レゾンデートル第4話
はっと目を開けると、蛍光灯のまぶしい光が差し込んできて、思わず顔をしかめる。
心配そうに顔をのぞきこんでいたのは、おばあちゃんだった。
よかった、と手を握られた。おばあちゃんの目がうるんでいる。
「私、どうして?」
「日置先生が、助けてくださったの。それで、あなたは病院に運ばれたのよ」
そうだ。
かすみがかった頭でゆっくりと思いだす。
あの時、私は家へ向かっていた。
そうして、その途中で。
鼻を布で押さえられた嫌な感触がよみがえってくる。ものすごい力だった。あれは、男だ。心臓が強く脈打った。
あの時、殺されるんじゃないか、と本気で思った。今、思い出しても動悸がする。
「先生は? 先生は無事なんだよね?」
おばあちゃんがうなずいたのを見て、ほっとした。
私のせいで先生が亡くなったのだとしたら、そんなのやりきれない。いくら大嫌いな先生でも、だ。
「でも、ナイフで刺されてけがしてね。今、この病院にいる」
「どこ? どこにいるの?」
先生がけがしたのは、私のせいだ。
すぐに起きあがって、先生のところに向かおうとしたが、ふらふらとよろけ、思わずベッドそばにある手すりにつかまる。
「ダメよ、まだ安静にしてなきゃ。先生は大丈夫だから、ね」
「大きなけがとかじゃないんだよね? 意識が戻らないとかそんなんじゃないんだよね?」
「大丈夫。命に別状はないって、さっき病院の先生に聞いたらおっしゃっていたから。もう少し落ち着いたら会いに行ってあげなさい」
なにもけがは負ってないはずなのに、思うように体が動かない。あれは、あれは母親に虐待を受けていた頃とはまた別の恐怖だった。
その後、退院した私は、再び病院へと足を向けた。
病室に入ると、先生は起きあがって、窓を見つめていた。窓の外では木々がざわめいている。病室にいても、びゅーっ、ごーっと時折風の音がしていた。
私に気づくと、先生はよお、と右手を挙げた。
先生を見たら、涙があふれそうになった。
「もう大丈夫なのか?」
「はい、おかげさまで。あの、祖母から聞きました。助けてくださったそうでどうもありがとうございました」
「見事に犯人は取り逃がしたけどな、しかもこのざまだ」
おばあちゃんに聞いたところによると、先生はお腹をナイフで刺されたらしい。
そう聞くと見るつもりはなくても、ついお腹のあたりに目がいってしまう。でも、先生のお腹は布団に隠れていて見られなかった。
「すみません、私のせいで、そんなけが負わせてしまって」
「工藤のせいじゃないだろ、悪いのは全部犯人じゃないか」
「先生はどうしてあの場にいたんですか?」
「残業終わって、家に帰る途中だったんだ。いつもは人なんてめったにいないのに、人影があったから、気になってな。近づいたら大変なことになっていた。しかも、襲われてるのは工藤じゃないか。びっくりしたよ」
先生は問答無用で襲われている人を助けようとした。その事実がまた意外に感じられた。
「よく先生、逃げなかったですね。通報はしても、普通だったらかかわるの避けますよ」
「その時は通報なんて考えもよらなかったな、通報なんてしてたら間に合わないだろ。目の前で危険にあっている人がいるのに、見捨てられない」
また正義感をふりかざしている。
でも、不思議といつものような嫌悪感を覚えることはなかった。
同時に長谷田と高山さんが好きだと言っていたのが少しだけわかる気がした。
「助けたら、もしかしたら自分も危ない目にあうとか考えなかったんですか」
「とっさのことだったからな。いろいろ考える前にもう体が動いていたよ」
ふと疑問が浮かんだので聞いてみた。
「先生が前に言ってたことって嘘なんじゃないですか」
「前に言ってたことってなんだ?」
「長谷田さんと付き合ってるって話です」
先生は表情を変えず、黙ってこちらを見ている。
