトであった。常連客として店を訪れる中学生たちは個性的で、佐伯梓は小説家、倉沢真由は女優、香坂拓也はユーチューバーといった別の顔を持っており、ごく平凡な中学生は南健太ただ一人。
そんなある日、見慣れない姉妹・竹下かおりとみのりが『キッズ・ザ・カフェ』を訪れる。個性派揃いの常連客と姉妹たちの出逢いが、やがて『キッズ・ザ・カフェ』を揺るがす出来事へとなっていく。


【登場人物】

・佐伯  梓(14) 小説家
・倉沢 真由(14) 女優
・香坂 拓也(14) 自称頭脳派ユーチューバー
・南  健太(14) 普通の中学生
・竹下かおり(14) 謎の少女
・竹下みのり(11) かおりの妹
 
・竹下 康介(42) かおりとみのりの父
 
・増田 勇雄(35)『キッズ・ザ・カフェ』マスター


【本文】

○『キッズ・ザ・カフェ』・店

『キッズ・ザ・カフェ』は、とある商店街の中の店舗を改装した、こじんまりとした喫茶店。カウンター席とテーブル席が、それぞれ数席。
マスター・増田勇雄(35)が、カウンターでグラスを吹いている――何故かハチマキに前掛けというラーメン屋のような格好。
それぞれのテーブル席には、原稿用紙と向き合いながら険しい顔をしている佐伯梓(14)と、教科書とノートを広げて勉強をしている南健太(14)。

T「『キッズ・ザ・カフェ』 ここは、その名の通り、子どもだけが集まるカフェ……みたいなもの。毎日いろんな子どもたちが遊びに来る。それも、かなり個性的な、別の顔を持った………。今日もまた、常連客の子どもたちが集まるのであった」

と、倉沢真由(14)が来店してくる。

真由「こんにちは」
増田「真由ちゃん、いらっしゃい!」
真由「増田さん、いつものレモンティー」
増田「はいよ、レモンティー、一丁ね!」
真由「あのさー」
増田「何?」
真由「その言い方どうにかならない? ここ、一応カフェだよね? ラーメン屋じゃないよね?」
増田「ラーメン屋に見える?」
真由「見えないから言ってるの。せっかく落ち着けるカフェなんだからさ、その頭のタオルもやめたら?」
増田「うーん、考えとくね」

増田が真由のもとへレモンティーを運んでくる――真由、鞄から台本を取り出し、読み始める。

増田「新しい台本?」
真由「今撮影してるドラマの台本。この間受けたオーディションの結果はまだだけど、受けられるものは受けとかないと。頑張って、いい役とってこなきゃ、ね」
増田「真由ちゃんならできるよ! 天才子役って言われてるんだから」

と、梓が突然原稿用紙をばらまいて、

梓「あーーー! 書けなーーーい!」
真由「何、急に! びっくりするでしょ」
梓「書けないの。全く言葉が出てこない。小説家なんてやめてやろうかな」
真由「五作目まで来ると、ネタ切れかぁ」
梓「『中学生作家・梓』って周りは注目させてるけど、正直私は普通の中学生でいたいの。小説だって趣味で書いてただけなのにさ……」
真由「じゃあ、やめればいいじゃん。趣味は趣味のままの方がいいでしょ」

梓、ため息をついて、原稿用紙を拾い始めると、

梓「あのさ、簡単に言わないでくれる。そっちだって、どうせ世間からすぐに忘れられるよ。子役なんて山ほどいるんだから」
真由「ちょっとそれどういう意味!?」
梓「そのままの意味よ!」
健太「(呆れながら)もう、二人ともうるさいよ。やるなら表で思う存分やってきたら」
増田「ちょっと、健太君、吹っ掛けてどうすんの」
健太「ここで止めてもまた始めるよ」

梓と真由、外に出ようとする――増田、慌てて止めて、

増田「二人とも、喧嘩はダメだからね。ダメよダメダメ、絶対ダメだよ」
梓「それは喧嘩をしろってことね」
真由「よし、表で決着つけるよ」
増田「だから、ダメだってば。女の子なんだから喧嘩しないの!」
梓「あー、その言い方! それがダメだよ! 今はジェンダーフリーの時代なんだから」
真由「そうよ、女の子だからって喧嘩しちゃいけないっていう法律はないでしょ!」
増田「え…え……」

と、吸血鬼のコスプレをした香坂拓也(14)が勢いよく入ってくる。

拓也「ハッハッハッハー。この世の全てを征服する、そう俺様こそが頭脳派ユーチューバーたっくんだ(と決めポーズ)」
増田「(腰を抜かして)ギャーーーーー! ドラキュラーーー!?」
拓也「僕、ココア、一つね」

