ランチから生まれた、看板商品。
あらすじ。
どんなに良いサービスでも、見える形になっていなければ人には伝わらない。
作り手にとっては当たり前に存在していても、知られていなければ世の中には無いのと同じだ。
今回は、ある書道教室で起きた小さな出来事が、やがて教室の新しい看板商品へと育っていったお話しです。
毎週誰かとランチに行ってる。
わたしの友人、すみちゃんは書道教室の先生だ。
墨の香りに囲まれて暮らしているが、それと同じくらい人と話すことが好きな人でもある。
だから彼女はよく誰かとランチに出かける。
昔の友人だったり、近所の知り合いだったり、子どもの保護者仲間だったり。
特別な理由があるわけではない。
ただ顔を合わせて近況を話す。
その時間が、すみちゃんにとってはとても大切なものだった。
旧友のランチのお誘い。
その週に集まったのは、子どもたちがサッカースクールに通っていた頃のママ友たちだった。
半年に一度くらい、五人でランチをするという習慣がある。
料理を囲みながら始まるのは、子どもの近況や最近ハマっていること、そしてお互いの日常の出来事。
ランチと言っても、いつも気づけば数時間が過ぎている。
笑い声が絶えない、そんな穏やかな時間だった。
孫の名前を書いて欲しい。
会話の途中で、誰かがふと思い出したように言った。
「そういえば、すみちゃんって書道の先生だったよね。」
そこから話は思わぬ方向へ進む。
「孫の名前を書いてもらえないかな。」
どうやら皆、孫が生まれ始める年頃らしい。
すみちゃんは命名書をあまり書いたことがなかったが、頼まれれば断らない。
こうして一枚の命名書が生まれた。
するとそれはとても喜ばれ、親族にも配りたいと追加の依頼が来た。
さらに、その知り合いの知り合いからも依頼が届くようになった。
見えないものを見えるようにした。
すみちゃんは特別な宣伝をしたわけではなかった。
それでも命名書の依頼は、人づてに少しずつ増えていった。
気がつけばそれは教室の「裏メニュー」のような存在になっていた。
ならば、最初から表に出してしまおう。
そう考えて、教室のウェブサイトで命名書の販売を始めた。
SNSにも作品を載せるようにした。
これまで教室の中だけにあったものが、少しずつ外の世界に見えるようになっていった。
看板商品がひとつ増えた。
それから一年ほど経った頃。
命名書は教室の看板商品の一つになっていた。
普段は生徒に筆を教えながら、週に一度ほど命名書を書く。
紙の種類をいくつか用意したり、字体を選べるようにしたり、ローマ字を添えたり。
少しずつ工夫を重ねるうちに、ただ名前を書く仕事ではなく、一つのサービスとして形が整っていった。
今回のお話し。
これは、わたしの友人すみちゃんの教室で起こった実話です。
書道教室を続けていると、命名書やロゴ制作など、さまざまなサービスが生まれます。
けれど、それを分かりやすい形にしておかなければ、人はそれを「あるもの」として認識できません。
売っていることすら知られないまま終わってしまうこともあります。
もしきちんと見える形になっていれば、思いがけないところから依頼が舞い込むこともあるのです。
墨の便りをあなたへ。
このNoteは、教室を守り続ける先生方への手紙だと思って書いています。
今日も誰かの「また来たい」を願いながら、試行錯誤を続けているあなたへ。
私は多くの教室の声を聞き、その灯りをそっと分け合いたいと思っています。
どうかあなたの物語も聞かせてください。
一言でも、コメントをお待ちしております。
「ぜひ私の体験談を記事にしてほしい!」という書道教室の先生がいらっしゃったら、教室名も併せて掲載させていただきたいです。