「なんでそんな嘘ついたのかはわからないけれど、こんな行動取れる教師が、生徒と付き合うなんてことあるのかなと思って。しかもあの長谷田ですよ。いくら別の生徒を助けるためとは言っても絶対無理ですよ。趣味が悪い」
黙っている先生になにを言っていいのかわからなくて、ついべらべらと別に言わなくていいようなことまで口にしていた。
先生は一瞬、きょとんとして、それから、あはははと豪快に笑い出した。
「ただでさえ腹痛いんだから、笑わすなよ。ほんと工藤はおもしろいな、おもしろい」
余計な言葉を口にした自覚はあるけれど、おもしろいことを言った自覚はない。少しむっとして、「なにがおもしろいんですか」と言い返した。
「ごめん、ごめん。よくわかったな、工藤の言う通りだよ。あれは嘘だ」
「なんで、なんでそんな嘘。三者面談の時にあんなまじめな顔で言われたら誰だって信じますよ」
「噂が流れているっていうから、ついおもしろ半分でな。工藤に問いただされた時も言いそびれて、今までほんとのことを言うタイミングを失ってたんだ。悪かった」
先生は本当に申し訳なさそうに頭を下げた。
「私が周りに言いふらしてたらどうするつもりだったんですか」
「工藤はそんなことしないってわかってたからな。まあ、たとえ言ったとしても証拠がないんだ。証拠がなかったら、いくら噂がたっても別になにも起こらない、だろ」
茶目っ気たっぷりに言う先生は子供みたいだった。
「でも、卒業後に付き合うかとは言ったな。まあ、いじめをとめるための口実だな」
「本気ではなかったってことですか」
「もちろん。これからなにも起こさず、勉強も頑張って高校も受かって、そしたら真面目に考えてもいいって、告白された時に答えたんだ。そしたらぴったりいじめはやんだんだからな。俺もびっくりだったよ。そのあといなくなってもっとびっくりしたけどな」
長谷田は嫌いだ。だけど、消えるのは、いなくなるのは違う。
「先生はなんで」
聞くはずじゃなかった言葉が、口をついて出る。多分、今のこの雰囲気にのまれたのだ。
「ん?」
先生の目が私の目をとらえた。
「勘違いだったらすみません。先生はなんでそんなに私に肩入れしてくれるんですか」
「今回助けたのは偶然だろ」
「今回はそうですけど、いつもだってそうじゃないですか。高山さんの力にだって先生はなっていたけど、その前からでしたよね」
単純に熱血漢なのかもしれない。だけど、それだけじゃない気がしてつい聞いてしまった。
「そうだな、そういうつもりは自分ではないけど、もしかしたらそうかもな」
先生は視線を外すと、また窓の方を見た。
「俺もあってたんだよ」
「え?」
「虐待。まあ、俺の場合は育児放棄だったけどな」
先生は外を見つめたままだった。
「だから、工藤の力になりたくなるんだよ。でも、虐待受けている生徒全員にそういう気持ちが起こるかっていうとそうじゃないんだよな。なぜか工藤には特に頑張ってほしくなるんだ。その理由は自分でもよくわかんないんだけどな」
いつも明るくて生徒にも人気のある日置先生に私の気持ちなんてわからないと思っていた。わかってたまるかと思っていた。
でも、違った。
私は不思議な気持ちで先生の横顔を眺めていた。
あの事件以降、警察は動いているらしいが、一向に進展はなさそうだった。
顔見知りの犯行ならともかく、通りすがりの犯行だったら、捜査はきっと難航するだろうと素人の私でも理解できた。
しかしその後、あまり時間をおかず、あっさりと犯人は見つかった。
自首してきた犯人は、高山さんの叔父だった。
通りすがりでもなんでもなかった。
犯人が高山さんの叔父だと聞いた時、三者面談の時の光景がよみがえった。眼鏡の奥の優しそうな笑顔。やっぱり、あれは嘘だった。高山さんを襲い、私をも襲ったその素顔が本物だったのだ。
許せなかった。高山さんにしたことも、私にしたことも。