と、何事もないような顔でカウンター席に座る。

梓「拓也は良いよね。動画撮ってアップするだけが仕事なんだから」
拓也「拓也とか言うなよ。俺を誰だと思ってるんだよ。ハッハッハッハー。この世の全てを征服する、そう俺様こそが頭脳派ユーチューバー……」
真由「(遮って)はいはい、たっくんね。もう聞き飽きた」
健太「あの、誰も突っ込まないんだけど、その格好……」
拓也「そうそう、頭脳派って言ってる以上、いろいろ考えてたらネタ切れになっちゃって。こういうのって、インパクトが大事だろ。だからコスプレしてみようかなと思ってさ。どう? ねえ、どう?(と各席をまわる)」
増田「(カウンター席にココアを置いて)はい、ココア一丁。たっくんは良いなぁ、いつも元気で。健太君はブラックのおかわりいる?」
健太「今日はもう大丈夫です」
梓「中学生が、ブラックコーヒーねぇ」
健太「カフェインがいるからな」
真由「摂りすぎには気をつけなよ。無理に勉強ばっかしなくてもいいじゃん」
健太「俺はみんなと違うから。勉強するぐらいしかできないし」
拓也「俺とコラボしてみる?」
健太「(絶句して)なんで俺が……」

と、竹下かおり(14)が妹・みのり(11)を連れて来店してくる。

かおり「あの……ごめんください」
みのり「(拓也を見て)ギャーーーーー! ドラキュラだーーー!」
かおり「みのり、大丈夫だよ」
真由「(拓也に)ほら、怖がってるじゃん」
増田「(かおりたちをテーブル席に誘導して)さあ、どうぞどうぞ。ご注文は?」
かおり「……」
みのり「お姉ちゃん、どうする?」
増田「……決まったら、呼んでくださいね」
梓「姉妹かな? 初めて見る顔だけど」
健太「そうだな」
拓也「よーし、ここは俺の出番だな。(とかおりたちの元へ行くと)ハッハッハッハー。この世の全てを征服する、そう俺様こそが頭脳派ユーチューバー、たっくんだ」
かおり・みのり「……」
拓也「……たっくんだ!」
かおり・みのり「……」
拓也「さ、ということで……」
真由「え、続けるの?」
拓也「種も仕掛けもない、ただのハンカチ。さあ、よく見ててよ。(とハンカチを丸めて)このハンカチをクシャクシャにします。そして、ワン、ツー、スリー!(とハンカチを広げて)はい、模様が横向きになりました。これが、ジャスティス!」
かおり・みのり「……」
健太「こっち来い!」

と、拓也を連行して席まで連れ戻す。

健太「お前は、何してんだよ」
拓也「マジックで笑わそうかなと思って」
健太「最初の挨拶でスベッてた自覚がお前にはないのか?」
拓也「ありません!」
健太「尊敬するわ、そのメンタル」
真由「ここは私が。ちゃんと見てなさいよ。(とかおりたちの席へ行くと)初めまして、私は真由。女優やってます。今放送中の夜のテレビ小説、ヒロインの幼少期の友達の妹役、やってます。よろしくね」

と、手を差し出すが、かおりとみのりは何の反応もしない――真由、気まずそうに席に戻る。

健太「女優の真由ですら、この状態か」
拓也「(ケラケラ笑って)人の心を動かす演技ができなかったってことだよね」
真由「(拓也につかみかかり、含んだ笑みを浮かべ)もう一回言ってみな」
拓也「何もありません……」
真由「ドラキュラなんかいたら気が散って台詞覚えられないから、今日はもう帰ろっと。ドリンクチケット、ここ置いとくね」

と、チケットをテーブルに置くと、出ていく。

増田「ありがとうございました!」
梓「(時計を見て)あ、もうこんな時間か。私たちも帰ろうか」
健太「そうだな」
増田「チケットもらうよ(とチケットを健太と梓から預かる)」

と、健太と梓が帰ろうとすると、拓也も立ち上がり、

拓也「俺も帰る」
健太「お前はついてくるな」
拓也「何で!」
健太「こんなのと一緒に帰れるわけないだろ」
梓「そうよ。ハロウィンでもあるまいし、さっさと着替えなよ」

と、出ていく健太と梓。

拓也「ちょ、待ってよー!」
と、チケットを増田に渡すと、追いかけるように去っていく。
増田「やれやれ、騒がしいんだから。(と、かおりたちに優し気に)ごゆっくり……」


つづく


第2話

第3話

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