高山さんの叔父は、高山さんに好意的な感情を持っていた。それは、叔父という関係性のものではなくて恋愛的な感情だったという。
叔父さんは、高山さんを独り占めしたかった。恋人はおろか、友達でさえもできることを疎ましく思っていた。だからこそ、私という異分子がくっつくのを好まなかったらしい。
自殺だと思われた野坂の死にも、長谷田の失踪にも叔父さんがかかわっていることがその後のニュースを見ていてわかった。
野坂は高山さんにキスをしたことで、長谷田は高山さんのいじめの主犯格だったことで、叔父さんの逆鱗に触れたらしい。
姪への歪んだ愛というセンセーショナルな事件は、マスコミの話題をかっさらい、連日ワイドショーはその話題で持ちきりだった。
私はテレビや週刊誌をチェックして、これらの情報を得たのだった。もうこれ以上知りたくないという気持ちと、もっと情報を得たいという相反した感情が私を渦巻いていた。
結局後者の気持ちが勝ち、日々私は情報をくまなくチェックするようになっていた。情報を知れば知るほど、そんな叔父と一つ屋根の下で暮らせねばならなかった高山さんがかわいそうで仕方なかった。
「関係がよくなった」と顔をほころばせていた高山さんは今、一体どんな気持ちなのだろう。
学校にもマスコミが押しかけて、退院した日置先生はじめ、学校は対応に追われていた。私の家へもマスコミが何人か来て、私は外へ出づらくなった。でも、高校への切符も手に入れたし、もうどうでもよかった。なんせ義務教育だ。この期に及んで卒業できないということはないだろう。
日置先生は心配して、時々家へ電話をくれた。
そこで高山さんも学校へ来ていないという話を耳にした。
一応、日置先生から高山さんの自宅の電話番号を聞いたけれど、なんて声をかけたらいいかわからない。気にはなりつつも電話をかけられずにいた。住所も知っているけれど、私の家以上にマスコミが取り巻いているはずだった。
被害者と加害者の娘、この構図を見られたら、またマスコミの格好の餌食となるに違いない。
そんな時だった。高山さんから電話がかかってきたのは。
おばあちゃんが心配そうな顔で、受話器を手渡してくれた。
電話を代わるなり、高山さんは、ごめんなさいを繰り返していた。
ごめんなさい、ごめんなさい。私のせいで。せっかく友達になれてうれしかったのに、ごめんね。鼻をすする音も聞こえた。
「高山さんのせいじゃないよ。高山さんも大変だったね」
私はなんとかして言葉を紡ぎ出した。
高山さんを恨んではいなかった。
悪いのは全部叔父さんなのだから。
高山さんは被害者だ。
「私ね、卒業式には出ないことにしたの。卒業証書をね、日置先生が持ってきてくれるって。卒業はさせてもらえるみたい。そもそも私もどんな顔で学校行ったらいいかわからないし。ほんとはあやちゃんにも会いたいけど、会ったら迷惑かけちゃうから」
平気だよ、と言おうとした。事実、私は平気だった。でもおばあちゃんのことを考えたら、会おうとは言えなかった。マスコミに見つかってまた迷惑をかけたくない。ただでさえ心配をかけてしまっている。
「なんだかひどいことになっちゃったね、本当にごめんなさい。私ね、近いうちに叔母と引っ越すの。この騒ぎじゃね」
「高校はどうするの?」
なんとかそれだけ聞いた。
叔母さんは専業主婦だと以前、高山さんは言っていた。引っ越したとして仕事はどうするのだろう。生活費は? 叔母さんは働けるのだろうか。
「騒ぎが大きくなったからね。もうネットでも身バレしてるし、結局、入学辞退したの」
しょうがないよね、叔父があんなことしたんじゃ、と高山さんは矢継ぎ早に言葉を続けた。
転校してから、慣れない環境で努力して、せっかく合格したのに。高山さんはなにも悪くないのに。高山さんの気持ちを思うと、歯がゆかった。
「あやちゃんと友達になれてほんとによかった。ありがとう、そして本当にごめんなさい。もう会うことないと思うけど、これだけ言っておきたくて。あやちゃんは幸せになってね」
そうして、電話はぷつんと切れた。
本当は私だっていっぱい言いたいことがあった。でも、こんな時に限って出てこなかった。ろくにしゃべれないまま電話は切れてしまった。
そのまましばらくはぼけっとしながら、高山さんと初めて会った時から今までの出来事を思い返していた。
気づくと夕陽が窓からさしこんできていて、ずいぶんと時間がたったことをそこで知った。
やっぱり、やっぱり、このまま高山さんと別れるのはいやだ。
私は、部屋着のまま家を飛び出した。
* * *
あやちゃんとの電話を切った後、ふふと思わず笑いがもれた。
完璧だ。これで完璧に私は悲劇のヒロインになった。
これまで私は平凡以下の生活をずっと送ってきた。
ブスでデブで、頭もよくなければ、運動もできない。
おまけに根暗で要領も悪かった。
私は早いうちから両親の落胆を感じ取っていた。
そんな態度を察したから、いつの頃からか私も両親には本音をいっさい語らなくなった。
両親が交通事故で亡くなった時もいっさい悲しい、寂しいという感情は生まれなかった。
叔父夫婦に引き取られてから、生活はむしろ上向きになった。叔父夫婦はかわいそうな私に本当によくしてくれた。
それでも、学校生活はなにもかわらないだろうという私の予想は当たっていた。まただった。また私はいじめられだした。
いつもと違うこともあった。唯一の友達ができたのだ。初めての好きな人も。
両親が亡くなってから、ほんの少し生活が、人生が、良い方向に向かっているような、そんな感じがしていた。
叔父夫婦の家に引き取られた時に私は叔父と約束した。学校であったこと、日常生活であったこと、なにかいやなことがあったらすぐ報告すること。きっと両親がなくなった私を案じて言ってくれているんだと思った。
正直、はじめはあまり話す気にはなれなかった。心を開くのがこわかったのだ。
でも、毎日のように学校での出来事を聞かれているうちに、ぽつぽつと話すようになった。
学園祭の罰ゲームで野坂にキスされたことを話した時、叔父は憤慨していた。絶対に許さないと。そのすぐあとで、野坂は自殺した。
こんなタイミングのいい話があるだろうか。ただの偶然といったらそれまでだが、不思議に思った私は、二人が留守にしている際にこっそり叔父の書斎へと入った。
パソコンのパスワードを入れるのには時間がかかった。私の誕生日を入れて、ロックが解除された時には寒気をおぼえた。
そこには叔父の日記があった。
野坂をこらしめるために接近して、万引きの件で野坂を追いつめたことが記されていた。
あやちゃんに話したことは本当だ。夜、叔父に襲われそうになった。それまでなんとなく好意がこちらに向いていることは気づいていた。でも、それはただ両親が亡くなってかわいそうだからという同情から来ているのだと思っていた。襲われそうになって初めて、叔父が私をどういう目で見ているかわかった。
それに気づいた時に、使える、と思った。
長谷田と日置先生が付き合っている、と噂が流れてきた時、私もあやちゃん同様、嘘だと思った。
でも、三者面談の時にあやちゃんと日置先生が話しているのを聞いてしまった。あやちゃんのバッグにこっそり叔父に買ってもらった盗聴器を仕掛けたのだ。有益な情報が得られるとははなから期待していなかったが、収穫は十分過ぎるほどだった。先生は自らの口で、長谷田と付き合っていると言った。
許せなかった。
なんで、長谷田なんだろう、と思った。そこで、叔父には長谷田に主犯でいじめられていることを訴えた。あることないこと脚色して。いじめるくらいだったら許してやったのに。
長谷田はその後、いなくなった。反射的に、叔父だ、と思った。叔父が長谷田を消してくれたのだ。まるで魔法みたいに。再びパソコンの日記を見ようとしたけれど、すでにロックがかかっていて見られなかった。その後も長谷田の事件がニュースとして流れることはなかった。
やっと気持ちが落ち着いたと思ったら、今度はあやちゃんにむかついてきた。
あやちゃんは、長谷田と日置先生が付き合っていることを知ったら、絶対に私に話してくれると思っていた。だって、私たちは親友だから。
だけど、あやちゃんは一向に話してくれる様子がなかった。私が日置先生を好きだと知ってるくせに。あやちゃんは否定していたけれど、あやちゃんもやっぱり日置先生に気があるのかもしれない。だからこそ、先生に打ち明けられた秘密を独占しようとしたのだ。
許せなかった。
あやちゃんを少しこらしめてほしいと叔父に頼んだ。叔父は快く、私の頼みを聞き入れてくれた。
それが、こんな結果になるなんて。まさかちょうどいいタイミングで日置先生があやちゃんを助けるなんて、思ってもいなかった。
最初っから、あやちゃんはちょっとこわい目にあわすだけのつもりだったのに、先生は必死であやちゃんを助けようとした。想定外の出来事に焦った叔父は、持っていた護身用のナイフで、先生を刺して逃げた。しかもあろうことか現場にナイフを残したまま。犯行を重ね、バレないだろうとたかをくくったからこうなったのだ。
けがですんでよかった。もし、先生が亡くなっていたら、私は叔父になにをしていたかわからない。
へまをした時点で、もう叔父はどうでもよくなっていた。大好きな先生を刺したし、私の予想以上にあやちゃんをこわい目にあわせた。
通りすがりの犯行という見立てなら、犯人が叔父であるという真実に行き着くことはまずないだろう。でも、あやちゃんが襲われたのが学校の近くだったことから、学校にも警察が来た。他に目撃者がいないとも言い切れないのだ。万が一ということもありうる。
不安を感じながら日々を過ごすのはいやだった。だから叔父さんには犠牲になってもらった。自首しても絶対に私の名前は出さないと約束させた。私に恋愛感情を抱いている叔父は、約束しなくても私の名前を口にしないだろうことはわかっていたけれど、念には念を入れよ、だ。
叔父がつかまるかもしれないと、びくびくして生活するよりも、こっちの方が精神衛生上いい。たとえ犯罪者の姪になったとしても。
そもそも叔父が失敗しなければ、こんな面倒な事態にはなっていないのに、と今でも思う。一緒にショッピングモールで待ち合わせしていることにしてアリバイづくりまでしたのに、慢心がミスを起こした。
でも、野坂の自殺は結果的には事故だったんだし、長谷田の事件についても叔父は完璧だった。叔父は野坂と長谷田の事件についても関与をほのめかしているらしい。なにも他の事件についてまで口にすることなかったのに。きっと言わなかったらバレなかったのに。叔父はバカだ。
今回の件で、一つはっきりしたことがある。
それは、私にも殺人鬼の血が流れているということだ。
考えるだけでぞくぞくしてくる。
その殺人の才能は私にだって流れているかもしれない。
私が自白を強要しなかったら、叔父はずっとつかまらないで逃げおおせたかもしれないのだ。
実際に叔母さんだってなにも気づいていなかった。
私なら、きっと大丈夫。
これからも気にいらないやつがいたら消してしまえばいいんだ。
叔父さんはもういないけど、きっと私にだってできるはず。
そう思うと、今まで感じたことのない自信がみなぎってくる。
ピンポーン。
家のチャイムが鳴った。
卒業証書を届けてくれると言っていたから、きっと日置先生だ。
そしたら告白しよう。
私をかわいそうに思って、先生は付き合ってくれるかもしれない。
私は、はーい、と返事をしながら、玄関へと駆け寄った。(了)
